
肌は、人体最大の臓器であり、環境変化に敏感に反応することが知られています。
そのため、美しい肌を保つためには、適切なスキンケアや生活習慣が必要です。
ここ数年で、美肌に関する研究や技術の進歩は目覚ましく、常に最新の情報が発信されるようになりました。
しかし同時に、正しい情報を見極めることも難しくなっています。
そこで、本記事では科学的なデータを集め、肌(スキン)に関する疑問や悩みに答えることで、正しい肌の知識を広めたいと思っています。
肌荒れ・ニキビ・吹き出物の原因はビタミンB12?

「牛乳を飲むとニキビができる」というのはスキンケアの間では昔からよく聞きます。
その根拠は、「牛乳の乳糖やタンパクが体で上手く消化されず、それが肌の炎症に繋がる」というものです。
カリフォルニア大学ロサンゼルス校が、「ニキビや吹き出物の原因はビタミンB12である」という論文を出しました。
ビタミンB12とは、肉類や乳製品にふくまれる成分で、不足すると神経系の発達に影響が出てしまい、メンタルや集中力が悪化する可能性のある、体にとって重要なビタミンの1つです。
そしてカリフォルニア大学は、参加者の肌からバクテリアを採取し、それぞれの遺伝子を解析しました。
すると、肌のトラブルが多い参加者ほどバクテリアのビタミンB12を代謝する能力が低く、「ポルフィリン」という炎症物質を生み出しやすいという結果になりました。
普段あまり意識をしていないかもしれませんが、人間の皮膚には無数のバクテリアが住み着いおり、肌の健康を守っています。
若々しい肌を手に入れるには、バクテリアとの共生が重要になります。
実際、参加者たちに ビタミンB12のサプリを飲んでもらったところ、全員のバクテリアの遺伝子に変化が発生し、健康な肌を持つ人のバクテリアも、ニキビができやすい人のバクテリアに近づいていったそうです。
またビタミンB12で炎症は以下のような順序で起こっているようです。
「乳製品や肉で体内のビタミンB12が増える」→「ビタミンB12が肌バクテリアの遺伝子を変える」→「肌バクテリアが炎症物質を出す」→「肌荒れが起きる」
そして調査を行った研究者は以下のようなことを述べています。
今回の実験により、ビタミンB12が肌バクテリアの遺伝子を変え、代謝の能力に異変を起こすことがわかった。その結果、肌に炎症を起こすポルフィリンの分泌が増え、ニキビや吹き出物の原因となる。
これまでは、ニキビや吹き出物は脂肪のとり過ぎが原因とも言われてきましたが、本当は肌バクテリアの問題だった可能性があると言えるそうです。
現在もニキビや吹き出物にお悩みの方は、以下の行動を心掛けるのが対策となります。
- 「健康的な美肌を目指すための肌バクテリア養成ガイド」をベースにバクテリアをいたわる
- ビタミンB群やマルチビタミンサプリの摂取をやめる
- チーズ、ヨーグルト、牛乳の摂取量を減らす
- 貝類やレバーの摂取量を減らす
しかしビタミンB12不足も体に良くないため、必要なタンパク質量を満たすまでは、肉も食べたほうが良いでしょう。
低予算で美肌になる方法5選

多くの男性や女性は「低予算でスキンケアをしたい」と、考えているのではないでしょうか?
もちろんニキビや湿疹といった特別な治療を必要とするなら、一般的なスキンケアで解決するのは難しいですが、基本的には必要最低限のもので済ませることができるでしょう。
そして、お金をかけない美容に関するベースの考え方としては、以下の点を押さえておけば問題ありません。
- 安い日焼け止め
- 安い保湿剤(ワセリンなど)
- 安いメイク落とし
- レチノール
その上で普段から以下の点を注意して対策しておくことも基本となります。
- 睡眠の改善
- 禁煙&酒を控える
- 十分な栄養を満たす
- ストレスを軽減する
どれもお金をかけずに改善できますので、やってみてください。
以上をふまえたうえで、さらに細かい点を紹介しておくと、以下のようになります。
1. なるべく仰向けで寝る
毎晩たっぷり寝るのと同じぐらい大事なのが、寝るときの姿勢です。
枕に顔を押しつけながら眠ると、睡眠線(要するにシワ)が刻まれてしまうのでNG。
それと同時に、枕と肌の摩擦はニキビを誘発する可能性があるのでご注意ください。
この問題を防ぐためにも、仰向けで寝るのがベストです。
2. 洗顔の前に手を洗う
洗顔はスキンケアの重要なルーチンのひとつですが、洗顔の前に軽く手を洗っておくだけで、バクテリアやオイル、汚れ、その他の化学物質が顔面に移動してします可能性を低くさせることができます
これを怠ると、敏感肌やニキビが悪化する可能性もあるのでご注意ください。
3. 寝具を頻繁に洗う
枕、枕カバー、シーツを最低でも週に1回は洗うのも美肌の基本となります。
これらの寝具には、皮膚細胞、動物の毛、ふけ、真菌カビ、真菌胞子、身体分泌物、バクテリア、ほこり、糸くず、繊維、微粒子、虫の部品、花粉、土、砂、化粧品といった多くの物質が集まっています。
そのため、寝具を頻繁に洗濯しないと、蓄積された異物を就寝中に吸込むことになり、喘息やアレルギー、ニキビに拍車をかける可能性があります。
4. メイク道具も毎日洗う
古いメイクが蓄積しないように、ブラシやらスポンジも毎日洗っておくのが基本となります。
特にメイクブラシは、毎日何度も使うことで、毛に汚れや細菌がたまっていきますし、ブラシが物理的に硬くちゃうと肌のバリア機能を壊しかねず、そのせいで炎症を引き起こすバクテリアなど、肌が嫌がるものを取り込んでしまうう可能性があります。
5. 冷たい水ですすぐ
洗顔はぬるいお湯を使うのが基本ですが、その最後に冷たい水ですすぐのも、お金を使わずに効果を得られる手法であります。
最後に冷たい水で顔をすすぐことで、肌が落ち着き、冷水で肌の血行も良く、イキイキとした印象になり、また炎症も鎮まるためスキンケアにおいては非常に重要となっています。
ただ、冷水だけでは洗顔しないでください。
顔を洗う際はぬるま湯を使っておかないと、肌に蓄積した油分や汚れが取り除けないことがあります。
あくまで洗顔料を使う際はぬるま湯を使い、最後に冷たい水で洗い流すのがおすすめです。
肌荒れには「プロバイオティクス」を使うべき

腸内環境の修復に努めれば、肌のカサカサやゆみが改善し、少しずつ毛穴も閉じて、大人ニキビも出ないようになります。
たとえば、以下の研究からも腸が悪いと肌も悪くなると結論付けられています。
- 2008年の研究では113人の肌の赤らみに悩む患者を調べたところ、大半が小腸で悪性のバクテリアが繁殖していた
- 2004年の研究では大腸炎患者の14%、消化管に慢性炎症のある患者の24%に激しい皮膚炎が認められた
- 2001年の研究ではニキビ患者の54%は、腸内環境が悪化していた
では、なぜこういった現象が起きるかと言えば、以下のようなことが原因と考えられています。
- 肌のバリアが薄くなる:腸の炎症は肌から分泌される抗菌性のペプチドを減らすので、感染や炎症に弱い肌になる。肌のバリア機能がダメージを受けてしまう。
- 炎症性の物質が出る:腸内環境が悪化するとサブスタンスPって物質が出まして、こいつが肌で炎症性のサイトカインを分泌させる。肌に炎症を引き起こし、湿疹や吹き出物の原因になる。
- 肌の脂が増加する:腸は肌の脂をコントロールする役割も持ってまして、腸内環境の悪化とともに肌の脂も増えていきます。余分な脂が毛穴を広げ、そこに溜まった皮脂が酸化すると、汚い印象の肌になる。また、溜まった皮脂の下でバクテリアが増殖して、これまた吹き出物の原因になる。
腸に問題があると、皮脂を洗い流したり、雑菌を退治したり、肌に水分を補給しても意味がないことがわかりますね。
肌対策の「プロバイオティクス」
まず肌荒れや肌のくすみにお悩みの方は、まずは微生物と上手くやっていくことが大切となります。
しかし不摂生が長いほど腸内環境の改善にも時間がかかるため、まずはプロバイオティクスを使うのがおすすめです。
プロバイオティクスと肌治療の歴史は長く、1960年代から研究例があります。
その研究で300名のニキビ患者にプロバイオティクスを飲んでもらったところ、80%に効果が認められたそうです。
1980年代の実験では、肌荒れ患者にビフィズス菌と乳酸菌を飲んでもらったところ、通常のスキンケアよりも症状がかなり改善されたと報告されています。
2010年の実験でも、乳酸菌によってニキビがかなり改善したという報告があるなど、肌荒れの治療法としては、かなり評価が定まっています。
大人ニキビや吹き出物、肌のくすみ、黒ずみ、毛穴の開き、湿疹、乾燥肌などにお悩みなら、高価な化粧水や洗顔料に手を出す前にプロバイオティクスを試したほうが、スキンケアに余計な投資をせずにすむかと思います。
大人のニキビができる原因7選

成人になってからできるニキビには原因が多く、その判断は難しいです。
主なニキビ対策は食事・睡眠・運動の三本柱が基本ですので、ここではそれ以外の原因に触れていきます。
原因1:スキンケア製品の使いすぎでニキビになる
まず何種類もの新しいスキンケア製品を試している人は、それが原因でニキビが起きてしまうケースがあります。
なぜなら、いろんな製品を使うと、常に新しい防腐剤や有効成分を肌につける必要があるため、肌への刺激が大きくなるからです。
アメリカ皮膚学会は、4種類~5種類のクリームや洗顔料、スポットクリームを使うことでニキビができている患者は多いと指摘してます。
また肌のターンオーバーには相応の時間がかかるため、スキンケアを行うときは、1個~2個の製品にしぼり、新しい商品を使う前に少なくとも4週間~6週間かけて効果をチェックしましょう。
原因2:日焼け止めでニキビになる
日焼け止めはニキビ肌の予防には重要なアイテムですが、肌に合わない日焼け止めを使うとニキビの原因になる可能性があります。
注意点としては、肌の表面で紫外線を防ぐタイプの物理剤は敏感肌への影響が少ないが、肌から落ちづらいので毛穴に詰まる可能性が指摘されています。
またアボベンゾン、オキシベンゾン、メトキシシンナメート、オクトシレンなどの化学成分を配合した日焼け止めは使用しても問題は有りませんが、敏感肌の場合には刺激が強いため、ニキビができてしまう可能性があります。
どちらの日焼け止めにしても、肌に合わないとニキビに繋がる可能性があるため、異変が起きたら物理系と化学系を切り替えてみるといいでしょう。
また、どんなに薄くて軽い日焼け止めでも、一晩つけたままだと毛穴を詰まらせてしまうのでご注意ください。
原因3: ヘアケアでニキビになる
ヘアケア製品が原因でニキビが起きてしまう人は意外と多く、「ポマードニキビ」という名前がついているほどです。
スタイリング製品のせいで肌に油が染み込んでしまい、毛穴にバクテリアを閉じ込める可能性があるんです。
イギリス保険サービスによれば、ヘアスタイリング剤がニキビにおよぼす問題点は以下のとおりです。
- いったんヘアスタイリング剤で毛穴が詰まると、そこから炎症が起きて、最終的には髪の生え際や額に沿って黒ずみや白斑ができる
- 前髪が長いと毛髪成分がおでこに当たりやすく、ニキビが悪化することが多い
- 特にスプレータイプの製品を使っていると、髪に使ったものが顔についてしまうことが多い
対策はすぐにできるので、もし心当たりがあるなら、ヘアスタイリング剤を髪の生え際に近づけないようにし、塗布した後は洗顔料で肌を拭いてスタイリング剤を取り除くようにしてください。
原因4:メイクアップでニキビになる
毛穴を詰まらせる化粧品は、天然の皮脂と結びついて「コスメティック・アクネ」と呼ばれるニキビにの原因になります。
メイクをしたまま一日を過ごすと、メイクアップ、オイル、汚れが蓄積されて毛穴を詰まらせて、ニキビ発生の確率を上昇させてしまいます。
心当たりがある場合は、毎晩しっかりと洗顔を行い、メイクブラシは週に一度は洗うようにしておいてください。
原因5:ストレスでニキビになる
ストレスだけでニキビができることはないものの、吹き出物を悪化させることはあります。
大きなプロジェクトの締め切りへの不安や人間関係のトラブルなどのストレスは、神経ペプチドと呼ばれる炎症性の化学物質を放出させてニキビを悪化させる可能性があります。
この現象は「楽しいイベントの準備」や「良いストレス」でも起きることがあり、結婚式の日や大事なデートの前に大きなニキビができる人もいます。
この場合は、サリチル酸や過酸化ベンゾイルなどの成分が配合されたニキビ用コスメを使うか、ストレスの解消に努めましょう。
原因6:携帯電話でニキビになる
実は携帯電話でニキビが発生するパターンもあります。
携帯の画面にはバクテリアが付着しているケースが多く、電話で話すとバクテリアを口に近づけることになってしまいます。
さらに、常に携帯電話を使っていると、顔にこすりつけることで「摩擦によって生じるニキビ」ができることもあり、スマホでメールをした後に顔を触るとバクテリアの移動が起こります。
これを防ぐには、たまに携帯電話をアルコールティッシュで掃除することが重要になります。
原因7:乾燥肌でニキビになる
オイリー肌がニキビの原因だというのはよく言われますが、逆に極端な乾燥肌もニキビの原因になります。
乾燥肌には微細な亀裂や裂け目があるため、そこにバクテリアが繁殖してニキビが起きることがあります。
この問題を防止するには、肌の角質をやさしく取り除き、乾燥肌用のモイスチャライザーで水分を補給する必要があります。
化粧品のアルコールは肌を乾燥や炎症させる

化粧水にはアルコールが含まれていることもありますが、そのアルコールとはエタノールのことで、お酒に入ってるアルコールとほぼ同じものです。
一部では、このエタノールが「肌を乾燥させる」や「肌荒れになる」と言われています。
ではなぜ、化粧品にエタノールを入れるのかと言えば、以下のような作用があるからです。
- 水で分解できない物質を分解させるため(フレグランスオイルやサリチル酸など)
- 皮膚から脂質、油分、ワックスを取り除くため
- 保存剤として使うため
- 成分を肌に浸透させるため
そしてなぜ「エタノールが良くない」と言われるのかについては、以下のような証言が多いからです。
- アルコールを使うと肌が炎症を起こしている感じがする(赤くなったりとか)
- アルコールを肌に塗ると逆に乾燥するような気がする
実際、いくつかの「生体外研究」では、「エタノールは皮脂の分泌を乱す」という結果も出ているため、可能性としては否定できません。
しかし、これらの結果はあくまで人の細胞を使用したものであり、実際に生きた人間の肌でも同じことが起きるかというと別の話になります。
実際に人を対象にしたテストの結果は、以下のようになっています。
- 80%エタノールを5分間に50回ほど肌に塗りつける作業を1日に2回ずつ7日間続けたところ、水を塗った場合と肌の水分量の変化は変わらなかった
- 60〜80%エタノールを1日20回ぐらい手にすり込んでも、特に肌の水分量に有意な変化はなかった
実験の結果から分かることは、大量のアルコールをつけても、水とくらべて乾燥しやすくなるわけではないです。
アルコールが肌に触れたとしても、すぐに揮発してしまうため大きな影響は無いと言えます。
また肌の赤みにつていも以下の研究のように、「水と比べて特に大差はない」というのが大方の結論となっています。
- 70%のエタノールは、1日に20〜100回ずつ14日間続けて塗りまくったが、特に肌の赤みは水と変わらなかった。
- 80%エタノールを塗りまくっても、やっぱり肌の赤みに変化はみられなかった。
以上の話を総合して推察すると「アルコールは心配しなくて良い」と判断できますが、それでも「アルコールを肌に塗ると嫌な感じがする」と思う人がいるでしょう。
その不快な現象が起きる主な理由は、以下のような作用が働いているからです。
- アルコールが肌の微細な傷から入り込む
- アルコールが神経の末端を刺激する
- 不快感が発生する
これはアルコールのせいで肌にダメージが起きてるわけではないのでご安心ください。
それでも神経の刺激が嫌な方はアルコールフリーなものを選べば良いと思います。
毛穴に蒸気を当てても美肌にはならない

「スチーマーで美肌になれるか?」という問題ですが、その前に大事なポイントを押さえておきましょう。
毛穴は開いたり閉じたりしないという事実です。
そもそも毛穴には開閉するメカニズムが備わってないため、いくら蒸気を当てようが開きようがありません。
これは「皮膚科学の教科書」にも載ってる知識であるため、「毛穴が開く」と書いてあるような美容サイトは危険と判断してください。
ではなぜ「蒸気は毛穴の汚れに良い」と考えられているのかについては、「高温によって顔の脂が溶けるから」と説明できます。
また市販で売られている美顔スチーマーとは以下のようなシンプルな仕組みになっています。
- 毛穴に脂が詰まって広がったように見える
- 蒸気で脂が溶けて毛穴から流れる
- 毛穴が小さくなったように見える
脂の詰まり方によって、毛穴が開いたり閉じたりするように見えるわけです。
人の皮脂は約30℃で溶けてしまうため、蒸気を当てるだけでも取り除くには十分です。
その点で、美顔スチーマーで肌がキレイになるという話は、あながちウソでもありません。
蒸気は肌の浸透性を高めるが、角質にダメージも与える
また商品として売られている美顔スチーマーには、肌の浸透性を高める効果があると言われています。
その主張は、蒸気によって肌バリアの脂質構造が変わるからだそうです。
つまり、美顔スチーマーを使えば、スキンケア商品の成分が角質の奥まで届きやすくなるかもしれないわけです。
しかし、この効果も良し悪しで、逆に言えば「蒸気は肌バリアを破壊してる」とも言えます。
例えば2008年論文によると、蒸気による浸透性の変化は以下の段階を経ているようです。
1)角質の脂質構造に障害が起き、
2)ケラチンネットワーク構造の乱れ
3)ケラチンの崩壊と気化によってできた角質の穴によって起きる。
つまり、肌の浸透性が高まったのは、蒸気で角質が乱れたおかげということです。
いまのところ、美顔スチーマーの長期試験データはありませんので、蒸気を当て続けた場合に肌がどうなるかは不明です。
しかし、上の研究を見る限りでは、敏感肌の人や角質にダメージを受けているような人は使わないほうがいいと考えられます。
また、14人の女性を対象にした2004年の実験では、「45度の蒸しタオルを5分当てるだけでも肌の浸透性は上がる」という結論が出ており、角質を壊すリスクを背負ってまで美顔スチーマーを使う理由は特に無いようにも思えます。
一旦、これまでの話をまとめると以下のようになります。
- 確かに蒸気で毛穴汚れは落ちるが、蒸しタオルを5分当てるだけで十分
- 肌が弱い人にとっては、蒸気は逆にダメージになる可能性がある
もちろん、美容商品にリラックス効果を求めて使う人もいるため、「買うな」とまでは言いませんが、美顔スチーマーにはリスクもあるという点は考慮に入れて、購入を検討して頂ければ幸いです。
顔を冷やすと美肌になれるは嘘

美容サイトなどでは、顔を氷水で冷やすタイプのテクニックはよく見かけますね。
一般的には、顔を冷やすことで毛穴が小さくなり、肌が引き締まった印象になると、言われていると思います。
まず前提としては、そもそも毛穴には開閉するような仕組みがないので、サイズは同じままです。
顔を温めようが冷やそうが、肌が引き締まることはありません。
そもそも肌のメカニズムに反した話であるため、美肌効果に関する実験データは無いのが現状です。
顔を冷やすと痛み止めにはなる
とは言え、「顔を冷やす」というテクニックに意味がないかと言えば、科学的にメリットが確認されている場合があります。
それが、顔の冷却による痛み止め効果です。
昔から冷却による肌の保護効果に関するデータはいくつかあり、約17℃〜20℃の温度で変化が出るそうです。
また具体的な研究を挙げると、以下のような研究が存在しています。
- 2005年の研究では、毛細管拡張症(顔に赤いポツポツができる)に悩む17人の参加者にレーザー治療を受けてもらい、その後で17℃の空気で顔を冷やしたところ、肌の痛みやアザが減った
- 2004年の研究では、8人の女性が炭酸ガスレーザーによるシワ取り治療を行ったあとで肌を冷却したところ、術後の痛みが大きく減った。しかし、シワの状態などは、冷却しなくても効果は変わらなかった
- 2011年の研究では、19人の女性にシワ切除手術を行い、その間に−4℃で顔を冷却したところ大幅に痛みが減った
難易度の高い治療の痛みを和らげる効果は高いようなので、手術後の炎症を抑えたり、注射やレーザー治療の出血を抑えるためには役立ちそうです。
つまり、現時点で「肌冷やし」の効果について言えるのは、以下の点だけです。
- 間違いなく痛みをやわらげる効果はある
- ケミカルピーリングのようにハードな処置をしたあとに、炎症を抑えるために使うのはアリ
- 一般的な美容法として肌を冷やす意味は無い
もし肌が炎症を起こしている場合は、顔を冷やすことで症状がやわらぐ可能性はあるかもしれない程度です。
そのため、普段使いの美容法としてはオススメしません。
夜になると肌が痒くなる問題

「夜になると痒い」 というのは割と聞く話です。
この現象は「夜間掻痒症(Nocturnal Pruritus)」などと言われ、昔からそこそこ研究が進んでおります。
ここではテンプル大学とウェイクフォレスト大学のレビューをベースに、現状判明していることをまとめました。
前提としては、「痒み」は複雑な現象で、ハッキリした原因を特定するのはなかなか難しいということです。
アレルギーが原因のケースもあれば、肝臓のダメージで引き起こされたり、寝床にダニがいただけだったりとか、とにかくいろいろなケースが考えられます。
そのほかの原因も並べてみると、以下のようなものが挙げられます。
▼体内時計の変化によるもの
夜になって肌の血流があがった
夜になって肌の温度があがった
炎症性サイトカインの分泌が増えた
副腎皮質ホルモンが減って体内の炎症が増えた
夜間の汗で肌の水分量が減った▼その他の要因
寝室のホコリなどに免疫が反応している
ドライスキン
ストレス
甲状腺の異常
鉄分不足による貧血症
不安症や鬱によるもの▼女性に特有の変化によるもの
女性ホルモン(エストロゲン)の量が変化して肌が乾燥した
外的な原因からメンタル要因までいろいろで、心当たりがあるものから順に正していくしかないでしょう。
夜になると肌がかゆくなる問題の一般的な対策
以上をふまえたうえで、ここからは一般的な対策について並べていきますと、以下の方法がまずは基本的な予防になるでしょう。
- オイルフリー&アルコールフリーのモイスチャーを使ってみる。CetaphilとかCeraVeとかEucerinとかが定番。
- 加湿器を使って室内の湿度は30〜50%の範囲におさまるように調整
- ムダに血流があがらないように、寝る前に冷たいシャワーを浴びる
- 寝室の温度は摂氏19〜21度に保つ
- 寝る前に瞑想でリラックスのトレーニングをする
- コットンのような天然繊維の服で寝る
それでも改善が見られなければ、以下のサプリを試してみるのが良いと思います。
- 抗ヒスタミン剤を飲む(「レスタミンコーワ糖衣錠」とか「アレルギール錠 」とか)
- メラトニンを飲む(体内時計の調整ホルモン)
- ビタミンDを飲む(痒みに効くというエビデンスがある)
それでも2週間ぐらい激しい痒みが続くようであれば病院に行ったほうがいいでしょう。
まずはそのへんを改善したうえで、サプリや市販薬をお試しいただければと思います。
参考文献
・Andrea M. Schneider,Zachary T. Nolan,Kalins Banerjee,Allison R. Paine,Zhaoyuan Cong,Samantha L. Gettle,Amy L. Longenecker,Xiang Zhan,George W. Agak,Amanda M. Nelson,Evolution of the facial skin microbiome during puberty in normal and acne skin, Journal of the European Academy of Dermatology and Venereology, 37, 1, (166-175), (2022).
https://doi.org/10.1111/jdv.18616
・Bowe, Whitney P, and Alan C Logan. “Acne vulgaris, probiotics and the gut-brain-skin axis – back to the future?.” Gut pathogens vol. 3,1 1. 31 Jan. 2011, doi:10.1186/1757-4749-3-1
・Bowe, W.P., Logan, A.C. Acne vulgaris, probiotics and the gut-brain-skin axis – back to the future?. Gut Pathog 3, 1 (2011). https://doi.org/10.1186/1757-4749-3-1
・Cartner, T., Brand, N., Tian, K., Saud, A., Carr, T., Stapleton, P., Lane, M.E. and Rawlings, A.V. (2017), Effect of different alcohols on stratum corneum kallikrein 5 and phospholipase A2 together with epidermal keratinocytes and skin irritation. Int J Cosmet Sci, 39: 188-196. https://doi.org/10.1111/ics.12364
・Gueniche, Audrey et al. “Lactobacillus paracasei CNCM I-2116 (ST11) inhibits substance P-induced skin inflammation and accelerates skin barrier function recovery in vitro.” European journal of dermatology : EJD vol. 20,6 (2010): 731-7. doi:10.1684/ejd.2010.1108
・Hammes, Stefan, and Christian Raulin. “Evaluation of different temperatures in cold air cooling with pulsed-dye laser treatment of facial telangiectasia.” Lasers in surgery and medicine vol. 36,2 (2005): 136-40. doi:10.1002/lsm.20089
・Marchetti, F et al. “Efficacia dei regolatori della flora batterica intestinale nella terapia dell’acne volgare” [Efficacy of regulators of the intestinal bacterial flora in the therapy of acne vulgaris]. La Clinica terapeutica vol. 122,5 (1987): 339-43.
・Marchetti, F et al. “Efficacia dei regolatori della flora batterica intestinale nella terapia dell’acne volgare” [Efficacy of regulators of the intestinal bacterial flora in the therapy of acne vulgaris]. La Clinica terapeutica vol. 122,5 (1987): 339-43.
・Moghadam, Shadi H et al. “Effect of chemical permeation enhancers on stratum corneum barrier lipid organizational structure and interferon alpha permeability.” Molecular pharmaceutics vol. 10,6 (2013): 2248-60. doi:10.1021/mp300441c
・Parodi, Andrea et al. “Small intestinal bacterial overgrowth in rosacea: clinical effectiveness of its eradication.” Clinical gastroenterology and hepatology : the official clinical practice journal of the American Gastroenterological Association vol. 6,7 (2008): 759-64. doi:10.1016/j.cgh.2008.02.054
・Löffler, H., Kampf, G., Schmermund, D. and Maibach, H.I. (2007), How irritant is alcohol?. British Journal of Dermatology, 157: 74-81. https://doi.org/10.1111/j.1365-2133.2007.07944.x
・Park, Jung-Hwan et al. “The effect of heat on skin permeability.” International journal of pharmaceutics vol. 359,1-2 (2008): 94-103. doi:10.1016/j.ijpharm.2008.03.032
・Raulin C, Grema H. Single-Pass Carbon Dioxide Laser Skin Resurfacing Combined With Cold-Air Cooling: Efficacy and Patient Satisfaction of a Prospective Side-by-Side Study. Arch Dermatol. 2004;140(11):1333–1336. doi:10.1001/archderm.140.11.1333
・Saarialho-Kere, Ulpu. “The gut-skin axis.” Journal of pediatric gastroenterology and nutrition vol. 39 Suppl 3 (2004): S734-5. doi:10.1097/00005176-200406003-00009
・Slominski, Andrzej. “A nervous breakdown in the skin: stress and the epidermal barrier.” The Journal of clinical investigation vol. 117,11 (2007): 3166-9. doi:10.1172/JCI33508
・Taghizadeh, Farhan et al. “Evaluation of pain associated with facial injections using CoolSkin in rhytidectomy.” Journal of pain research vol. 4 (2011): 309-13. doi:10.2147/JPR.S21787
・Volkova, L A et al. “Vliiane disbakterioza kishechnika na techenie vul’garnykh ugreĭ” [Impact of the impaired intestinal microflora on the course of acne vulgaris]. Klinicheskaia meditsina vol. 79,6 (2001): 39-41.
・https://www.journalofhospitalinfection.com/article/S0195-6701(02)91223-5/pdf
・https://www.nhs.uk/conditions/acne/
・https://www.lww.co.uk/search-results/?keyword=Dermatology
・https://journals.lww.com/anesthesia-analgesia/pages/articleviewer.aspx?year=2004&issue=04000&article=00019&type=Fulltext
・https://books.google.co.jp/books?id=APiLX8aBakkC&pg=PA271&lpg=PA271&dq=sebum+melting+temperature&source=bl&ots=0jmSvSgnBG&sig=r1Eg0ACvl7rmhGp_cj1RVwFIqFo&hl=ja&sa=X&sqi=2&ved=0ahUKEwjz3IOJ5cHLAhXkGaYKHdLWBUQQ6AEIYDAI#v=onepage&q=sebum%20melting%20temperature&f=false