
心が不安定になる年齢?
29歳、39歳、49歳など、これからひとつ上の年代に入る前に、人はあれこれと自分自身のことを振り返る傾向があります。
米国ニューヨーク大学のアダム・アルターは、29歳、39歳、49歳などの人生の節目が近づいた人ほど、何かしら自分にとって意味のあることをしたがることを突き止めました。(1)
いきなり熱心にボランティア活動を始めたり、なぜか浮気をしようとしたり、自殺をはかったりするのは、こうした年齢を迎えた人たちだったのです。
毎年、元旦になると「今年はこんなことをするぞ!」と新年の抱負を語る人が増えます。
年齢の節目が近づいたときも、似たようなことが起きるのです。
もちろん、何か新しいことを始めようと決意するのは良いことかもしれません。
ただ、おかしなことを始めようとする人も増えるので、その点は注意が必要ですたとえば、59歳になってもうすぐ定年だというのに、いきなり会社を辞めて起業する、といったこともあるかもしれません。
もし読者のみなさんに19歳の子どもがいるなら、彼らの変化にも敏感になりましょう。9歳になったらいきなり自殺や家出をしようとするかもしれない、と心理学では予想できるのですひとつ上の年代に入る人は心理的に動揺しやすかったり、気分も浮ついていたりします。
「9のつく年齢」と覚えておきましょう。29歳、39歳、49歳など、自分が9のつく年齢になったときには「何かおかしなことを始めるかもしれないから、気をつけなければ」と自戒する必要があるかもしれません。
厳しい判決が出る時?

イスラエルにあるネゲウ・ベン=グリオン大学のシャイ・ダンジガーは、1112件の裁判記録を調べました。(2)
裁判官が判決を下す時間帯と、その判決の内容の関係性を探ったのですその結果、朝ごはんを食べてすぐの時間帯(午前の早い時間帯)では、裁判官は被告にとって有利な判決を下すことがわかりました。
その時間帯に出た判決は、なんと6割以上が被告に甘いものだったのです。ところがお昼近くになってくると、裁判官も次第にお腹が空いてくるのか、被告にとってとても厳しい判決を下すことがわかりました。
被告に有利な判決は、ほぼゼロ。
同じ裁判官でも時間帯によってこんなに違うのか、と思えるくらい違うのですお昼ごはんを食べ終わってすぐの時間帯では、また被告に有利な判決が増えました。
おそらくお腹がいっぱばいで満足して、他人に対して甘くなってしまうのでしょうねそれから少し経つと、疲労が溜まってくるのか、再び厳しい判決が増えていきました。
ダンジガーによると、人は「休憩後にやさしくなる」という傾向があるようです。
朝ごはんやお昼ごはんを食べた後は、私たちは人にやさしくなるのですもし私が取引先やお客さまに迷惑をかけてしまったら、相手が朝ごはんやお昼ごはんを食べ終わってすぐの頃合いを見計らってお詫びに行くでしょうね。
なぜなら、そのほうが相手も「ああ。今回の件はそんなに気にしなくて良いよ」と水に流してくれる可能性が高くなるからです。
少しずるい方法ですが、こうすれば余計に怒られることはないでしょう。
上司に悪いニュースを伝えなければならないときも同じです。できれば、上司がお昼ご飯を食べ終わったタイミングが良いでしょうね。
そのほうが、とばっちりを食ったり、八つ当たりをされたりせずにすむと思います。
宿題は意味が無い?

実は、宿題にはあまり意味がなく「子どもにとって単なる時間の浪費だ」と指摘する心理学者もいるのです。
ネバダ大学のオズカン・エレンは、1032の中学校で中学2年生2万人以上を対象にして、1週間の宿題の量を調べました。(3)
平均すると、生徒は数学で2.4時間、科学で1.7時間、英語で2.2時間、歴史で2.1時間の宿題を出されていることがわかりました。
では、宿題の量と試験の成績には、比例関係が見られたのでしょうか。
もし明確な比例関係があれば、宿題にも意味があることになります。
エレンが調べてみると、数学にだけ比例関係が見られました。
つまり、先生が数学の宿題を出せば出すほど、生徒の数学の成績は上がっていたのです。
ところが、科学、英語、歴史などでは、宿題の量と試験の成績にはまったく比例関係がありませんでした。
つまり、宿題をやらせてもムダという事実が判明したのです。
このデータによってエレンは「数学以外の宿題は、子どもの貴重な時間を奪って、ただ負担を与えるだけ」と結論しています。
教育関係の政策を決める人には、ぜひこうしたデータも知っておいてもらいたいですね。
学校の先生は、それこそ毎日のようにおびただしい量の宿題を生徒に出します。
けれども子どもの役にはあまり立っていません。
先生たちには悪気がないのかもしれませんが、子どもにはただの負担でしかない、ということは知っておきたいものです。
宿題によって子どもの時間を奪えば、放課後の悪事やゲームをする時間は減らせるかもしれません。
でも、それならスポーツや芸術活動でもさせたほうが、まだ子どもにとっては有意義なのではないでしょうか?
宿題の提出率を上げるには?

たいていの先生は、すべての生徒にまったく同じ宿題を与えるものです。
けれども、これはあまり良くないやり方かもしれません生徒の学力には差があります。
ある生徒にとっては簡単にできる宿題でも、別の生徒には難すぎることがあるからです。
その問題を解決する方法は至って単純で、生徒に自分で宿題の量を決めさせれば良いのです。
「みんなサボるに決まっている」と思う先生がいるかもしれませんが、そんなことはないのです。
もちろん、サポる生徒もいないとは言いませんが、そんなに多くありません米国ユタ大学のダニエル・オリンピアは、日ごろ算数の宿題を50%以下しか提出しない小学年生の男の子と女の子に対して実験を行っています。(4)
オリンピアは、先生が宿題の提出目標を決める場合と、生徒が自分で決める場合を比較する実験を行いました。
先生が決めるときには、常に「宿題を90%提出しよう」という設定をし、自分で決めて良いときには、「宿題を、80%、900%、100%提出しよう」という3段階の設定で、好きなものを選んで良いことになっていました。
その結果、それまでは50%以下しか宿題を提出していなかった生徒たちも自分で決めて良いことにすると、測定を行った7日間で、平均して74.1%も提出してくれることがわかりました。
ちなみに、先生が決めたときには、宿題の提出率は60.5%にすぎませんでした。
「自分で決めて良いんだよ」ということにすると、どうもやる気が高まるようです。
授業がつまらない理由?
授業の内容がつまらないのは、どんどん難しくなっていくからでしょうか?
実はそうではないのです。
米国コロンビア大学のメアリーホワイトは、16名のアシスタントを雇って、104人の先生の授業を合計で139時間も観察させました。(5)
観察したのは、小学校1年生から高校3年生までの、すべての学年の授業です。
アシスタントたちは、授業中に先生が生徒をホメた回数とけなした回数を測定しました。
先生が生徒に向かって「グッジョプ!」などとホメたときには、ホメた回数を「1回」とカウント同じように「ダメだな、キミは」とけなしたときにも、けなした回数としてカウントしていったのです。
すると、小学校1年生を担当する先生では、ホメた回数のほうがけなした回数を上回っていたのですが、小学校2年生以降になると、徐々にホメる回数が減り、けなす回数のほうが多くなっていったのです。
中学、高校になると、先生が生徒をホメることはほとんどなくなり、けなすばかりになりました。
中学、高校と授業がつまらなくなっていくのは、先生がホメてくれなくなることが原因なのでした。
すべての授業がつまらないかというと、そんなこともないでしょう。
「ある先生が教える英語面白いとか「ある先生の数学の授業が最高」ということもあります。
特に中学、高校では授業の内容が高度になってくるので、意識してホメ言葉をかけない生徒はますますやる気を失ってしまいます。
結婚式にはお金をかけない方が良い?

今から数十年前は「婚約指輪の値段は月収3ヵ月分」などとも言われていました。
月に30万円を稼ぐ人なら、だいたい90万円くらいの指輪を選んでいたのではないかと思います。
ところが米国ジョージア州にあるエモリー大学のアンドリュー・フランシスタンは、3000人以上の既婚者にアンケートを配布して、結婚式にかけた費用と結婚生活についての調査をしました。(6)
同性婚や31歳未満、60歳以上で結婚した人を除いて分析したところ、結婚指輪や結婚式にお金を「かけなかった」人ほど、結婚生活は長く続いていることがわかったのです。
最近では結婚式にあまりお金をかけない「ジミ婚」というスタイルも流行っているそうです心理学的には、ジミ婚は正解と言えるでしょう。
この結果から、フランシスタンは「ダイヤモンドは永遠の輝き」というスローガンは、まったくのウソであると述べています。
お金をかければ結婚生活もうまくいくのかというと、まるでそんなことはなかったのですでは、なぜ結婚指輪や結婚式にお金をかけるのが良くないのでしょうか。
その理由は、結婚に対して理想と期待ばかりが大きく膨らんでしまうから。「結婚したら私は幸せになれる!」「結婚したら、きっと素晴らしい生活が待っている!」という期待ばかりが膨れ上がってしまうのです。
ところが実際の結婚生活は、テレビドラマや映画とは違います。素晴らしいことばかりではありません。
失望することもたくさんあります。むしろ、結婚前の期待が大きければ大きいほど、失望も大きくなります。
「こんなはずじゃなかった……」となってしまうのですねその点、結婚指輪や結婚式にあまりお金をかけない人は、現実的だと言えます。
参考文献
・(1)Alter, A. L., & Hershfield, H. E. 2014 People search for meaning when they approach a new decade in chronological age. Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America ,111, 17066-17070.
・(2)Danziger, S., Levav, J., & Avnaim-Pesso, L. 2011 Extraneous factors in judicial decisions. Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America ,108, 6889-6892.
・(3)Eren, O., & Henderson, D. J. 2011 Are we wasting our children’s time by giving them more homework? Economics of Education Review ,30, 950-961.
・(4)Olympia, D. E., Sheridan, S. M., Jensen, W. R., & Andrews, D. 1994 Using student- managed interventions to increase home completion and accuracy. Journal of Applied Behavior Analysis ,27, 85-99.
・(5)White, M. A. 1975 Natural rated of teacher approval and disapproval in the classroom. Journal of Applied Behavior Analysis ,8, 367-372.
・(6)Francis-Tan, A., & Mialon, H. M. 2015 “A diamond is forever” and other fairy tales: The relationship between wedding expenses and marriage duration. Economic Inquiry ,53, 1919-1930.