
ナルシストには困難な仕事が良い?

ナルシストは、だれもが尻込みするような難しい作業に取り組むときに、パフォーマンスがグンとアップします。
「こんなに難しい仕事に取り組んでいる俺ってカッコいいよなぁ」と思うのでしょう。
そういう自己陶酔に浸れるので、難しい作業に取り組むのが大好きなのです。
ケース・ウェスタン・リザーブ大学では、まず参加者にナルシストの度合いを測定する心理テストを受けてもらい、ナルシスト得点の高い人と低い人に分けました。
それから、手術のシミュレーション作業を行ってもらいました。
この作業はコンピュータゲームのようなもので、ピンセットを操作して穴から尼の物体を抜き出すことが求められます。
穴の側面などにぶつかってしまうとブザーが鳴って、失敗となります。すべての参加者に3回ずつトライしてもらって、操作の感覚がある程度つかめるようになったところで実験開始です。
ウォレスはこのとき、2つの条件を設けました。
一方のグループには「先ほどの3回のトライのときより、5%以上タイムを縮めてください。
また、「ミスも5%減らしてください」とお願いしました。
5%くらいの改善でよいなら、なんてことはありません。
もうひとつのグループには難しい目標を与えました。
「先ほどより、25%以上のタイムを縮めることと、ミスも25%減らすこと」が求められたのです。
では、実際の得点はどうなったのでしょうか。
調べてみると、ナルシストの得点が低い人、すなわち普通の人では条件が簡単な時のほうがパフォーマンスは良くなりました。
ところがナルシスト得点の高い人では、難しい目標を与えたときのほうが、パフォーマンスの向上は高かったのです。
この原理を知っていれば、新プロジェクトや成功の見込みが低い計画などでは、リーダーにナルシストを選ぶのがよいということがわかります。
嫌な相手に無視されると?

我々は嫌いな相手からでも拒否されると気分が落ち込んだりするらしいのです。
カリフォルニア大学では、オーストラリアにあるニューサウスウェールズ大学の学生を対象に、「嫌いな人からでも拒否されると傷つく」という現象について確認する実験をしています。
ゴンサルコラレは、インターネット上で、バスケットボールのパス回しのような作業をやらせてみました。
ただし、本当の参加者以外はみんなサクラでサクラたちは自分たちだけでパスを回して参加者にはパスを渡さというひどいことをすることになっていました。
なお、パス回しをする前に、サクラたちのことを「インペリアル・クランズの支持者」と告げておきました。
インペリアル・クランズというのは、オーストラリアにあるKKK「クー・クラックス・クラン」で、差別主義者の集まりです。
たいていの人はインペリアル・クランズのことを良くは思っていませんし、その支持者についても嫌悪感を抱いています。
ですので、パスを回してもらえず仲間外れにされたところで、どうということはないはずなのです。
ところが実際には、自分が嫌いなメンバーからでも、仲間外れにされると心理的にひどくこたえることがわかりました。
さらにその後の調査では、仲間外れにされると自尊心が大きく下がり、自分が無意味な存在で、生きている価値がない人間だと感じるようになってしまうことがわかったのです。
相手が嫌いな人でも、あからさまに無視されることは私たちの心をひどく傷つけます。
私たちは、嫌いな人からでも「あなたのことが嫌い」と言われると傷つくのです。
「私は若い女性にどれほど嫌われようが、ちっともかまわない」と公言している人でも若い女性から面と向かってひどいことを言われたら、やはり傷つくのではないでしょうか?
バカ騒ぎで親近感が増す?

ニューヨーク州立大学では、お互いに面識のない同性のペアをつくらせて、一緒にバカげたことをさせるという実験をしてみたことがあります。
たとえば、片方がストローを噛んだ状態のまま、ダンスのステップをもう片方に伝えるのです。
伝達役は、ストローを噛んでいるので、おかしな声で指示を出さなければなりませんでした。
そのため、ダンスをする役のほうはみんな大笑いでしたさて、このようなパカげた行為を一緒にやってもらった後で、「相手にどれくらい親近感を覚えましたか」と尋ねると、かなりの親近感を覚えることがわかりました。
一方でフラレイは、まったく面白くもない作業を一緒にやらせるグループも設定していましたが、こちらのグループでは当然、親近感は高まりませんでした。
人と仲良くなりたいのであれば、バカげたことを一緒にやってみることです。
上品なことをやっているだけでは、人は仲良くなれません。
ハロウィンにしろ、クリスマスにしろ、お花見にしろ、パーティーは良いことですどんどん積極的にやりましょう。
普段とは違う自分をさらけ出し、みんなで一緒におかしなコスプレをして騒いでみるのも、たまには楽しいですし、人間関係も深まるものなのです。
「会社のために働く」は間違い

アメリカのメンフィス大学では、16の会社で働くセールスマン1300名にアンケートを配布し、そのうち560の有効回答を得ました。
その結果、「会社のために頑張る」人りも、「自分のために頑張る」人のほうが、セールスマンとしてのパフォーマンスが高いことがわかりました。
自分のために頑張っている人のほうが、セールス能力が高く、お客との関係を構築する技術があり、ライバル社の商品知識もあり計画性や段取り力も高かったのです。
なぜ、自分のために頑張る人のほうがパフォーマンスが高くなるのかというと、自分の出世昇給につながると思えば、自然とモチベーションが上がるからでしょう。
自分のためになるのなら、セールス能力を磨こうとか、商品知識も増やそう、という気持ちにもなれるのです。
その点、「会社のために」働いている人は、自分の技能を伸ばそうという気持ちにはなりにくいと思います。
会社のために自分一人で頑張っても、会社の利益がすぐに上がるわけではありません。会社は、自分一人で成り立っているわけではないからです。
頑張って会社に貢献しても、目に見える利益がすぐに出るわけではないのです。
会社のために頑張って働いてみても、目に見える利益が上がらないと、普通の人はやる気をなくします。
「自分一人くらい頑張っても、あまり変わらないのだな」というあきらめの気持ちが生まれます。
その点、「自分のために頑張る」のであれば、結果は目に見える形ですぐに出ます。手を抜いていれば評価は下がりし、出世は遅れます逆に、頑張れば頑張っただけすぐに結果が出ます。
そのため、もっともつと頑張ろう、という気持ちになれるのです「会社のために頑張ろう」という心がけは立派だと思いますが、それでは本気で仕事に取り組もうという気持ちにはなれません。
だから「自分のために働く」という考えでよいのです。
大きな夢は持たなくても良い

米国のロチェスター大学のティム・キャッサによると、「アメリカン・ドリームなんて持っているからこそ、人は不幸になる」のだそうです。
なぜなら、大きな夢はなかなか達成できないからです。どんなに努力しても夢を達成できないと、たいていの人は失意に打ちのめされます。
「自分はダメな人間だ」という無能感にさいなまれます。その結果、健康を害することもあります。
キャッサーがロチェスター在住の家庭にアンケートをとって調べてみたところ、「金浅」「外見」「社会的に認められること」「出世」などの夢について大きな夢を抱いている人ほど、「生きるための元気」や「活力」が失われ、「身体的な病気(偏頭痛や気だるさなど)」を感じることが多くなるという結果が得られました。
大きな夢を持ったほうがよいというのは、単なる幻想に過ぎず、むしろ本人を苦しめるだけなのではないか、というのがキャッサーの主張です。
大きな夢などを抱くのではなく、むしろ、小さなことでも喜べるようにしたほうが、本人にとってははるかに幸せかもしれません。
「大きな家に住みたい」とか、「高級車に乗りたい」という気持ちを強く抱いていると、狭い家に住んでいる現実に不満ばかりを感じてしまうでしょう、軽自動車に乗っている自分をつまらない存在だと感じてしまうでしょう。」
その点大きな夢を持っていない人は、狭い家でも「住めば都」でいられるでしょうし、燃費の良い軽自動車に恥ずかしさなどは感じません。
もちろん、大きな夢を持っても良いとは思うのですが、「その夢が、自分を苦しめていないか」ということも、ちょっと自問自答してみてください。
「夢を持つことが苦しい」と感じるのなら、その夢は自分にとっては大きすぎる可能性があります。
そんなときには、もっと小さな夢に変えるなど、柔軟に対応してもよいのではないでしょうか。
参考文献
・(1)Wallace, H. M., & Baumeister, R. F. 2002 The performance of narcissists rises and falls with perceived opportunity for glory. Journal of Personality and Social Psychology, 82, 819-834.
・(2)Gonsalkorale, K., & Williams, K. D. 2007 The KKK won’t let me play: Ostracism even by a despised outgroup hurts. European Journal of Social Psychology, 37, 1176-1186.
・(3)Fraley, B., & Aron, A. 2004 The effect of a shared humorous experience on closeness in initial encounters. Personal Relationships, 11, 61-78.
・(4)Bashaw, R. E., & Grant, E. S. 1994 Exploring the distinctive nature of work commitments: Their relationships with personal characteristics, job performance. and propensity to leave. Journal of Personal Selling & Sales Management, 14, 41. 56.
・(5)Kasser, T., & Ryan, R. M. 1996 Further examining the American dream: Differential correlates of intrinsic and extrinsic goals. Personality and Social Psychology Bulletin, 22, 280-287.