
金額交渉でやってはいけないこと

交渉をするときには、なるべく細かな金額を提案したほうがよいでしょう。
「100万円でどうでしょう?」と提案するよりも、「106万5千円ではどうでしょう?」と提案したほうが、相手にも「こいつは手ごわい交渉者だ」と感じさせることができるのです。
米国ニューヨーク州にあるコロンビア大学のマリア・メイソンが、インターネットで仮想交渉実験に参加してくれる人を募ったところ、280名が快く応じてくれました。
参加者の年齢は平均30.4歳ですこの仮想交渉では、宝石の買い入れをめぐって店主とお客とがやりとりをすることになっていました。
参加者は店主になったつもりで、お客から宝石を買い入れします宝石の売り手は、3つの買い取り価格を提案しました。
「20ドル」「19ドル」「21ドル」です。メイソンの仮説によれば、売り手の人間が、「20ドル」というキリのよい金額を提案したときには、実験参加者たち(店主側)に「こいつは宝石に詳しくないな」とナメられて、買いたたかれることになっていました。
データを取ってみると、まさにその通りの結果になりました。
キリの良い金額を出すと、「こいつは与しやすいから、強く押せばもっと譲歩してくれそうだな」と相手に思われてしまうのです。
20ドルではなく19ドルとか、21ドルといったように、端数が入った金額を提案されると「しっかりた根拠があって、そういう端数の入った金額を提案しているに違いない」と私たちは考えます。
つまりは、手ごわそうな交渉相手」と感じて、あまり厳しいことを言わなくなるのです交渉をするときには、なるべく細かな金額を提案しましょう。
プレゼンに使える「3つの魔法」
欧米では“ 3の魔法(チャーム・オプ・スリー)呼ばれることがあるように、1つ2つではちょっぴり少なく、4つ以上ではくどいと感じられてしまうからでしょう。
米国カリフォルニア州立大学のスーザン・シューは、3の魔法についての実験を行っています。
シューは新商品のシリアルを評価するという名目で、2つのアビールをした場合、3つのアビールをした場合、4つのアピールをした場合を比較してみました。
アピールする点は従来品と比較して、「よりヘルシー」「より味が良い」「より歯触り感アップ」「より高品曲質」の4つでした。
この4つのうち、どれをアビールするかを毎回ごちゃ混ぜにながら2つをアピールした場合、3つをアピールした場合、4つをアピールした場合に得点を付けてもらいました。
その結果、2つでも4つでも評価はイマイチで、3つのときにいちばん高い得点を付けてもらえることがわかりました。
どんな点をアピールしてもかまわないのですが、とにかくその数は3でなければダメなようです。
「ヘルシーで味が良い」と2つアピールされても、少し物足りないような感じがしますしリズムも良くありませ。
これが「ヘルシーで、味が良くて、歯触り感もアップしていて、より高晶質んですよ」と4つになると、今度はちょっとモタモタしているように感じます。
「ヘルシーで味が良く、より歯触り感アップしました」のように、やはり3つがちょうどよいのでしょう。
「政府の発表」は信じられる?

米国ペンシルバニア州にあるカーネギーメロン大学のキャレー。モレウェッジは、私たちが」正夢に怯える心理を明らかにしています。
モレウェッジは、ボストンのとある駅の通勤者に声をかけ、半分の通勤者には次のような質問をしてみました。
「あなたが飛行機での旅行を計画しているとして前日に政府が、テロのリスクが高い」と発表したとします。
「それでもあなたは旅行に出かけますか?」と、5点満点で「絶対に行く」を1点、「絶対にいかない」を5点として尋ねてみたところ、たいていの人は1点を付けました。
つまり「政府が警告していようが旅行を中止するつもりはない」ということです。
モレウェッジは、もう半分の通勤者には、ちょっとだけ設定を変えた質問をしてみました。
「あなたが飛行機での旅行を計画しているとして、前日に自分が乗っている飛行機が墜落する夢を見ました。それでもあなたは旅行に出かけますか?」
するとどうでしょう、今度は5点満点で、約15点という結果になりました。
やはり「中止するつもりはない」に近いのですが、政府の警告よりも正夢のほうが怖いことがわかったのです。
私たちには自分の直感のほうを信じたいという気持ちがあるのだと、モレウェッジは分析しています。
普通に考えれば政府がおかしな発表をするはずがないので、そちらのほうを信用したほうがよさそうなものです。
けれども私たちは、政府の発表よりも自分の見た夢のほうを信じるですから、なんともおかしなものです。
「政府が何らかの警告」を出したときには、素直にそちらに従ったほうがよいでしょう
組織なら許される

組織などの集団ではなく、個人がひどいことをする、すぐに道徳的に非離されることになります。
イスラエルにあるベンギュリオン大学のウルエル・ハランは、「家の所有者とリフォーム会社が、台所を新しく改装するための契約を結んだ」という内容の文章を作って、146名の人に読ませてみました。
この文章の中には、「リフォーム会社は施工の1週間前に一方的に契約を破棄した」という内容が書かれていました。
さて、ここまでの内容は同じですがここから先でハランは2通りの文章を用意しておきました。
半数の人に与えられた文章では、「リフォーム会社のCEOが、より代金の高いほかの仕事を引き受けるために契約を破棄した」と、CE0個人がひどいことをしたことになっていたのですが、残りの半数の人に与えられた文章では、「リフォーム会社が、より高い仕事を引き受けるために契約を破棄した」と、会社がひどいことをしたことになっていたのです。
違っていたのはこの部分だけですそれからハランは、この契約破棄がどれくらい道徳に外れていて貪欲だと思うかを尋ねてみどんよくました。
すると個人(CEO)がやったときのほうが、道徳に外れていて食欲すぎると評価されることがわかりました。
一方で、会社がひどいことをやったときには、なぜか「納得できるビジネス上の決定だ」と思われることもわかりました。
たとえ同じことをしても、個人がやったときのほうが、人には非難されますので、何か悪いことをするときには、できればほかの人も誘ってグループや団体や組織でやったほうがよいでしょう。
聴いてはいけない曲

音楽を聴くのは、とても気持ちの良いことです。けれども「これは避けたほうがよいのかもしれないなというジャンルもあるので注意が必要です。
気を付けたほうがよい音楽のジャンルの1つが、「カントリーソング」どうしてカントリーソングに注意が必要なのかというと、歌詞とテーマに理由がありますカントリーソングは、報われない恋とか、絶望とか、悲運とか、貧困といった「悲しい気持ち」を歌い上げるものが多いのです。
当然、そういう歌詞の多い曲を聴いていたら気持ちが滅入ってきてしまいそうです米国ミシガン州にあるウェイン州立大学のスティーブン・スタックは、カントリーソングのような、気持ちが滅入ってしまう曲を聴かされていると、自殺する人が増えるのではないかという大胆な仮説を思い付きました。
この仮説を検証するために、スタックはアメリカの9の都市のラジオ局でカントリーソングが放送された回数と、それぞれの都市の自殺率との関係を調べてみました。
すると相関係数は「プラス0.51」という高い数値になりました。
相関係数というのは、2つの変数がどれくらい関係し合っているのかを示す数値で、完全に反比例の関係にあるときには「マイナス1.0」の数値を取り、完全に比例関係にあるときには「ブラス1.0」になります。
プラス0.51ということは、かなり強い正比例の関係が見られたことになります。
ラジオ局でカントリーソングを多く流す都市では、自殺率も高くなっていたのです。
もちろん、ほかの要因も考えられなくはないのですが、カントリーソングを多く聴かされている住民気分が落ち込みやすく、それが自殺を引き起こしたという可能性は十分に。
非行を促す音楽

自分の子どもに聴かせるのは避けたほうがよいかもしれない、という音楽のジャンルがありますそれは「ラップ」。
特に、ラップの中でも特定のカテゴリーは避けたほうがよいことを示す研究があるのです。
カナダにあるモントリオール大学のデイブ・ミランダは、思春期のフランス系カナダ人348名の子ども(平均15・32歳)に、ラップのカテゴリーのうち、その好みを尋ねてみました。
ラップのカテゴリーで、反社会的な内容が多いものを「フレンチ・ラップ」というそうですまた、「ギャングスタ」、あるいは「ハードコア・ラップ」と呼ばれるカテゴリーも、暴力的な日常をテーマにしたものが多いそうです。
こういうカテゴリーのラップを聴いている子どもはやはり非行に走りやすくなるのではないか、というのがミランダの仮説でした。
ラップには、「ヒップホップ」や「ソウル」と呼ばれるジャンルもあります。こちらはダンスやパーティーなどがテーマなので、そんなに非行には影響しないだろうとも考えられました。
実際に調べてみると、まさにミランダの仮説通りでした。フレンチラップを好きな子どもは頻繁にケンカをし、麻薬の使用などに手を染めていることがわかったのです。
一方でヒップホップを好きな子どもには、そういう傾向は見られませんでした。
私たちは、自分が聴いている音楽の歌詞の影響を受けます「麻薬でハイになれ」「気に入らないヤッはぶん殴れ」といった歌詞の曲を日常的に聴いていたら、実際にそういう行動を取りやすくなることは十分に考えられます。
特に、まだ判断能力が弱い子どもへの影響は大きいでしょうある程度の判断能力ができている大人であれば、歌詞の影響もそんなに受けないのではないかと思いますが、思春期の子どもは被暗示性が強いので、どうしても音楽の歌詞の影響を受けてしまうものです。
参考文献
・(1)Mason, M. F., Lee, A. J., Wiley, E. A., & Ames, D. R. 2013 Precise offers are potent anchors: Conciliatory counteroffers and attributions of knowledge in negotiations. Journal of Experimental Social Psychology, 49, 759-763.
・(2)Shu, S. B., & Carlson, K. A. 2014 When three charms but four alarms: Identifying the optimal number of claims in persuasion settings. Journal of Marketing, 78, 127-139.
・(3)Morewedge, C. K., & Norton, M. I. 2009 When dreaming is believing: The (motivated) interpretation of dreams. Journal of Personality and Social Psychology, 96, 249-264.
・(4)Haran, U. 2013 A person-organization discontinuity in contract perception: Why corporations can get away with breaking contracts but individuals can not. Management Science, 59, 2837-2853.
・(5)Stack, S., & Gundlach, J. 1992 The effect of country music on suicide. Social Forces, 71, 211-218.
・(6)Miranda, D., & Claes, M. 2004 Rap music genres and deviant behaviors in French- Canadian adolescents. Journal of Youth and Adolescence, 33, 113-122.