遺伝子組み換え食品の真実:安全性と科学的根拠を徹底解説

ベジタリアン(菜食主義)やビーガン(完全菜食主義)が増える中で1つ問題となるは、遺伝子組み換え食品だろう。一般的な理解では、「なんだか食べると体調に不具合をきたしそう」などという印象が強いイメージだ。

そこでこの記事では、「遺伝子組み換え食品は本当に安全?」や「そもそも遺伝子組み換えってなに?」と考えている人に向けて科学的な知見から紹介をしたいと思う。

科学的に安全が保障された遺伝子組み換え作物

世の中には「遺伝子組み換えの安全性には科学的な合意がない」という論文が一定数存在していますが、これらはかなり怪しい意見という印象である。

と言うのも2012年にAAAS(アメリカ科学振興会)が以下のような声明を既に出している。

『科学的な結論は明確だ。バイオテクノロジーの分子技術による現代の作物改良は安全である。(中略)WHOや米国医師会、米国科学アカデミー、英国王立協会といった権威ある組織がリサーチを行い、いずれも同じ結論に達している。』

AAASは世界でもトップクラスの科学団体でして、ここが認めている以上は「科学的な合意がある」と考えるのが普通だと思われる。

当然、科学的な証拠も豊富で有名なのは2013年に出た論文で、2002〜2012年のあいだに出た1,783件の実験データをまとめた系統的レビューは、科学的な信頼度が非常に高いものとなっている。

そして、その結論は以下のようになった。

  • 遺伝子組み換えは、環境にも人体にも問題がない。
  • 遺伝子組み換え作物のDNAは、ヒトのDNAに取り込まれない。
  • 認可された遺伝子組み換え作物のなかに、特殊なアレルゲンや毒物が見つかったという事実もない。
  • 遺伝子組み換えが生態系を乱すという証拠もない。

かなり分かりやすくよく指摘される部分についての安全性を認めている。

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遺伝子組換えコーンについて、改めて徹底的に調べてみた


以前に「遺伝子組み換え食品って安全だよなぁ」って話を書いたことがありまして。ざっくり言うと、遺伝子組み換えで作られた作物(GMO)って、いまのところ人体の安全性もかなり確立されてるし、農薬の量も減らせるしでやっぱすごいねーみたいな話です。

で、近ごろ出た大規模なリサーチ(1)も、やはり「GMOは素晴らしい!」って結論でして、アンチ遺伝子組み換派を逆なでしそうな内容になっておりました。

これはイタリアで行われた研究で、1996〜2016年に行われた6006件のデータを精査したメタ分析になっております。なので、科学的な信頼性はかなり高め。

遺伝子組換えコーンのカビ毒はどうなのよ?
この研究は、おもに遺伝子組み換えのコーンを対象にした実験を調べていて、

出来上がった作物の量はどうか?
コーンにカビ毒(マイコトキシン)はないかどうか?

といったところをチェックしてます。マイコトキシンはカビの代謝物のことでして、こいつがたまった作物を食べると、癌の発症率が上がったり慢性炎症が起きる原因になったり。つまり、カビ毒が少ない作物ほどアンチエイジングには良いと言えるわけっすね。

でもって、すべてのデータから質が低いものを取り除いて残ったのは76件。それでなにがわかったかと言いますと、グラフを見ていただくとわかりやすい感じでです。

図1

まず、図1の「yeild」コーンの生産量の違い。どの品種を見ても、あきらかにGMOのほうが生産量が上がっております。特に4種類をかけ合わせたQSの生産量が高い。


さらに、消費者にとって大事なのが下段の「Damaged ears」の部分だ。

これはコーンがどれだけ菌に感染してるかの指標になっており、これが少なければ少ないほどマイコトキシンは減ってく。

そしてこの数値も、遺伝子組み換えのほうが、かなり優秀な成績を叩き出している。

図2

図2、実際に遺伝子組み換えコーンにどれだけマイコトキシンがふくまれているのかを示している。

フモニシン(Fumonisins)やトリコテセン(THricotecens)は有名なカビ毒で、ヒメヨコバイ(cicadellidae)やコマユバチ(braconidae)は穀物につく害虫の一種だが、全体的には、GMOのほうががっつりマイコトキシンは減る。

ちなみに、この研究ではGMOの栄養プロファイルも調べており、特に普通のコーンとの違いは見られなかった、とのこと。

たんぱく質、脂質、食物繊維、ポリフェノールの量なども特に変わらなかった。

遺伝子組み換えの歴史

遺伝子組み換え作物を含む遺伝子組み換え生物 (GMO)は、「最新のバイオテクノロジーを利用し て実現された、それまでにない組み合わせの遺伝子」を持っている生物として定義される。

ここでは、 「最新のバイオテクノロジー」という言葉がポイントになる。有史以来、人間は環境を遺伝子レベルで 改変し続けてきたという事実があるからだ。

人間は紀元前1万2000年頃から交配や品種改良によっ て、動植物を自分たちが育てやすいように改良することを始めた。

これらはすべて、特定の遺伝的形質 を選り抜くことが目的であり、現代の遺伝子組み換え技術の先駆けといえる。

遺伝子組み換え作物は「不自然な」 植物だとして、世間の風当たりが強い。

そう批判する人の多くは 気づいていないようだが、私たちが「自然」だとする食物の大部分は、じつはすでにかなりの遺伝子操 作を施されている。

たとえば、食料品店で売られているトウモロコシは、祖先である野生品種とはもはや似ても似つかない。

もともとは、指の長さほどの細い穂をつけたテオシントというイネ科植物だった。 それが、9000年にわたって栽培されるあいだに穂がしだいに大きくなり、そこに丸く柔らかな甘い実が何列も並ぶように変化した。

その過程で、植物のゲノム自体も大きく改変されている。

それに比べれば、現在私たちが慣れ親しんでいるリンゴは、小さな原種の面影をまだしも多く留めている。

とはいえ、この原種を見つけられたら相当にラッキーだ。

野生のものは今では絶滅の危機に瀕しているからである。

それでも私たちの食生活にとってはたいして困らない。

というのも、現代のリンゴに最も多くの遺伝子を提供したクラブアップルは、恐ろしく酸っぱくて食べられたものではないからである。

そして科学者が研究室でDNAを組み換えるという方法で自然に手を加えるのは、環境保護活動家たちにとってこの上なく思い上がった、恐ろしい行為なのだ。

現在、遺伝子組み換え技術が最も大規模に利用されている分野は食糧生産だ。

遺伝子組み換え技術を用いると、害虫に強い作物や、高温や低温をはじめとする様々な環境条件にも耐えられる作物、特定の 病気にかからない作物などを作り出せる。

遺伝子組み換え作物には、栄養成分組成が改善されたり、長期の保存が可能だったり、除草剤に対する耐性を持っているものもある。

米国で生産された作物のうち、大豆の94%、綿の96%、トウモロコシの93%が遺伝子組み換えであり、 途上国で栽培されている作物の54%は遺伝子組み換え作物だ。

その結果、特に途上国の農家に とっては劇的な変化がもたらされた。

遺伝子組み換え技術のおかげで農薬の使用量は37%減少し、生産量は22%も増え、農家が手にする収入は68%増えた。

遺伝子組み換え作物の種の値段は普通のよりも高いが、農薬の使用量が減り、収穫量が増えるおかげで価格差は十分にまかなえる。

また2016年、アメリカ科学アカデミー(NAS)は遺伝子組み換え作物に関する包括的な報告書を発表した。

そのなかで指摘したのは、地球温暖化によって伝統的な農産物が育ちにくくなれば、人の手で遺伝子改変を施した植物がない限り、増え続ける地球の人口に食料を供給することができないという ことである。

遺伝子組み換え食品は普通の食品よりも危険なのではないかと恐れる人は多いが、綿密な科学的研究により、心配する理由は何もないことが示されている。

米科学振興協会と米国科学アカデミーはいずれも、遺伝子組み換え作物の使用を支持する声明を出している。

遺伝子組み換え技術を積極的に支持していない欧州連合でさえ、科学を無視することはできない。

そして、遺伝子組み換え作物は、人が食べても環境にとっても安全だというNASの立 場を改めて強調した。

WHOの言葉を借りるなら、 「一般大衆がその種の食料を摂取しても、人の健康に何ら影響のないことが示されている」のである。

そして2010年、欧州委員会は次のような声明を 発表した。

『500以上の研究グループが関与した、研究期間が25年以上におよぶ130件以上の研究 プロジェクトにより導きだされた主な結論は、バイオテクノロジー、特に遺伝子組み換え作物は、従来 の育種技術と比べてそれ自体の危険性が高いとはいえないということだ』。

科学がはっきりした結論を下したにもかかわらず、市民の不安は解消されていない。

しかし遺伝子組み換えは、命にかかわる病気を治療する薬にも使われてきた。

糖尿病患者が常用するインスリン血友病治療に使われる血液凝固たんぱく質、低身長の子供に投与されるヒト成長ホルモンなどは、すべて遺伝子組み換え技術を利用して製造されている。

遺伝子組み換え技術が登場するまで、これらの製品はブタの脾臓、献血、 献体者の下垂体から作られていた。

品種改良により、人間が現在「自然に」栽培している作物は、元の 植物とはかけ離れた別物になっている。

現実的な見地に立てば、 突然変異を利用して特定の作物の品種改良を重ねる農家と、突然変異を人為的に作り出すことを選んだ研究者の間にほとんど差はない。

どちらも、突然変異としては同じだからだ。

それでも、遺伝子組み換え技術に対する反対の声は根強い。

最近では、魚の遺伝子を組み込むことに より、年間を通して収穫できるトマトが話題になった。

フランケンシュタインのようなイメージが環境 保護活動家たちを刺激し、遺伝子組み換え食品をラベルで判別できるようにしようとする動きは高まっ ている。

ポッドキャスト(訳注 インターネットメディアの一種) 『The Skeptics’ Guide to the Universe (懐疑論者の世界入門)』を運営しているイエール大学医学部のスティーブン・ノベラ助教授は、わかりやすくこうまとめている。

「ここでの本当の問題は、遺伝子組み換えトマトに魚の遺伝子が 入っているかどうかじゃない。誰がそんなことを気にするというんだ?」と彼は書いている。

「魚の遺伝子を口にすることが危険だというわけでもあるまい。みんな、本物の魚を食べているじゃないか。」

それに、人間の遺伝子のおよそ70%は魚と同じという説もある。

人間は自ら魚の遺伝子を持ち、 これまで食べたあらゆる植物も魚の遺伝子を持っている。

遺伝子組み換え技術をめぐる議論は、2015年に支離滅裂なところまで到達した。

この年、ニュー ヨーク州議会のトーマス・J・アビナンティ議員がすべての遺伝子組み換えワクチンを禁止するという 議会法案1706号を提出した。

当たり前のことだが、ほとんどのワクチンは遺伝子が組み換えられて いる。

遺伝子組み換えを行わず、「自然のまま」の細菌やウイルスを注射すれば、病気にかかってしまう恐れがあるからだ。

例えば、遺伝子組み換えポリオウィルスにより、米国をはじめとする世界中の多 くの国でポリオが根絶された。

ワクチンには遺伝子組み換えが必要なのだ。

だから今もこれからも世界に医療や食料を供給していきたいなら、安全な新しい科学技術を受け入れていくしか道は残されていない。

参考文献 

・Alessandro Nicolia, Alberto Manzo, Fabio Veronesi & Daniele Rosellini (2014) An overview of the last 10 years of genetically engineered crop safety research, Critical Reviews in Biotechnology, 34:1, 77-88, DOI: 10.3109/07388551.2013.823595

・Ewen, S, W., and A. Pusztai. “Effect of Diets Containing Genetically Modified Potatoes Expressing Galanthu nivalis Lectin on Rat Small Intestine,” Lancet 354 (1999): 1353-1354.

・Flam, F. “Defying Science and Common Sense, New York Bill Would Ban GMOs in Vaccines,” Forbes, February 26, 2015.

・J. Wenz, “The Mother of All Apples Is Disappearing,” Discover, June 8, 2017, https:// blogs.discovermagazine.com/crux/2017/06/08/original-wild-apple-going-extinct/#. W_3i8ZNKjOQ

・Klumper W., and M. Qaim. “A Meta-Analysis of the Impacts of Genetically Modified Crops,” PLOS One 9 (2014): 1-7.

・Novella, S. “No Health Risks from GMOs,” Skeptical Inquirer, July/ August, 2014.

・Pellegrino, E., Bedini, S., Nuti, M. et al. Impact of genetically engineered maize on agronomic, environmental and toxicological traits: a meta-analysis of 21 years of field data. Sci Rep 8, 3113 (2018).

・P. Mirocha, and A. Mirocha, “What the Ancestors Ate,” Edible Baja Arizona, September/October 2015, https://ediblebajaarizona.com/what-the-ancestors-ate.

・http://www.aaas.org/sites/default/files/AAAS_GM_statement.pdf

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