夜型人間が知るべき科学的メリット:夜更かしの意外な利点

 夜型と朝型、あなたはどちらですか?

 夜更かしは健康に悪いと言われがちですが、実は夜型人間には驚くべきメリットがあるかもしれません。

 科学的な根拠をもとに、夜型の生活が持つポジティブな側面を探ってみましょう。

 そもそも夜型の人が朝型にこだわる必要はあるのでしょうか?

 批判されがちな夜型が持つ力とは一体何なのか、さっそく解説していきましょう。

夜ふかしする人のメリット3選

夜ふかしのほうが頭がいい

 アメリカの若者を対象にした調査では、早寝早起きよりも夜ふかし型のほうがIQが高いとのデータが出ております。

↑縦軸が「週末に寝る時間」で、→横軸が「IQの高さ」です

 このような結果に至る理由は不明のようですが、「人類は夜中の活動に適応できるように進化していないので、知性が低いと夜ふかしに対応できないからではないか?」という仮説があるようです。

 ちょっと日本人にも適法できるのかは分かりませんが、こうした研究があることを知っているだけでも心強いのではないでしょうか?

夜ふかしのほうが年収が高い

 マドリッド大学が1,000人の学生を調査したところ、夜ふかし型のほうが成績がよく、いい会社に入る確率が高く、年収も良い傾向がありました。

 どうやら、夜ふかし型は帰納的な思考が得意で、ものごとを分析するのが上手い人が多いらしいです。

 この能力が、結果としてよいキャリアに結びつきやすいとのことです。

夜ふかしのほうがモテる

 夜ふかしの男のほうがモテると論じたのが、ハイデルベルク大学が2012年に行った研究です。

 その要点を抜き出すと、男性における「モテ」要素は、第一に外向的であること。次に、年齢、夜ふかしができる能力が続きました。

 あまりにも要点をかいつまんでいる気もしますが、夜の活動が長い人ほどモテるのは不思議ですね。

早起きは遺伝子レベルの問題?

 カリフォルニア大学の研究では、早起き一家の遺伝子を調べたところ、早起きにしかみられない特有の染色体を発見しました。

 同様に夜ふかしの傾向にある家族にも、同じように夜ふかしに特有の染色体が見つかったようです。

 もっとも、人間には早起き型と夜ふかし型の2タイプがいるというのは7年前〜8年前から既に言われている話であり、「ヒバリ型(早起き)」と「フクロウ型(夜ふかし)」という名称すらもついていたりします。

 そして今回の研究は、それが遺伝子レベルで特定されたのが注目すべきポイントです。

 というわけで、もともと夜型の人が「早寝早起きするぞ」と意気込むのは、遺伝子レベルのハードルを越えないといけないので、相当難易度が高いです。

 「朝は活力がみなぎる」と言ってる人は遺伝的に朝型なだけなので、早起きにあこがれるのは時間のムダだと言えます。

夜型人間でも早起きできるようなる?

 いくら夜型は朝に弱りからといって現代社会がそれに対応してくれるわけではありませんね。

 そこで夜型の人が朝型になるのは可能なのか?という疑問が湧いてきます。

 まず人間の睡眠と覚醒のサイクルは生物学的に深く刻み込まれており、脳の奥深くにある神経細胞の束が、私たちが眠くなる時間や目が覚める時間などを調節しております。

 これが、いわゆる体内時計です。

 そして体内時計は人によって異なり、いろんな要素に影響を受けることがわかっております。

 例えば、光の影響に対する体内時計の感度が高い人と低い人がいたり、食事のタイミングによる反応が違ったりといった要素があり、これらの違いによって私たちが早起きが得意なのか、それとも夜更かしが得意なのかが決まるわけです。

 もっとも重要な要素は「光」で、太陽や室内光の影響は本当に大きいです。

 当然ながら、昔は早起きするのはそれほど大変ではありませんで、200年前の産業革命までは、体内時計と環境はもっと同期していたと考えられております。

 現代では夜間にも人工照明がガンガンに室内を照らしているため、体内のマスタークロックが「あれ?いま昼間かな?」と勘違いをしてしまいます。

 では、夜型の人が朝型になる方法はあるのか?と言われれば、「ある程度まで早起きになることは可能だが、かなり難しい」が答えになります。

 やはり体内時計を変えるのは、遺伝のルールに戦いを挑む行為なので、本当に難しいのです。

 一応、バーミンガム大学などの研究では、「もしかしたらそれなりに体内時計をズラせるかも?」という結果を出しています。

 これは、10代後半から20代前半の「極端な夜ふかし人間」22人を対象にした実験で、参加者の睡眠タイミングは、約8時間睡眠の場合で午前3時ぐらいに寝るのが普段のルーチンだったようです。

 かなりの夜ふかしですね。

 そして参加者にどんな指示が出たかと言いますと、以下のようになります。

  • 通常より3時間早く起床し、ベッドから出たらできるだけ早く日光にあたる
  • 午後3時以降はコーヒーを飲まず、昼寝もしない
  • 夜7時以降は食事をとらない
  • 夜になったら室内は照明を限界まで落として、スマホやPCの画面を見ない
  • いつもより3時間早い時間に就寝する
  • なにより重要なのは、以上の習慣を1週間は確実に守る

 いずれも夜ふかしの人間には厳しい習慣ですが、この指示を守り抜いた参加者は、実験のスタート時よりも平均で2時間早く眠れるようになり、うつ病やストレスが少なくなったそうです。

 もともと極端な夜更かしであれば、睡眠衛生の徹底により、体内時計が改善するかもしんないわけですね。

 もちろん、この研究はかなり小規模で、そもそも「夜型を朝型に変える」という目的で行われたものではないので、果たして「早起きをした」という人にも有効かは判断できかねます。

 ただし、上記のプロトコルってのは、睡眠改善の世界だと普通に行われていることなので、早起きになりたい人にも有効なのかも?という気はしています。

 といっても他にできることもないため、本気で「早起きができるようになりたい」と考えたら、上記のプロトコルを守るのが最善だと思われます。

 少し趣旨はズレてしまいますが、「体内時計の調整などあきらめて労働環境を変えたほうがいいのでは?」と考えるのもひとつの手でしょう。

 事実、クロノタイプに従ってスケジュールを組んだ労働者は、そのぶんだけ睡眠が深くなったってな報告もあります。

 もちろん、勤め人だと難しい話なんですが、出社時間が変えられないときは、上記のプロトコルをまろやかに取り入れながら30分〜1時間ぐらいの範囲で体内時計をズラしつつ、「自分の集中力が上がる時間に生産的な仕事をする」と決めとくしかないかもしれません。

「体内時計」の種類による違いとパフォーマンスの悪化

 世間では「早起き」が持ち上げられるケースはよくありますが、人はそれぞれ異なる体内時計を持っているがゆえに、体内時計に合わない人が無理やり早起きをしても逆効果になるケースや実際、自分の体内時計に合わない暮らし方をしている人はかなり多いでしょう。

 なのでいくら「早起きが良い」と言われようが、生まれつきの体内時計に沿って生きないと辛いものです。

 さて今回紹介する研究は2018年に「ソーシャル時差ボケ」について調べたものです。

 ソーシャル時差ボケってのは近ごろよく言われる単語で、ざっくり言えば「自分の体内時計に適してない生活をしてるせいで、持ち前のパフォーマンスを発揮できない現象」のことです。

というわけで、この研究では14,894人の学生を集めて、まずは全員の体内時計を3種類にわけてます。

  • 朝型
  • 昼型
  • 夜型

 当然、朝型は起きてすぐに能力を発揮できる人で、夜型は夕方ぐらいからようやくエンジンがかかり始める人のことですね。

 その上で全員を2年ほど追っかけて、みんなの学校での成績を比べたんですよ。それで何がわかったかと言いますと、以下のような結果になりました。

  • 各自の体内時計にマッチしたスケジュールで勉強ができていた者は40%しかいなかった
  • 50%の大学生はソーシャル時差ボケのせいで授業時間までにパフォーマンスを発揮できていなかった
  • 10%の学生はパフォーマンスのピークを過ぎた後で授業を受けていたため、やはり最高のパフォーマンスを発揮できていなかった
  • 特に「夜型」は成績の面で不利で、もっとソーシャル時差ボケの発生率が高かった

 つまり、夜型は朝からの勉強にパフォーマンスを発揮できないため、どうしても自分の体内時計とズレが出てしまい、最終的には成績まで下がってしまったようです。

 当然ながらこれは会社でも言えることで、企業は8:30からスタートするので、夜型の人がこれに適応するのはなかなか大変です。

 とにかく夜型は「早起きするぞ」とは思わないほうがいいでしょう。

参考文献

・Elise R. Facer-Childs, Benita Middleton, Debra J. Skene, Andrew P. Bagshaw,Resetting the late timing of ‘night owls’ has a positive impact on mental health and performance,Sleep Medicine,Volume 60,2019,Pages 236-247,ISSN 1389-9457,https://doi.org/10.1016/j.sleep.2019.05.001.

・Eveningness is related to men’s mating success

・Morningness-eveningness and intelligence: early to bed, early to rise will likely make you anything but wise

・Night owls are wealthier and wiser than larks, study finds

・Why Night Owls Are More Intelligent Than Morning Larks

https://www.bbc.com/news/health-25777978

・https://www.cell.com/current-biology/fulltext/S0960-9822(15)00128-1?_returnURL=https%3A%2F%2Flinkinghub.elsevier.com%2Fretrieve%2Fpii%2FS0960982215001281%3Fshowall%3Dtrue#%20

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