怒りをどう消すか
怒りの対処法は、例えば筆記開示とか運動とか色々ありますが、いかせん面倒くさいですよね。
大抵「へー運動すれば良いのか~、まぁやらないけどね」ってなるでしょね。私も同じ気持ちになりますし。
「あれがいい、これがいい」と言われても、やる気が起きない貴方にその場から動かずにできる、解消法を紹介します。
お好きな方法をお試しあれ。
殴っても発散効果はない
長い時を生きているれば、イライラする事は多々あります。
列の割り込みから男女関係のいざこざ、さらには家庭環境の問題などなど挙げればキリが無いでしょう。
そんな時、私達は無意識に枕を殴ったり叫んだりして怒りを発散させようと考えますが、実際にそれらは効果があるのでしょうか?
2002年にアイオワ州立大学のブラッド・ブッシュマンが600人の学生を対象に実験を行いました。(1)
学生たちに妊娠中絶について、どう考えているのか作文に書いてもらいました。
集めた作文を実験者が採点し、意図的に酷評を行いました。
そして学生たちは、当然ながら腹を立てて怒り心頭になります。
学生の半分に、採点者らしき人物の写真が貼ったサンドバッグを殴らせてその回数を測り、もう半分には静かに部屋で二分間座らせました。
その後、両グループを集めて二人一組のゲームをやらせて、勝者には敗北者の目の前で大きな破裂音を出す権利が与えれました。
するとサンドバッグを殴った学生ほど、相手に向かって長く大きな破裂音を出す傾向が見られました。
別の実験でも同様の結果が見られ、ここから分かるのは、怒りを発散させても火は消えないどころかより燃え上がることが見て取れます。
では、一体どうしたら湧きあがる怒りを解消できるのでしょうか?
クラシック音楽を聴く
感情に変化があった時に音楽を聴くのは、割と古典的かも知れません。
しかし、より適切に理解してれば誰も傷つける事無くイライラを解消する手段になるのは間違いないでしょう。
カルフォルニア大学のスカイ・チャフィンとそのチームは、ストレスがたまった時に血圧を下げる効果のある音楽について調べました。(2)
彼らはまず参加者に2397という数字から13づつ引き算をしてもらった。2397、2384、2371などなど。
30秒ごとに実験者の緊張を煽るような言葉を「どうした、早く解いてくれ」を掛けて急がせた。
その後、半数の人はただ静かにしてもらい、もう半数はジャズやポップス、クラシックを聴いてもらった。
するとクラシックだけが、血圧をはるかに早く下げて短時間で平常に戻った。
実験では「パッフェルベル」や「ヴェルディ」などを聴かせていましたが、イライラ時のクラシックは他の曲でも多分いいのでしょう。
ちなみに個人的なオススメは、トルコ行進曲や新世界といった有名どころですね。
太陽を浴びる
太陽の光には様々な効果があることが判明していますが、その中でも今回はストレスやイライラを解消する点に注目したいと思います。
ヴァージニア州心理・行動遺伝学研究所のマシュー・ケラーらは、太陽の光が情緒に及ぼす影響を調べました。(3)
結果、湿度も気圧も高い暑い日には気分がよくなり、記憶力も向上することが判明した。
ただしそれは外に30分以上いた場合に限る。それ以下の時間でしか、日の光を浴びなかった場合には逆に気分が沈んでしまう。
これは恐らく天気のいい日に家に閉じ込められると腹が立つからだと研究者は考えている。
私はあんまり30分以下の日光浴で、気分が低下したと感じる事は無いですが、家のカーテンを開けてスマホでも弄りながらボーとしていれば、家の中でも30分くらい余裕な気がしますのでお試しあれ。
ちなみに、散歩と組み合わせるとより体に良いので、そちらもどうぞ。
笑うこと
これも古典的ですが、効果がある内の一つに数えられているのは流石と言うべきでしょうな。
2005年にメリーランド大学のマイケル・ミラーらは実験を行いました。(4)
参加者に不安を感じさせる映画「プライベート・ライアン」と笑える映画「恋人たちの予感」を見せました。
緊張が高まる映画を見た時は、参加者の血流量が35%も低下したのに対して笑える映画を見た人は22%も血流量が増加した。
研究者たちは毎日15分以上笑うことを推奨している
普段あんまり笑うことのない人は、漫才を見たり家族や友人と冗談を言ったりして笑うことを心がけましょう。
漫才ならサンドウィッチマンや千鳥、バイキングが結構好きなのでオススメです。
誰かと一緒にゲームするのもありでしょうな。UNOとかトランプ、人生ゲームもやり始めると面白いですのでどうぞ。
誰かの為に祈る
祈る行為は宗教的なモノにも感じられますが、瞑想などにも「慈悲の瞑想」というものがあり、第三者の幸せを願う瞑想があるくらいなので、そこまでマイナーである訳ではない無いようですね。
アイオワ州立大学のブラッド・ブッシュマンはキリスト系大学の学生を集めて実験をしました。(5)
彼らに作文を書かせて、それを極端にけなして不快な気分にさせます。その後に、希少がんを患う女性についての記事を読んでから、片方のグループには女性に祈りを捧げて、もう片方のグループにはその女性について考えるように指示しました。
すると祈った方のグループは、かなり怒りが鎮まっていました。
ここから分かるのは、見知らぬ第三者だけでなく、知人や家族でも問題がなさそうにも思えます。
重要なのは、相手に対して祈りを捧げる行為なのです。
何なら試しに、愛犬や愛猫に祈りを捧げてみてはどうでしょう。
終わりに
物に八つ当たりするのは良くない、なんて聞きますが実験を見るとやはり殴るのは止めた方が良いでしょうね。
なるべくお金が掛からない方法をチョイスしたので、気になった項目があればやってみてください。
参考文献
・(1) B. J. Bushman (2002). ‘Does Venting Anger Feed or Extinguish he Flame? Catharsis, Rumination, Distraction, Anger, and Aggressive Responding’ . Personality and Social Psychology Bulletin, 28, pages 724-31.
・(2) S. Chafin, M. Roy, W. Gerin and N. Christenfeld (2004). ‘Music Can Facilitate Blood Pressure Recovery from Stress’. British Journal of Health Psychololgy, 9, pages 393-403.
・(3) M. C. Keller, B. L. Fredrickson, O. Ybarra, S. Cote, K. Johnson, J. Mikels, A. Conway and T. Wager (2005). ‘A Warm Heart and a Clear Head. The Contingent Effects of Weather on Mood and Cogition’ . Psychological Science, 16, pages 724-31.
・(4) H. M. Lefcourt (2005). ‘Humor’ in C. R. Snyder and S. J. Lopez(eds), Handbook of Positive Psychology, Oxford: Oxford University Press, pages 619-31.
・(5) Bremner, R. H., Koole, S.L., & Bushman, B.J. (2011). ‘Pray for those who mistreat you: Effects of prayer on anger and aggression’ . Personality and Social Psychology Bulletin, 37, 830-7.