今の時期は、就職活動に勤しんでいる人や大学の面接に向けて色々と練習をしている学生さんがいると思います。
世の中、様々なアドバイスに溢れていますが、果たして本当にそれらは面接の際に有利に働くのでしょうか?
今回は、どうしたら面接で他者よりも採用されやすくなるのかについて紹介していきます。
面接は好感だけ
大抵、企業の人間は仕事の適性や経験と言った部分が重要であるという風に考えたりします。もちろん、それらは会社で円滑に作業を進める上で大切なことであるのは確かです。
しかし、実際に面接で必要になるのはそれらとは全く違いました。
ワシントン大学のチャド・ヒギンズとフロリダ大学のティモシー・ジャッジは2004年の研究で新卒採用試験に臨む直前の大学生100人を対象にして調査を行いました。(1)
学生たちの履歴書に目を通し、適正と経験について調べ、採用試験で面接を終えた学生たちに面接での応対についてアンケートに答えてもらいました。
さらに面接官とも連絡を取り、面接態度や会社への適性、採用結果などを尋ねました。
その結果、採用されやすい人の特徴は、好感度でした。
よい印象をあたえた応募者は合格の割合が高かった。
そして、そんな彼らはいくつかの方法で引き付けて売り込みに成功していたのです。
自分と面接官の間に「類似性」を感じるような話題、例えば同じ野球部だったとか、釣りが好きだとか、そういった話をうまく繰り出せる人は相手に好感を持ってもらいやすく、なおかつ採用されやすいのです。
また「視線をしっかりと合わせてくる人は頭が良い」という事も人間は経験的に理解している為、話す時の視線の置き方を無意識に観察しているので、面接でより知性を高めたい場合には、面接官の目を見れるようにして置くことが重要です。
弱みは最初に言う
未だに「面接はQ&A式で行われる」と考えている人がいるのは事実です。
聞かれた事にだけ、過不足なく答えるという面接は、他の志願者の中に埋もれ「普通の人」になる一番の近道です。
しかし、多くの人はそのような事は望んでいませんね?
また面接に臨む人の中には、どうしてもあまり人に言いたくないような欠点を持っている人も居るかもしれません。
重要なのは、質問に答える時も相手がどういう意図を持って、その質問をしてきたかを考えた上で、回答にプラスαのアピールをすることです。
その場合、どうやってうまく伝えたらよい印象を持たれるでしょうか?
1970年代にデューク大学の心理学者エドワード・ジョーンズとエリック・ゴードンが実験を行いました。(2)
参加者に一人の男性が自分の人生について語るテープを聞かせたあと、好感を持った度合いについて尋ねました。
テープの男性は、学生時代にカンニングをして退学になった話をして、前半にその話が出てくるバージョンと後半に出てくるバージョンを作り、別々のグループに聞かせました。
すると、カンニングの話が前半に出てくるほうが、後半に出てくるよりも、その男性に対する印象は良くなりました。
逆に、自分のプラスになるような話は、後半にした方が良い印象を相手に与えられます。
実際、似たような研究でもプラスの話を前半に語るより、後半に語る方が印象が良くなっていました。
ミスを気にするな
万全の準備をしても、面接という場面では緊張で思わぬミスをしてしまうこともあるでしょう。
そういう時には、余計に焦らないという事が重要になります。
2000年にコーネル大学のトマス・ギロヴィチたちは、実験を行いました。(3)
研究室に参加者を集め、同じ部屋でテーブルに並んで座り質問票に答えるように頼みました。
ところが、科学者が手配した一人の参加者が後から5分遅れてやってきました。
部屋に入る前に罰としてバリー・マニロウの写真入り(当時、死んでも着たくないと考えられていた)Tシャツを着てもらい部屋に通されました。
作業をしている学生たちに晒した後、しばらくして遅刻者は外で待つように言われ、部屋から出されました。
そのあと、Tシャツを着た遅刻者と部屋で作業をしていた参加者を調査しました。
まず遅刻者に自分のTシャツはどれだけ見られたのかを聞いたところ、中に居た人の50%が自分のTシャツを見ていたと答えましたが、実際には部屋に居た人の20%しかTシャツ存在に気付いていませんでした。
つまり、他人は思うほどアナタのことを気にしていないということです。
このように、他人の視線を意識しすぎてしまう現象を「スポットライト効果」と呼び、様々な場面で登場します。
面接では、ミスに対して過剰に反応したり謝ったりしてしまうかもしれませんが、相手からしたら特に気にする程の事でも無い場合があるので、むしろ余計な注目を集めないように、些細なミスや言い間違いは何事も無かったかのような毅然とした態度で面接を続けるのが一番でしょう。
難しい言葉は使うな
報告書や手紙の中で、自分の知性や博識を印象づけようとして、小難しい言葉を使いたくなることがあると思います。
ダニエル・オッペンハイマーの研究により、難解な言葉は悪い印象を抱かせる可能性を示唆しました。 (4)
5回にわたる研究で、様々な文章で使われた難しい言葉を系統的に調べ、一般人にそうした難解なことばを使った文書を読んでもらうと、分かりやすい言葉を使う人ほど知性が高いと評価されました。
逆に、無駄に難しい言葉を使う文章は読みにくく、書き手に対する印象も良くありませんでした。
もちろん、この実験では文章でしたが、それを声に出して言った場合にも、さほど変わらないと思います。
言っている事は凄いけれど「結局何が言いたいの?」となるような事態はなるべく避けるようにすると、面接では相手にこちらの意図を理解してもらいやすくなるでしょう。
早口で説得力が上がる
難しい言葉を使うのは良い印象を与える上では御法度ですが、実は喋る速度も重要になってくる事はご存知ですか?
一見すれば、落ち着いてゆったりとした口調の会話が好ましいようにも思えます。確かにそれは一理あります。
しかし、タイミングによってはむしろ早口の方に軍配が上がる場合も存在します。
心理学的に最も説得力を高める話し方は「最初に早口で、後からゆっくりと話す」です。
また相手から何かを質問された時には、なるべく即答するように意識すると、よりカリスマ性が増すと言う結果になりました。(5)
最初の出だしは、相手がやっと話についてこられるくらいのスピードで話す事で、面接官が吟味したり反論したりする余裕を奪います。
そして自分の最大の売りなどを強調したいところだけゆっくりと話す事で、相手に印象を残すことが出来るのです。
終わりに
面接に関して、皆さん色々な工夫や対策をする人が多いと思います。今回、紹介した内容がお役に立てれば幸いです。
参考文献
・(1) C. A. Higgins and T. A. Judge (2004). ‘The Effect of Applicant Influence Tactics on Recruiter Perceptions of Fit and Hiring Recommendations: A Field Study’ . Journal of Applied Psychology, 89, pages 622-32.
・(2) E. Jones and E. Gordon (1972). ‘Timing of Self-Disclosure and its Effects on Personal Attraction’ . Journal of Personality and Social Psychology, 24, pages 358-65.
・(3) T. Gilovich, V. H. Medvec and K. Savitsky (2000). ‘The Spotlight Effect in Social Judgment: An Egocentric Bias in Estimates of the Salience of One’s Own Actions and Appearance’ . Journal of Personality and Social Psychology, 78, pages 211-22.
・(4) D.M. Oppenheimer (2005). ‘Consequences of Erudite Vernacular Utilized Irrespective of Necessity: Problems With Using Long Words Needlessly’ . Journal of Applied Cognitive Psychology, 20, pages 139-56.
・William von Hippel, R. (2015). Quick Thinkers Are Smooth Talkers: Mental Speed Facilitates Charisma – William von Hippel, Richard Ronay, Ernest Baker, Kathleen Kjelsaas, Sean C. Murphy, 2016. Retrieved October 13, 2020, from https://journals.sagepub.com/doi/full/10.1177/0956797615616255