ビタミンD不足を解消!睡眠とメンタルヘルスを科学的に改善する方法

 日光やビタミンDは人間の健康に多くの影響を与えることが知られており、睡眠やメンタルにも関連があるとされていますが、過剰な日光やビタミンDの摂取は、健康に悪影響を与える可能性もあるため、適切な量を摂取することが重要です。

 睡眠やメンタルの改善には、バランスの取れた生活習慣も重要であると言えます。

室内で働く人の9割はビタミンDが足りてない

 ネイチャーに出た論文で、過去に行われた71件の研究をまとめて、53,345人分のデータを精査したメタ分析が行われ、調査された職種は以下のようになっています。

  • インドアで働く人
  • アウトドアで働く人
  • シフトワーカー
  • ヘルスケア職

 太陽光に当たる職業かどうかで、どれだけビタミンDレベルが変わるかを調べました。

そして以下のような結果が出ました。

  • インドアで働く人は全体的に90%がビタミンD不足だった。
  • もっともビタミンDが足りないのはシフトワーカーで、全体の80%に不足が見られた
  • 2番手はインドアワーカーで77%、3番手はヘルスケア学校の学生さんで72%だった
  • 専門医やヘルスケアのプロでもおよそ40%にビタミンDの不足が見られた
  • アウトドアで働く人でも、全体の48%はビタミンD不足だった

 屋内で働く人はほぼ9割がビタミンD不足という結論になっています。

これについて研究者は、「十分な太陽とビタミンD補給は、メタボリック症候群や精神病、心疾患、癌といった様々な問題の予防に役立つ可能性がある。インドアで働くことが多いグループは、定期的にビタミンDレベルのスクリーニングを行うべきだし、将来の臨床や公衆衛生のガイドラインにすべきだ。と述べています。」

 ただし、この研究では性別や体組成といった要素を考慮いませんので、そのへんは少し割引いて考える必要はあるかもしれません。

ビタミンDで頭痛や腰痛が楽になる?

 これは、過去に行われた19件のビタミンDの研究から3436人分のデータを精査した系統的レビューとなっています。

 主に効果をチェックした症状は以下の通りです。

  • 頭痛
  • 腰痛
  • リューマチ性関節炎
  • 線維筋痛症
  • 骨関節炎
  • 筋骨格痛


 そして結果は以下の通りになりました。

  • プラシーボにくらべて、ビタミンDを摂取した約38%の人はで鎮痛効果が得られる
  • ビタミンDの鎮痛レベルは約6%
  • 頭痛でも腰痛でもリュウマチでも、どんなタイプの痛みにも効果は出る

 たった6%の鎮痛作用というと効果が薄く感じるかもしれませんが、そもそも「慢性痛」は治療が難しいので、一定の効果が得られることが分かっただけでも凄いことです。

 ちなみに、ビタミンDの鎮痛効果は、飲み始めからおよそ6カ月以内に得られるそうです。

ビタミンDで睡眠の質が改善する?

 これはイランで行われた実験で、20歳〜50歳までの男女93人の参加者を対象として、「そこそこ睡眠の質が悪いけど完全な睡眠障害ではないレベル」の人を選抜したようです。

 具体的には、寝付きが遅いとか、睡眠時間が1日5時間ぐらいとか、昼間にやたら眠くなるとか、それぐらいのレベルです。

 そして、実験では参加者を以下のように2つに分類しました。

  • 2週間ごとに1日だけ50,000IUのビタミンDを飲む
  • 2週間ごとに1日だけプラシーボ薬を飲む


実験期間は8週間で、終了後に参加者の眠りがどのように変わったかを「ピッツバーグ睡眠質問票」などで調べたところ、ビタミンDを飲んだグループは、以下の通りになりました。

  • ピッツバーグ睡眠質問票のスコアが2.7ポイントアップ(プラシーボは0.7)
  • 睡眠時間が平均6.5時間(プラシーボは5.2時間)
  • 眠りに落ちるまでの時間が33分(プラシーボは59分)

 なぜビタミンDで睡眠の質が上がるのかといえば、一説には炎症が関係している可能性があり、もともと睡眠の質が悪い人は体内の炎症レベルも高いと言われており、この問題をビタミンDが解決してくれている可能性があります。

ビタミンDの摂取でメンタルが32%も改善する

これはカーシャーン大学の実験で、中程度のうつ病に苦しむ18歳〜65歳の男女40名を対象にしたもので、全員を半分に分けました。

  • 1週間で50,000IUのビタミンDを8週間飲む
  • なにも飲まない

 1週間で50000IUというと、1日に7000IUちょっとぐらいで、ビタミンDの最適レベルは1日に約3000IU〜4000IUぐらいと言われていますので、少し多めです。

 その後、全員に以下のような様々なテストを行いました。

  • うつ病レベル
  • インスリン抵抗性(糖尿病のリスクがわかる)
  • 体の抗酸化能力(活性酸素を処理する機能。これが高いほど老けにくい)
  • グルタチオンレベル(強い抗酸化作用を持つ成分。血中濃度が高いほどアンチエイジング力も高いと考えられる)

 すると結果は全体的にビタミンDグループの成績が良くて、以下の様になりました。

  • うつ病レベルが32%減少
  • インスリン抵抗性も28%改善
  • 抗酸化能力とグルタチオンも24%アップ

 なぜこのような現象が起きるかは分かりませんが、ビタミンDにはドーパミンやノルエピネフリンといった活力系のホルモンの効きを良くする作用があるので、そのおかげじゃないかと考える事もできます。

 ほかにも、酸化ダメージもうつ病の大きな原因のひとつで、グルタチオンの量が増えると自然とメンタルも落ち着いていく可能性があります。

 しかし実験と同じレベルを飲むのはやり過ぎだと思いますので、1日に1000IU〜3000IUぐらいに抑えて補給してたいところです。

人間の体は陽の光がないと上手く働かない

 1日に必要なビタミンDの80%は太陽の光によって作られてまして、ビタミンDが不足すると以下のような病気に悩まされる可能性があります

  • ガンの発症率が上がる
  • 高血圧になる
  • 心疾患の死亡率が上がる
  • 脳の機能がおとろえる
  • 肥満になる
  • 骨がもろくなる
  • アルツハイマーのリスクが上がる
  • うつ病や不安症にかかりやすくなる
  • アレルギーのリスクが上がる

 特に最近はビタミンDの大事さが見直されつつありまして、科学界でも「日焼けの危険性を誇張しすぎなんじゃない?」って風潮もできつつある感じ。

 また、現代人は以下のようなライフスタイルのせいで日光の量が不足しがちです。

  • 仕事は屋内がメイン
  • 通勤は車か電車
  • 帰宅後は自宅でテレビかネット

 いかに週末にアウトドアへ出かけてもビタミンDが足りなくなることがわかっております。

ビタミンDの研究に関する権威のマイケル・ホリック博士によると、「適度な日光浴(肌が赤らむほどではなく、健康的な小麦色に焼けるぐらい)のレベルで、皮膚ガンの発症率が高まることを示した科学的なデータは存在しない。皮膚ガンにつながるのは、あくまで過度な日光を浴びたときだけだ。」とのことです。

 肌が赤くなって痛むレベルの日焼けでなければ、とくに皮膚ガンリスクは上がらないわけですね。

 というか、ビタミンDが足りないせいで皮膚ガンが起きたり、肌が劣化してしまうリスクもありまして、美容のために日光を避けたせいで、逆に肌にシワが増えたなんて事態にもなりかねないのが難しいところです。

窓のない環境で働くのはやめた方が良い

 研究チームは日勤のオフィスワーカー49名に協力を頼み、健康レベルのや睡眠の質などを測定し、参加者のうち27名が窓のない職場に勤め、22名は窓のある職場だったそうです。

 さらに、窓のない職場で働く10名と窓のある職場で働く11名については、光の照射レベル、日中の活動量、睡眠量などを専門のガジェットで測定し、全員にどのような違いがあるのかを確認しました。

 その結果は以下の通りです。

  • 窓のないオフィスの参加者と比べて、職場に窓がある参加者は、働いている時間に白色光を浴びる量が173%も多く、一晩の睡眠時間が平均46分長い傾向があった
  • 窓のないオフィスでは、身体のトラブルや活力のスコアが窓のある職場よりも低かった。全体的な睡眠の質、睡眠効率、睡眠障害、日中の機能障害なども、悪い結果が確認された

 これについて研究チームは「オフィス環境の設計は、自然な日光の照射が従業員の健康に関わる事実を考慮すべきだ」と結論づけております。

 と言われても、現時点で日射量が少ないオフィスで働いてる方は対策が難しいとこですけど、とりあえずの対策としては、簡単なものだと以下のようなものが該当します。

  • 定期的に外に出て太陽光を浴びる
  • 最低でも10000ルクスの明るさを持つ光療法ライトを使って、体内時計をどうにかして刺激する

参考文献

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・https://www.psychiatry.org/File%20Library/Psychiatrists/Meetings/Annual-Meeting/2018/AM2018-Guide-Condensed.pdf

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