科学に基づく筋トレの全知識: 効果的な方法と実践ポイント

 筋力トレーニング、は単に筋肉を鍛えるだけでなく、全身の機能やパフォーマンスの向上、代謝の促進、身体的な美しさの追求にも貢献します。

 筋肉は私たちの身体の中で重要な役割を果たしており、基礎代謝の一部を担っています。

 また筋トレを行うことで筋肉の量や質を向上させることができ、体力やパフォーマンスの向上、さらには脂肪燃焼効果の増大にもつながります。

 さらに、筋トレは美しいボディラインや引き締まった身体を手に入れるための効果的な方法としても注目されています。

 適切なトレーニングプログラムを組み合わせることで、特定の筋群を重点的に鍛えることや全身のバランスを整えることが可能です。

 この記事では、筋トレのメリットやその効果的な方法について詳しく解説していきます。

目次

週に2回の筋トレで頭が良くなる

 まず最初に紹介するのは、55歳から86歳の男女100人を対象にした研究です。

 実験では、参加者を以下のように4つのグループに分けました。

  • 筋トレ+認知トレーニング(脳トレみたいなやつ)
  • 筋トレ+ニセ認知トレーニング(自然のビデオを見せたみたい)
  • 認知トレーニング+軽いエクササイズ(ストレッチとか)
  • 軽いエクササイズ+ニセ認知トレーニング

 実験で行われた筋トレのペースは週2回で、期間は約6カ月です。

 また最大パワー(1RM)の80%程度の負荷で、段階的に重さを増やしていく方法を採用したそうです。

 ちなみに、筋トレのやり方としては非常にベーシックな方法です。

 そして肝心な実験の結果は以下のようになりました。

  • 筋トレグループは認知テスト(ADAS-cog)の成績が激しくアップ!
  • 脳トレとストレッチでは認知機能はアップしなかった
  • 筋トレの脳力アップ効果は、筋トレを止めてから12カ月も続いた

 つまり筋トレで頭の回転が良く上に、その効果には持続性も確認されました。

 この研究結果について調査を行った研究者は以下のように述べています。

力が強くなれば頭も良くなる。もっと筋トレをする人が増えれば、もっと健康な老人も増えるだろう。


 要約すると、この実験データから「頭に効く筋トレのポイント」を抜き出すと、以下のようになります。

  • 筋トレのペースは週2〜3回!とにかくサボらずに続けるのが重要である
  • つねに負荷は高めに設定し、筋肥大よりも筋力アップを目標にする

 単に筋肉をデカくするよりも、重い物を動かせるようになったほうが頭には良さそうですね。

筋トレがもたらす4つのメリット

1.筋トレは頭脳とメンタルに効く

 運動に関する研究では、有酸素運動がメンタルに効果ありというデータが多い一方で、近年は筋トレにも十分な効果が認められつつあります。

  •  糖尿病の患者さんに週2〜3回の筋トレをしてもらったら、6カ月で認知機能が大幅にアップし、日常的な気分も改善した(2014年,1)
  • 高齢者に週3の筋トレをしてもらったら、6カ月で脳の働きが改善した(2014年,2)
  • 1RMの70%ぐらいの軽い負荷で筋トレを行うと、不安症がガッツリと改善する(2014年,3)

 理由の特定は難しいですが、ストレス解消と炎症が減る効果の2つが大きく貢献していると推測できます。

 なぜならどちらも脳機能を改善する作用があり、自然とメンタルにも効くからです。

 

2.筋トレは脂肪肝を改善する

 いま日本で激増中なのが脂肪肝であり、肝臓がんや慢性疲労につながる症状で、日本だと健康診断を受ける成人の2~3割が非アルコール性の脂肪肝というデータもあります。

 それに対し、2015年の実験などの研究を参照すると、8週間の筋トレを行った参加者は脂肪の代謝が大幅に改善して、筋トレをすると体重が減らなくても肝臓の数値が良くなりました。(通常、脂肪肝を減らすには体重を減らす必要があります)

 また参加者が11人の小規模な実験ではありますが、 2011年の論文でも「筋トレで脂肪肝が改善した」という結果が出ております。

 筋トレが脂肪肝の改善に繋がる主な理由は、筋トレによって酸化ストレスとインスリン抵抗性が改善するのが大きいようです。

3.筋トレは慢性痛をやわらげる

 えんえんと続く体の痛みにも、近年では筋トレの効果が認められております。

 2015年のレビュー論文だと、線維筋痛症の患者さんに週2のペースで筋トレをしてもらったところ、15週間で大幅に痛みが減ったとか。

 これはコクラン共同計画でも同じ結論が出ていて、特に女性の痛みには効果が高い模様。

 筋トレは長期的に身体の炎症をやわらげる作用があるんで、結果的に痛みが減るんじゃないかと考えられております。

 全体的に実験の質が低いのが難点ではありますが、まだまだ痛みの治療は難しいんで、とりあえず試してみて損はないのではないかと。

4.持久力を上げる

 いままでは「持久力を上げたいなら有酸素運動だ!」って風潮でしたが、ここんとこは筋トレでもOKってデータが増えてきまして。

 2014年のレビュー論文(9)などを読むと、筋トレでもランナーやスイマー、サイクリストの持久力やパフォーマンスは高められるらしい。持久力が大事なスポーツをやってる方でも、ぜひ筋トレをどうぞ。

筋トレは不安症に効く

 運動はメンタルにいい!ってエビデンスは山ほどありまして、落ち込んだときは軽く体を動かすのが一番なんですが、ここで問題なのが「筋トレはどうなの?」ってとこです。

 というのも、これまでの研究はランニングやジョギングの効果を調べたものがメインで、筋トレがメンタルに効くかどうかは明確に言えませんでした。

 そこで紹介するのがリムリック大学の研究で、過去に行われた筋トレ実験から、質が高い16件のデータを抜き出したメタ分析で、サンプル数は922人ですが個々の実験の質が高いため、データとしての信頼度はかなり高いと考えて問題ないと思います。

 その内容は参加者の平均年齢は43才で、実験の期間は11週間ぐらいが多めで(全体の幅は2〜16週間)、メンタルの測定には「状態特性不安尺度」というテストが使われております。

 さて、それでどんな結果が出たかといいますと、

  • 筋トレには小から中程度の不安改善の効果がある!
  • 筋トレの不安解消効果は有酸素運動と同じぐらい!

 「小から中程度の効果」ってのは、認知行動療法よりは劣るかもですが、有酸素運動と同じぐらい不安をやわらげるんだから十分に使えるレベル。不安対策を目当てに筋トレやるのもありじゃないでしょうか。

  • 筋トレの不安解消効果は性別や年齢を問わない

 さらに、メタ回帰分析で細かいところを見てみると、って結果も出ております。

  • 筋トレのメンタル改善効果は体が健康的な人ほど大きい
  • 性別や年齢に関係なく、筋トレには不安をやわらげる効果がある
  • 筋トレの期間、1週間の回数、負荷の強さなどは、不安対策の効果をあまり左右しない……かも

 そんなに長期間の筋トレや高負荷トレーニングをしなくとも、わりと簡単に不安の低減効果は得られるっぽい。

 ただ、注意点を申し上げておきますと、以下のような部分が気になります。

  • 全体的に筋トレの期間と負荷を報告してないケースが多いので、今後の調査によっては、「最適な筋トレ量や負荷」については結論が変わる可能性はある
  • このメタ分析の参加者には「不安障害」の人がいないので、正式に病名がついた人に筋トレが効くかはわからない(このデータは日常的に不安になりやすいタイプの人を対象にしている)。

筋トレ前のストレッチは本当に必要なのか?問題

 いきなりですが、昔から「ストレッチは実際どこまで必要なのか?」という問題がありました。

 また意外かもしれませんが、実は「運動前には必ずストレッチをしたほうが良い」というアドバイスは、そこまでまだ確立した話ではありません。

 過去のデータでも「ストレッチのせいでパワーが減るのではないか?」や「ストレッチの直後は筋トレの回数が落ちるのではないか?」という見解もあり、旗色が悪い感じです。

 カンピーナス州立大学の研究では、「筋トレ前のストレッチは必要なのか?」という問題について調べています。

 今回の研究では、20代の男性9人を対象に「筋トレにストレッチは有りか無しか」を調べています。

 一応言っておくと、実験を行うに当たってはサンプル不足なため、参加者には「片足だけの筋トレ」を指示して左右の足でどんな違いが出るかもチェックしてもらいました。

 これは、少ないサンプルで複数のやり方を繰り返し試すことで検定力を上げています。

 そして肝心のトレーニングプログラムは以下の2パターンに分類しました。

  • いきなりの筋トレのグループ
  • ストレッチ後の筋トレのグループ

 片足のニーエクステンションを1RM80%ぐらいの負荷で4セット、週に2回ずつ行ってもらいました。

 もちろん筋トレの負荷はそろえた状態で、ストレッチのあるなしで成果に違いが出るかを検証してます

 実験の期間は10週間で、実験の終了後に筋肉(外側広筋)や筋力の増え方、トレーニングの変化などをチェックしたところ、以下のように結果になりました。

ストレッチをすると筋トレのボリュームが減る

 筋トレ前にストレッチをした場合、参加者のトレーニングボリューム(セット数 × 回数 × 負荷)は全体的に明確に低下してました。

  • いきなり筋トレのグループ:1日の回数=36.9 ± 8.1回 1日のトレーニングボリューム(kg)=894.8 ± 168
  • ストレッチ+筋トレのグループ:1日の回数=30.3 ± 6.1回 1日のトレーニングボリューム(kg)=707.4 ± 129

 約15%〜20%ぐらいボリュームが減っています。

 筋トレではボリュームが多いほうが筋肉は増えいますので、ストレッチの効果については不利な状況に追い込まれています。

ストレッチは筋力の発達をジャマしない

 続いて筋力アップについてですが、こちらは特に目立った差はありませんでした。

 ニーエクステンションの1RMに関しては、特にストレッチを「しても・しなくても」変わらなかったそうです。

 より具体的な数値に言及すると、以下のような値で筋力がついておりました。

  • いきなり筋トレ:12.7 ± 7.4%
  • ストレッチ+筋トレ:12.9 ± 8.1%

ストレッチは筋肉を増えにくくする

 最後に筋肉量ですが、こちらは以下のような明確な違いが出てました。

  • いきなり筋トレ:12.7 ± 7.2%
  • ストレッチ+筋トレ:7.4 ± 3.7%

 数値をみるとストレッチせずに筋トレをしたほうが、筋肉が増えています。

 これは「ストレッチなし」のほうが全体的なボリュームが大きいため、当然の結果かもしれませんが。

 そんなわけで、「筋肉の増強」が目的の人にはストレッチは不向きなようです。

 一方で筋力アップにはボリュームよりも1回の負荷のほうが大切なので、さほどの違いは出ないみたい。

 もちろん、これはかなり小規模な実験なんで確実な因果関係までは分かりませんが、過去のデータなんかも見てると、それなりに信憑性はありそうです。

年をとっても筋肉を鍛える5つのポイント

 科学的に言えば、年を取ってもカラダの反応は同じなので、従来と同じトレーニング法でもかまわないわけです。

 とはいえ、40代以降になると「筋肉がつかなくなった」との感想が出るのも現役の筋トレーナたちの間では事実でしょう。

 またその原因として主に以下のような点が挙げられます。

  • 環境の変化:仕事や余暇のせいで、どうしても若いころよりはトレーニングのボリュームが減りがち
  • ケガの増加:関節や筋肉の結合組織がおとろえてケガをしやすくなり、結果としてトレーニング量が減る

 忙しいときなどは、1日に負荷の高いメニューを詰め込みすぎて、逆に全体のトレーニング量が減ってしまうケースもよく見かけます。

 というわけで、40代を過ぎてからの筋トレは「がんばりすぎない」と「ケガをしない」の2つが大事となります。

1.筋トレは軽い負荷でも問題ない

 筋肉量を増やすには少しずつ筋トレの負荷をあげていくのは常識と思いますが、高重量のバーベルばっかり使っていれば、やがてヒザやヒジにダメージが溜まりやすく、また関節をケガしてしまった場合には治りにくいため、注意が必要です。

 この解決策はシンプルで、いつもより負荷を落として、そのぶん回数を増やして筋肉を追い込むだけ。

 そもそも、「負荷は重いほうが良い」とされたのは昔の話で、「負荷が軽くても回数をこなせば筋肉はつく」というデータが豊富に出ています。

 一例として2012年の実験では、低負荷と高負荷のグループを比べましたが、筋肉の成長はほとんど同じだったようです。

  • 低負荷グループ:30〜40回を3セット
  • 高負荷グループ:10〜12回を3セット

 もちろん、低負荷でも限界まで筋肉を疲れさせる必要はありますが、関節への負担を考えて、年を取ったら負荷を下げていくというのも選択肢の一つにはなりますね。

2.筋トレは追い込み過ぎない

 筋トレにおいて「筋肉は徹底的に追い込む」と言われますが、実際はつねに限界を超えねばならないわけじゃありません。

 毎回、体が動かなくなるまで追い込んでしまうと、オーバートレーニングに入っていく可能性も高まります。

 オーバートレーニングになるかどうかは個人差が大きいですが、目安としては睡眠に影響が出てきたら疑ったほうがよいでしょう。

 深夜になっても目が冴えてたり、朝に目が覚めた直後から心拍数があがっていたら、すぐにトレーニング量を減らして様子をみたほうが無難です。

3.筋トレは軽い痛みが出ても休まない

 年を取るほど柔軟性が減ってるせいで腱や筋を痛めがちですが、ここでトレーニングを休むのは逆効果になる可能性があります。

 参考として1998年に行われた実験では15名の中高年に対し「腱に痛みを感じても筋トレをしてください」と指示しました。

 この実験の対象となった参加者は、多くがアキレス腱に問題をかかえており、18カ月も痛みに苦しんでいたそうです。

 しかし実験が始まると、1日に15回×3セットの筋トレを12週間ほど続けたところ、アキレス腱の痛みは減少し、筋トレをしなかったグループにくらべて、あきらかに治りが早かったそうです。

 このほかにも、筋トレを続けたほうが「テニスひじ」の治りが良いという調査結果やステロイド注射より筋トレのほうが効果が高いという調査結果もあり、軽い痛みが出たときはトレーニングを続けるのが良い可能性があります。

 もちろん、あまりに激しい痛みのときは控えるべきですが、トレーニングは続けたほうが良さそうです。

4.筋トレはデロード期間を作る

 良いトレーニングには良い休憩が必須です。

 特に40歳を超えてからの筋トレは無理をしないのが原則であるため、定期的にデロード期間を作るべきですね。

 まず「デロード」は、1週間だけ軽い負荷のトレーニングだけを行うことで、定期的に軽い週を作って、筋疲労を完全に回復させるのが目的です。

5.筋トレはウォームアップに時間を割く

 20代では、高負荷のエクササイズをウォームアップ無しで行っても問題がないこともありますが、年を取るほど関節や腱にダメージが出る可能性が大きくなります。

 そこでウォームアップをきちんと行えば、ケガが減りつつもエクササイズの効率もあがります(体温が高くなったほうが筋肉は働きやすいので)。

 またウォームアップの方法は、エアロバイクやトレッドミル等で軽く走る程度でも問題ありません。

筋トレは週に2回でも十分

 唐突かもしれませんが、「筋トレは週2で十分である」という研究は沢山あります。

たとえば、以下のような研究が代表的です。

  • 1998年の研究で、17人の参加者に週2の筋トレと週3の筋トレを実践してもらったところ、筋肉の増加量はほぼ変わらず、筋力に関しては週2グループのほうが増加した
  • 1999年の研究で24人の男女に週2の筋トレと週3の筋トレを実践してもらったところ、週2グループは週3グループにくらべて等尺性収縮力が80%アップした。ちなみに、等尺性収縮力は、関節を曲げたり伸ばしたりしない状態で発揮する筋力のこと。たとえば、空気イスを長時間できる人は、足の等尺性収縮力が強い
  • 2007年の研究で29人の男女に週2の筋トレと週3の筋トレを実践してもらったところ、筋肉量と筋力の増加量はほぼ同じだった
  • 2012年の研究で60歳以上の高齢者を対象にした実験でも、週2の筋トレと週3の筋トレの効果はほぼ変わらなかった

 老若男女を問わず、週2の筋トレでも十分に効果があるって結果になっております。

 ポイントは「もう筋肉が動かない」というレベルまで自分を追い込むところで、回数はさほど問題じゃないみたい。

 確かにいったん筋トレを始めると、「毎日の筋トレが大切」という考え方になりがちですが、安心していただいて問題ないです。

 逆に、毎日のようにハードな筋トレをした場合には、ストレスホルモンのレベルが高止まりしていまうケースも考えられます。

 さらに有名アスリート兼スポーツ学者のダン・ジョン氏は以下のようなことも述べています。

週2のトレーニングには驚かされる。たったそれだけで、人生で大事なことを実践するために必要なエネルギーが得られ、関節へのダメージもない。

 「P90X」・「INSANITY」・「Body Beast」のような筋トレメニューは、エクササイズの習慣をつけてくれる点ではありがたいものの、ハードワークすぎて日常の活力が下がりがちなのと、トリッキーな動きが多くてケガをしがちなのが難点ではあります。

筋トレは3週間のインターバルがあっても平気

 ここで紹介する研究では、トレーニングの経験がない14名の被験者を集めて、以下のようなパターンに割り振りました。

  • 断続的にトレーニングする:6週間連続で週3ずつの筋トレ→3週間の休み期間をもうけるのサイクルを3回繰り返す
  • 継続的にトレーニングする:24週連続で週3ずつの筋トレをする

 両グループともベンチプレスを週3日ずつ行い、負荷は1RMの75%で10回を3セットずつ。

 トレーニングの負荷は3週間ごとに調整し、被験者が最後のセットで12レップス以上を実行できるようになったら重りを増やしたとのこと。

 そして24週間後に筋肉の大きさと筋力を測定したところ、以下のような結果が出ました。

  • 最終的な筋肉量と筋力はどっちも同じぐらいに落ち着いた

 もちろん、断続グループは休息時には筋肉が落ちたものの、トレーニングを再開したらすぐに筋肉の発達が増加して、最終的には継続グループに追いついちゃったんですな。

 あくまで「初心者」を対象にした実験であるため、何年も筋トレしてる人に「3週間トレーニングを休んでも問題ない」とは申しません。

筋トレの効率が最適化されるベストなエクササイズ量

 筋トレの効率を高めるベストなボリュームとは?

 「筋トレがいいのは当たり前だけど、ベストな回数やボリューム、負荷ってどれぐらいなの?」という疑問について、高齢者を対象に調べたものを紹介します。

 たとえば、基本的にはセット数をこなすほど筋肉が増える傾向はあるんですが、ボリュームが増えるごとに筋肉の増え幅は減っていきますんで、トレーニングの時間投資効果も下がっちゃいますからね。適切なレベルを知っておけば、ムダな時間を使わずに済むわけであります。

 で、今回の論文は、過去に行われた506件の筋トレ実験から、デザインがいい25件のデータをまとめたメタ分析。

 エビデンスのレベルが高く、参加者の平均年齢は65才ですが筋トレ初心者の若者にも十分に参考になる内容です。

筋トレのベストな回数、セット数、休憩時間

 この分析では、筋トレを1年ほど続けた場合の筋肉量や筋力の違いについてまとめており、結論は以下のようになっています。

  • 週のトレーニング回数は2〜3回がベスト
  • 1つのエクササイズごとに2〜3セットがベスト
  • 1セットごとの回数は7〜9回がベスト
  • トレーニングの負荷は1RMの51〜69%がベスト
  • 1回の重りを上げ下げするのに使う時間はトータル6秒がベスト
  • レップ間の休憩は2.5秒がベスト
  • セット間の休憩は120秒がベスト

 レップ間のベスト休憩タイムまで出てるのが凄いです。

 もちろん、トレーニングの種類によって最適な休憩時間は変わると思いますが、「難しいことは考えたくない」という人は、この基準を守っとくと楽だと思います。

もっとも、この結論にはただし書きもありまして、以下のようなことを述べています。

今回の分析でわかったのは、「1エクササイズごとのセット数」と「セットごとの回数」の違いは、筋力の発達においてほとんど影響がないということだ。(中略)6週間の短い筋トレにおいては、1回1セットでも1回複数セットでも違いはない。

筋トレの初期においては、筋トレのセット数は、筋力や筋肉量の増加に関する重要な指標ではないと思われる。

 セット数や回数を増やしたほうがいいのは間違いないけど、そんなに大きな影響もないので特に筋トレのスタート時は自由にしても良いのではないか?とは言えそうです。

 断言できないですが、筋トレビギナー=セットや回数にはこだわらず、とにかく最低でも週2ペースで続けるのが大事で、筋トレを1年ぐらい続けたら=セット数を増やしたほうがメリットが多いかもしれません。

 もちろんガチの筋トレーナーは別ですが、「筋トレを習慣にしたい」というレベルの方であれば、今回わかった「ベストボリューム」を守るのが効率的のように思います。

 また注意点としては、この分析ではホルモンの数値はノーチェックです。

 いくつかのデータでは、「1セットよりも複数セットをしたほうがテストステロンや成長ホルモンが出る」という結果もあります。

スタイルが良くなりたい女性にこそ筋トレを進める3つの理由

 ジムのパーソナルトレーニングとかでも、女性は有酸素運動を30分〜60分ぐらいやって、あとは体幹系の筋トレをちょこっとやってることが多いイメージ。あらためて、女性の筋トレに対する抵抗感は根強いのだなーとか思った次第です。

というわけで、ここでは「女性こそ筋トレをしたほうがいいよ!」って話をいくつか。

女性は筋トレでゴツくならない

 「筋トレでゴツくのはちょっと…」と感じてしまう女性の不安は根深いようで、ハリウッド女優のグウィネス・パルトロウも、筋トレでは1.5kg以上のダンベルを使わないそうです。

 しかしこれは明確な間違いでして、その理由としては以下のようなことが挙げられます。

  • 筋肉質な体になるにはカロリーオーバーの状態を続けねばならない
  • そもそもテストステロンの量が男女でまったく違う

 まずはカロリーの問題ですが、筋肉の発達パターンをざっくり分類すると、

  • いつもより食べて筋トレ→筋肉サイズが肥大
  • 普通に食べて筋トレ→筋肉のパワーと密度が増加

 つまり、1日の維持カロリー(現在の体重を保つのに必要なカロリー)だけ食べて筋トレをしてれば、ムキムキになるどころか、どんどん引き締まった体になっていくわけですね。

 続いてテストステロンですが、こいつは筋肉量のアップに欠かせないホルモンでして、男性は女性の10倍〜30倍ぐらいの量が分泌されるんですね。

 そのため、女性の場合はハードな筋トレをしてもムキムキになるのは、基本的に無理です。

 たまにゴリゴリな体をした女性ボディビルダーを見かけますけども、あれは遺伝子レベルで作りが違う超人か、ステロイドを打ちまくったものとお考えください。

 実際、ドーピングが許されない女子重量挙げ選手の見た目はさほどでもありません。

 100kgのウェイトを上げる筋力を持っていても、まったくガチムチ感はありませんし、むしろスリムな印象にも感じます。

女性が体脂肪を減らすには筋トレ

 体脂肪を減らす為の筋トレについては男女共通しており、ハードな有酸素運動よりも筋トレのほうが痩せやすいというデータはかなりあります。

 代表的な研究を挙げると女性の筋トレ効果を調べた実験では、1日に25分の筋トレを週2のペースで2か月ほど続けた場合、体脂肪が2kg減りつつ筋肉は1kg増加したと報告されています。

 筋肉が1kg増えるごとに1日に70kcal〜100kcalほど消費カロリーが増えるので、自動的に年間で5kgぶんの脂肪が燃えることになります。

女性は筋肉が落ちやすい

 女性は男性にくらべて筋肉が落ちやすいのも難点です。

 10才年をとるごとに平均で2〜3kgの筋肉が落ちていきまして、そのせいで基礎代謝がだだ下がりになっていき、10年ごとにおよそ8kgほど体脂肪が増えやすくなることが知られております。

 ところが、上で紹介した実験にもあるとおり、筋トレを始めた女性は、筋肉が増えるスピードの倍の速度で体脂肪が減っていく傾向にあるのがうれしいところでしょう。

 男性ではここまで速く体脂肪は減らないので、女性の筋トレにおける大きなメリットかと思います。

 というわけで、見た目を気にする女性ほど筋トレをすべきという話でした。

ダイエット+筋トレでスタイルがよくなる?

 いきなり「筋トレをしよう」と言うよりも具体的に「どれだけのメリットがあるのか?」を数字でわかったほうがより継続しやすくなると思いますので、目安になりそうな研究を紹介します。

 ジョージワシントン大学の実験では、40人の過体重または肥満の女性を対象に年齢は平均32才、BMIが27〜36で体脂肪が30%以上の人と、普段ほとんど運動をしてない人を選びました。

 そして筋トレだけ、カロリー制限だけ、筋トレ+カロリー制限をくらべるにあたり、全体を下記の4グループに分けました。

  • カロリー制限オンリー:全員の維持カロリー(いまの体重を保つのに必要なカロリー)から、1日平均でマイナス502 kcalぐらいを削減
  • 筋トレオンリー:週に2〜3回の筋トレを行う
  • 筋トレ+カロリー制限:上の2つを組み合わせて行う
  • コントロール群:なんもしない

 実験期間は16週間で、どんな違いが出たかをチェックしております。

  実のところ似たような実験は多く行われてきましたが、この論文についてはさらに以下のポイントが含まれることで信頼度を高くしています。

  • 体脂肪を計るのにDXA法(もっとも信頼度が高い方法)を使っている
  • 安静時代謝を計るのに間接熱量測定を使っている(これも精度が高い)

 また参加者の食事は不明ながら、みんなタンパク質32%、脂肪27%、炭水化物41%の範囲でカロリーを摂取したと報告されています。

また、筋トレグループがどんなエクササイズをしたかというと、下記のようになっています。

  • メニュー1:スクワット、ルーマニアンデッドリフト、ベンチプレス、ラットプルダウン、ダンベルショルダープレス、ダンベルフライ、シーテッドロウ、ラテラルレイズ
  • メニュー2:デッドリフト、レッグカール、レッグエクステンション、ダンベルプレス、プルダウン、アーノルドプレス、ケーブルクロスオーバー、フェイスプル、ロウバックハイパーエクステンション
  • 以上のメニューを日替わりで各4セットずつ、1セット12回で行う。セット間の休憩は90秒で、各メニュー間の休憩は3分

 そしてどんな違いが出たかと言いますと、まず体重は以下のようになりました。

  • カロリー制限オンリー:2.8%減少
  • 筋トレオンリー:2.8%増加
  • 筋トレ+カロリー制限:3.4%減少

 意外にも筋トレ+カロリー制限がもっとも体重が減ってますね。

 ただし、当然ながら「かっこいい体」になるには体重よりも体組成のほうが大事であるため、続けて体脂肪と筋肉の変化をみてみます、

  • 筋肉の変化
    カロリー制限オンリー:0.2%増
    筋トレオンリー:4.9%増加
    筋トレ+カロリー制限:1.9%増加
  • 体脂肪の変化
    カロリー制限オンリー:6.9%減
    筋トレオンリー:変化なし
    筋トレ+カロリー制限:8%減少

 筋トレ+カロリー制限を組み合わせたグループは、体脂肪が2キロ減るごとに筋肉が1キロ増えたわけです。

 基本的には筋肉をつけつつ体脂肪を減らすのは難しいですが、過体重で筋トレ未経験って条件であれば、かなり筋トレ+カロリー制限で見た目が変わるわけです。

 というわけで、たんに体重を減らすだけじゃなくて「引き締まった見た目」 にしたい女性の方は、この実験を参考に以下のようなことを心がけてみても良いと思います。

  • 維持カロリーマイナス500kcal
  • 週3の全身筋トレ

スローな筋トレのほうが筋肉は発達するのか?

「スロートレーニングで筋肉が発達する」みたいな話があります。

 1回の動作で3〜10秒ぐらいかけてダンベルを上げ下げしたほうが筋肉が増えるといった話です。

 実際のところ、この説は正しいのかを調べた新たなデータが出てております。

 13人の若い男性を対象にしたテストで、って2パターンの筋トレの効果を比べてます。

  • 早いスクワット=1秒でしゃがんで、1秒で立ち上がる
  • 遅いスクワット=1秒でしゃがんで、3秒で立ち上がる

 トレーニングは週に2回ずつで、8週間後に太ももの最大筋力と筋肉量がどう変わったかをチェックしました。

 筋トレのテンポはメトロノームで計測して、1~4週目には8~10RMで3セット、5~8週目には4セットを行ったそうです。

 加えて各自の「筋トレ時の辛さ」を10点満点で評価してもらったところ、以下のような結果になりました。

  • 最終的な筋トレのボリュームは、どちらのグループにも違いがなかった
  • 筋トレの辛さについては、遅い筋トレのほうがわずかながら数値が高かった(7.98 vs 8.59)
  • 太ももの筋肉量は、早い筋トレ(+0.24cm、+3.6%)と遅い筋トレ(+0.20cm、+3.1%)のどちらも同じように増えていた。その他のエリアも、筋肉の増え方に差はなかった
  • 最大筋力の変化にも、グループ間の変化はなかった

 全体的に見れば「筋トレが早くても遅くても違いはなし」という印象を受けます。

 むしろ遅い筋トレのほうが主観的な辛さは増していて、その意味ではスロートレーニングの方がやや不利かもしれません。

 スローのほうが辛く感じる要因は不明ですが、著者たちは「遅い筋トレの方が作業時間が長いからではないか?」と推測をしています。

 もっとも、これで「スロートレーニングは無意味!」と決まったわけではなく、たとえば2016年の研究では、4秒の筋トレは1秒の筋トレよりも上腕二頭筋の筋肉量が増加したという報告が出ています。

 また別の実験でも、やはり「遅い筋トレの方が上腕二頭筋が増えた」ことを確認されており、筋トレのテンポは異なる繊維に影響を与える可能性も考えられます。

ちなみに、この問題については、現時点では2015年のメタ分析によって以下のような結論が出されています。

  • 筋トレのテンポを0.5~8秒のあいだで変えても、筋肉の増え方はほとんど変わらない
  • さらに、筋トレのテンポが1回10秒を超えると、短いテンポよりも筋肉が増えにくくなる

 ただし決定的なものではなくて、研究間でトレーニングの種類、研究期間、評価された筋肉などが大きく違っており、知見を導き出すのは難しいです。

 現状では、スロートレーニングに意味がある可能性も捨てきれないが、現時点ではそこまでこだわる意義は低いです。

 またスローな筋トレはケガの予防にはいいかもしれないけど、筋トレの辛さを増す可能性は高いと考察できる。

 さらにスロートレーニングをするにしても、10秒を超すようなスーパースロー筋トレはやめておいた方が良い。

速い筋トレと遅い筋トレ、筋肉の増加に関係ない

 筋トレの世界には、「ウェイトは2秒で上げて4秒で下ろす」という定番のアドバイスが存在しています。

 ゆっくり動いたほうが筋肉が発達するという説のことを指しており、ジムのマシンにも書いてあると思います。

 しかし、ここ数年は「できるだけ速く動いたほうが筋肉は増える」などの説も存在しているので、困ってしまうところではあります。

 では、実際はどっちが正しいのかを研究等を参照しながらみていきましょう。

筋トレのスピードを変えても統計的な差はでなかった

 最初に参考とするのは、1993年に行われた有名な実験で、参加者の年齢は19〜23才かつ全員が筋トレ初心者18人を以下の2グループにわけて、週3の筋トレをしてもらいました。

  • 速い筋トレ:できるだけ加速をつけてバーベルスクワット
  • 遅い筋トレ:できるだけ加速をつけないようにバーベルスクワット

 すると、7週間後の結果は以下のように微妙な違いあるものの、統計的には差がない数字です。

  • 筋肉量の変化:速い筋トレグループは24%増加、遅い筋トレグループは21%増加
  • 筋力の変化:速い筋トレグループは21%増加、遅い筋トレグループは23%増加

筋トレのスピードは効果に関係ないというデータはたくさんある

 もう1つは2005年にシドニー大学が行った実験で115人の筋トレ初心者たちを以下の2グループにわけて、週3の筋トレをしてもらいました。

  • 速い筋トレ:ウェイトを1秒で上げて1秒で下げるダンベルカール
  • 遅い筋トレ:ウェイトを3秒で上げて3秒で下げるダンベルカール

 その結果は以下のとおり。

 これは筋力の増加をあらわしたグラフで、3セットを行った場合は、どちらのグループも同じぐらい筋トレの効果が出ております。

 さらに似た研究はいろいろとありますが、いずれも筋トレのスピードは無関係との結論です。

  • 2008年の研究では36人の参加者に全身の筋トレをを13週間つづけてもらったが、筋トレのスピードを変えても筋肉量・筋力ともに差が出なかった
  • 2009年の研究では69〜76才の高齢者を対象にした実験では、全員の10週間の筋トレをしてもらったが、やはり筋トレのスピードは筋力に影響がなかった

スーパースロートレーニングは普通の筋トレより効果的なのか?

 まず「スーパースロートレーニング」は、その名の通り超ゆっくりやる筋トレのこと。

 ウェイトを10秒かけて上げて5秒で下ろす作業を、だいたい5回〜6回ぐらいくり返して1セットになります。

 そのためトータルの筋トレ時間は短くなりますが、実際にやるのはかなりキツいです。

 感覚的な辛さは普通のトレーニングの3倍ぐらいかも。

筋力は伝統的な筋トレのほうがつきやすそう

 では、実際にスーパースロートレーニングには効果があるのかを考えてみましょう。

 まず参考にするのは2001年にジョージワシントン大学が行った実験では14人の女性を半分にわけて、以下の筋トレを10週間ほど続けてもらいました。

  • 伝統的な筋トレ:1回の筋トレを6秒で行う。1セットは8〜12回。
  • スーパースロートレーニング:1回の筋トレを15秒で行う。1セットは8〜12回。ウェイトは伝統的な筋トレより軽くする。

その後、全員の最大筋力をチェックしたところ、といった結果だったらしい。

  • 伝統的な筋トレグループは、全体的な筋力がスーパースロートレーニンググループよりもあがっていた。
  • 筋肉量と体脂肪率の変化には、両グループの差はなかった。

 具体的な筋力の変化を抜粋しますと、以下のようになります。

  • 伝統的な筋トレ:ベンチプレス+ 34%、レッグプレス+ 33%、レッグエクステンション+ 56%
  • スーパースロートレーニング:ベンチプレス+ 11%、レッグプレス+ 7%、レッグエクステンション+ 24%

 筋力に関しては伝統的な筋トレの圧勝という印象です。

筋肉量や消費カロリーも伝統的な筋トレのほうが優秀かも

 また、2012年にもニューイングランド大学が似たような実験を行ってまして、こちらは伝統的な筋トレのほうがスーパースロートレーニングより筋力も筋肉量も増えたとの結果。

 細かな差はあれど、いずれも伝統的な筋トレのほうが有利って結論になっております。

 ちなみに、消費カロリーに関しても伝統的な筋トレのほうが優秀で、2003年の実験からは以下のような結果が出ています。

  • 伝統的な筋トレは15分で172calを消費
  • スーパースロートレーニングは15分で116calを消費
  • トレーニング翌日の代謝は、スーパースロートレーニングのほうが低かった

 いまのところスーパースロートレーニングのほうが優秀だと言えるデータはないと言えます。

 確かにゆっくりやる筋トレは安全性が高いので初心者には向いているかもしれませんが、基本的には好きな速度でやっても大きな差は無いでしょう。

筋トレ+有酸素運動は筋肉に悪影響?

 筋トレの世界には「有酸素運動と筋トレの同時トレーニングどうなのか?」という議論があります。

 要点を述べると「1回のエクササイズで筋トレと有酸素運動をやったほうがいいのでは?」という考え方のことを指しており、1日に「筋トレだけ」・「ジョギングだけ」をやるよりメリットが大きいのではないかと言われています。

 事実、筋トレの後に有酸素運動をしたら体内の炎症が低下したというデータは存在しており、体のダメージを回復させる効果が期待されています。

 ところが、一方で「筋トレの後に有酸素運動をすると筋肉が増えなくなる可能性がある」というデータが存在しているところが混乱を招いてしまっています。

 どうやら、有酸素運動のせいで筋肉がオーバーワークになりやすいそうなんです。

 そこで、今回は同時トレーニングに関する精度が高いメタ分析で結論を出している論文を紹介します。

 これはシドニー大学の研究で、「筋トレと有酸素運動を組み合わせたら、本当に筋肉の成長や筋力アップによくないのか?」という問題に取り組むため、14件のデータをまとめて、「筋トレ+HIIT」の違いをチェックしています。

 HIITだけに絞っている理由は、調査対象の過去のデータの多くが「普通のランニング+筋トレ」の効果だけを見たものが多いからです。

 そこで長時間のランニングにくらべてHIITは短時間ですむので、より筋肉への悪影響が少ないのではないか?と推測したようです。

 実際に調査を行ったところ以下のような結果が出ました。

  • 筋トレ+HIITは、下半身の筋力の発達を有意に下げる。上半身の筋力には悪影響がない。全身の筋肉量にも悪影響はない

 HIIT+筋トレは大筋では悪影響がないものの、下半身の筋力には良くないようです。

 もっとも効果量は–0.248なので、あまり気にするほどではない可能性が高いです。

 今回のデータと従来の研究を組み合わせて考えると、以下のような考察ができます。

  • もし筋力アップが目的なら筋トレ+有酸素運動はひかえたほうが良さげ(運動の負荷に関係なく)
  • もし筋肉量アップが目的なら筋トレ+有酸素運動は問題なさげ。その場合は、普通のランニングよりもHIITのほうがメリットは大きそう(休憩を取るのが前提)

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