カリスマ性を後天的に磨く科学的テクニック:魅力を引き出す方法

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 カリスマ的なリーダーシップは、生まれつき持っているものだと思われがちですが、実は後天的に磨くこともできます。

 科学的には、カリスマ的な人物は、自分自身や周りの人々を魅了する力を持つとされています。

 そして、そのような魅力的な人物となるためには、ある特定のテクニックやスキルを身につけることが必要不可欠です。

 本記事では、科学が明かす後天的にカリスマ性を鍛えるテクニックについて、紹介していきます。

「カリスマ」は生まれつきではない? 

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 皆さんはカリスマと言われて誰を思い出すでしょうか?

 例えば、Appleを創設したスティーブ・ジョブズなどは定番でしょう。人によっては歌手や小説家、俳優や最近ならYouTuber等を例に挙げる人も居るかと思います。

 しかし、そんな高いカリスマ性を持つ人間は我々一般人から遠い存在だと感じている人も非常に多いでしょう。

 ところが、近年の研究を通して「カリスマ性」は必ずしも生まれついた能力ではない事とが分かってきました。

 例えば2018年にカナダのトロント大学(1)が1000人の男女を集め、カリスマ性のある人間について調べました。

 その結果、周囲から「カリスマ性」が高いと評価されやすい人の特徴として6つの特徴が出ています。

・他人の気分を良くする

・他人に時々笑いかける

・どんな人とも上手くやれる

・部屋の中で存在感がある

・他人に影響を与える

・民衆を導く手段を知っている

 以上が、カリスマ性が高い人の特徴となります。

 さらに研究では、「他人を安心させる」・「リーダーシップがある」という2つの特徴を備えている人に、周囲はカリスマ性をやすい事も分かりました。

 他には「カリスマ」と「IQ」の関係性は無い事が判明しました。

 これは、仮に有名大学を卒業するような人だとしても、周りの人間を引き付けるカリスマ的な存在になれるわけではないという事を明らかにした事になります。

 生まれつき、遺伝子である程度決まっているIQはどうにもならないですが、後天的に身に着けられるカリスマ性は今からでも十分に鍛えることが出来そうですね。

カリスマだけが持つ能力

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 2016年にスタンフォード大学のエマ・セパーラ博士(2)は、カリスマ性に関する過去の研究についてレビューを行い、「カリスマ性は後からでも伸ばせる」と結論出しました。

 その際に、次の6つの部分を意識できれば、カリスマ性は上がると言われています

  1. 共感力:相手の気持ちに寄り添える能力
  2. 傾聴:相手の話を上手く聴く能力
  3. アイコンタクト:相手と自分の考えを繋げる能力
  4. 情熱:相手の考えや行動を褒め、気分を向上させる能力
  5. 自信:他人の意見や考えに動じない能力
  6. 言語化:自分の考えを言葉に表現できる能力

 博士はこの能力は全て後天的にトレーニングや日々の会話の中で意識する事が出来るものだとしています。

 カリスマに必要な能力として、相手に意見に寄り添う傾聴や共感力を挙げていますが、同時に他人の意見に流されない自信もカリスマ性を高めるには必要なのは不思議ですね。

カリスマ性を鍛える

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 もしより一層、カリスマ性を上げたいならクレアモント・マッケナ大学のトレーニング(3)などもありますが、ここで紹介すると長くなるので今すぐ出来る、簡単なテクニックを2つピックアップしたいと思います。

・「アクティビティ・リスニング」

 相手の言葉から重要な感情単語を抜き出して相手に返す方法です。

 例えば2012年にハーバード大学が行った実験(4)で「自分のことを話す」と言うのは「お金を貰った時」と同じくらいの興奮を脳は感じていると述べています。

 しかし、ただ相手の話をうんうんと頷くだけでは意味が無く、聴いた言葉から感情的な部分「疲れた」や「眠い」などの話を聴きながらその単語を抜き出し、「疲れ気味なんだ。昨日は何かあったの?」みたいな質問に変化させると、話し手に上手く刺さる言葉になります。

・「相手の心に刺さる話題選び」

 まずカリスマ性が高い人に対する勘違いとして、聞き手側が初めて耳にするような新鮮な話題を口にするイメージを持っている人が多いです。

 ハーバード大学の研究によれば、周囲から「カリスマ性が高い」と思われる人は、「相手もよく知っている話題」を選ぶことが分かっています。

 もし本当に相手も知らないよな話をする時は、必ず誰にでも分かるような話で興味を持たせて、本題を切り出すパターンが多いです。

 加えて、オーストラリアのクイーンズランド大学の研究から、相手から何かを質問された時には、なるべく即答するように意識すると、よりカリスマ性が増すと言う結果になりました。

 その他、ゆっくり話したり、会話の途中にあえて「少しの間」を入れる事で説得力がより高まるという事も分かっています。

本物のカリスマが使うテクニックとは?

 最後に紹介するのはローザンヌ大学のジョン・ アントナキス先生などによる論文で、カリスマ性は後天的に鍛えられるとそして、幾つかのポイントにまとめています。

 まず論文では「カリスマ性」を以下のように定義しています。

  • 大勢の人を魅了し、やる気を起こさせ、明確で先見の明があり、インスピレーションを与えるメッセージを伝える能力がある人間

その上で、実際にカリスマを鍛えるための重要なポイントを見ていきましょう。

カリスマポイント1 比喩を使いこなす

 カリスマがある人は、基本的に理解しやすいメッセージを伝えねばならないので、比喩を使うのがうまい人が多いそうです。

 「競合他社を屈服させた」・「この会社は軌道を変えねばならない」というような、自分が言いたいことを何かになぞらえるとメッセージが伝わりやすく、さらにはこちらの「賢さ」アピールにもつながり、カリスマ性が上がったように思われるそうです。

カリスマポイント2 ストーリーを使いこなす

 ストーリーや逸話は、メッセージをより魅力的にし、聞き手が話者とつながるのに役立つそうです。

 特に、誰かにスピーチをする際は、個人的なストーリーを語ったほうが相手の記憶に残りやすい。

 たとえば、プロジェクトを行う際に出会ったトラブルや、ユーザーからもらった感動的な体験を頻繁に語るので、アメリカの自己啓発書でよく使われる手法ですね

カリスマポイント3 道徳的な信念を示す

 「これは社会の役に立つことである」みたいに、自分たちがやってることの道徳性を主張するやり方で、人間はみんな道徳的だと思われたい生き物なので、道徳的なことを言わない人にはついていきたくない生き物なのです

 (個人的には漫画やアニメでカリスマ性のある悪役が「大儀のために」みたいな感じで、自分の主張を民衆に伝えるイメージが強いです)

カリスマポイント4 集団的感情を強調する

 「私たちはもっと強くなるのだ」とか「皆さんの気持ちはよくわかります」みたいいに、グループ全体について語りかけていく話法のこと。

 「私は自分のことではなく、相手の幸福を考えていますよ」という事実が相手に伝わるので、こちらへの信頼感が生まれるとのこと。

カリスマポイント5 自分とフォロワーに高い期待値を設定する

 「いま私たちは未曾有の危機に遭遇している。ゆえに死ぬほどがんばらねば」みたいに、高い基準を設けたうえで、相手の士気を鼓舞していくやり方です。

 あえて高すぎるハードルを設定することで、自分のモチベーションをアピールすることができ、これがカリスマ性につながるとのこと。

 確かに、これを実行しているYouTubeやSNSのインフルエンサーは多い気がしますね。

カリスマポイント6 修辞的な質問を使う

 「この話を私が語るべき理由は言うまでもないよね?」とか「差別に賛成する人などいるだろうか?」とか、相手からの答えを要求しない質問を使うやり方です。

 「差別に賛成する人などいるの?」と言われれば、誰でも反射的に「そんなことはない」と思い、これが説得力の増加につながるとのこと。

これもネットでよくインフルエンサーがやってますね。

終わりに

 まぁカリスマ性が後天的に鍛えられると言うのは、なかなかの衝撃ですが、どうにもならないIQに比べて、こちらは希望が持てそうですね。

参考文献

・(1)Tskhay, Konstantin O et al. (2018) Charisma in everyday life: Conceptualization and validation of the General Charisma Inventory.

・(2)Emma Seppälä (2016) The Happiness Track:How to Apply the Science of Happiness to Accelerate Your Success

・(3)Nodarse, B. C. (2009) A nonverbal approach to charismatic leadership training.

・(4)NATASHA D. TIDWELL (2012) Perceived, not actual,similarity predicte initial attraction in a live romantic context: Evidence from the speed dating paradigm

・(5)William von Hippel, R. (2015). Quick Thinkers Are Smooth Talkers: Mental Speed Facilitates Charisma – William von Hippel, Richard Ronay, Ernest Baker, Kathleen Kjelsaas, Sean C. Murphy, 2016. Retrieved October 13, 2020, from https://journals.sagepub.com/doi/full/10.1177/0956797615616255

・Diana I. Tamir et al. (2012) Disclosing information about the self is intrinsically rewarding.

・John Antonakis, Marika Fenley, and Sue Liechti, 2011: Can Charisma Be Taught? Tests of Two Interventions. AMLE, 10, 374–396, https://doi.org/10.5465/amle.2010.0012

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