経営者成功の秘訣:心理学を駆使した戦略と実践

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 昨今、海外でも日本でも起業をする人が増えたような気がします。もちろん、特定の企業に所属して、のし上がってから経営者になる人もいるでしょう。

 その「企業・起業」形態は、YouTubeなどの新しいプラットフォームの台頭により大きく変わりました。

 小さな会社が有名企業を追い越すなんてのも、漫画やアニメの世界だけの話ではないのです。

 しかしその反面、生まれては消え、また生まれては消えて行く。今は10年後に存在しない、そんな企業が後を絶たないのも現状なのでしょう。

 つまり参入障壁が下がっただけで、成功する企業が増えたと言うワケでは無いのです。

 私が今回紹介するのは、起業家や経営者の皆さんは知っておいて損はない経営関する心理的な影響を当たえる力について話をしていきたいと思います。

単純・簡潔な名前で株価すら変動

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 会社の社名は非常に重要です。

 起業する際には、色々頭を悩ませるものでしょう。

 そうでなくとも、日々の生活に置いて名を付ける機会は意外と多いです。

 では、そんな名付けによって企業の業績に関係なく、ある程度の影響を周囲に与えるとしたら信じますか?

 社会科学者のアダム・オルターとダニエル・オッペンハイマーは、「人間は発音しやすい言葉や名前、つまりフルーエンシーの度合いが高い言葉に愛着を抱く」という説を唱えました。

 実際、二人は1990年から2004年に新規公開されたニューヨーク証券株式所の上場株式を調べました。(1)

 すると発音しやすい企業ほど、公開から1日後、1週間後、6カ月後、そして1年後で他の発音し辛い企業より3万3千円もの差が出ていることに気づきました。

 さらに拡大して考えれば、プロジェクトなどの名前も読んだり発音したりが容易なものにしておくと好感を持たれます。

 会話もそうですが、長ったらしい名前や小難しい言葉は、話した本人を賢く見せるどころか逆の効果が働いてしまうことが、最近の研究で分かっています。

 何かに名前を付ける時は、妙に凝った名前ではなくシンプルな方が良いでしょう。

 実際、有名な企業をいくつか頭の中で上げて見てください。

 呼びずらい名前の企業は、ただ一つとして無い筈です。

 「ホンダ、ニッシン、ユニクロ、GU、イオン、セブンイレブンetc…」

できるビジネスマンも注意している交渉で損する心理学とは?

従業員のやる気を高める方法

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 やはり会社というモノは、従業員が必ず存在すると思います。彼らが、やる気を出して活気づいていればそれだけ新しいアイディアが生まれる気がします。

 では、やる気が出ない従業員にやる気を出させるにはどうしたらいいでしょうか?

 厳しく叱ったり、優しく褒めたりするのが一般的でしょうが、実際には違います。

 ウォートンスクールのA・グラント教授は、ある実験を行いました。(2)

 ある大学のコールセンターで卒業生に電話を掛けて、大学への奨学金の寄付を呼び掛ける職員たちがいます。

 その職員たちを三つのグループに分けて

  1. 他の職員が書いた作文を読ませるグループ
  2. 集まった奨学金によって、恩恵を得た学生よる感謝の作文を読むグループ
  3. 何もしないグループ

 以上の三グループに分かれました。

 その結果、第一と第三のグループには何の変化も訪れませんでしたが、第二の寄付で集まった奨学金のお陰で、大学に通えた学生による感謝の作文を読んだグループは、一週間に取り付けた寄付件数や金額が二倍増えていたのです。

 どうして、このようは変化が訪れたのでしょうか?

 教授は、それまで意欲に欠けていた従業員は学生の感動的な作文を読むことで自分との繋がり、そして仕事の意義を見つけたからだと言っています。

 多くの企業では、「世のため人のため」とは言うものの、実際にどれくらい人々の生活に貢献しているか分からない事があります。

 もしかしたら、やる気がない社員は「俺がやっている事で助かっている人がいるのだろうか?」と考えているからかもしれません。

 気の利いた管理職や経営者なら、会社のお陰で助かった顧客に感謝の手紙を書いてもらい(直接会うのもいいですが)それを社員に見せることで意義を見出せる可能性が高いと言えます。

退屈な会議を変える

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 まぁ、退屈な会議については私が語らずとも、皆さんはよく知っているともいます。

 では、そんなつまらない会議を一変させるにはどうしたらいいでしょうか?

 J・ラートン・ジュニアたちが行った研究があります。(3)

 何人かの医師に具体的な症例二件をビデオで見せます。その後、小さいグループに分かれてビデを見ましたが、それぞれのグループにが見せた映像は少しずつ異なりました。

 一部の医師には、それぞれの症例に関して周りの人が知らない情報が与えられて、その結果として関連情報については一部の人だけが知っている状態になりました。

 二つの症例について自分のグループとは別の集団に紛れて話し合いをさせて病名の診断と治療法を決めさせました。

 適切な議論をするには、医師たち全員がそれぞれの持っている情報を教え合わないと成功しません。

 しかし、結果としては大変お粗末な意思決定と治療方法がなされました。

 この結果を踏まえて、最善の会議をするにはどうしたらいいのでしょうか?

 一点目

 「出席者に情報提供を呼びかけてから会議を始める」

 当たり前のようですが、実際の場面では殆ど実行されていません。

 もちろん、中には「人前で話すのが怖い」という人も居るでしょう。だから、皆の前で話す代わりに、事前に自分の考えをまとめた紙を順番に提出して行き、それらを最後に開封して紙に書いてある内容を吟味する、というやり方がいいでしょう。

 二点目

 「リーダーや管理職は最後に発言する」

 どうやら、多くのリーダーや管理職の人間は、自分の影響力を理解していないようです。

 折角、色々な人材が集まっても、リーダーが最初に意見を出してしまうと迎合したり反論も出来にくい。

 「お言葉ですが、社長のアイディアはクソですね!」なんて言った日には、転職を考えた方が良いでしょう。

 そうではなくて、従業員に色々なアイディアを出して欲しいなら、最後の結論を下す時にだけ意見を述べるにとどめる方が最適です。

 出しゃばりは、どこの世界でもめんどくさい存在です。

 三点目

 「チェックリストを使う」

 飛行機のパイロットが離陸前にチェックリストを入念に確認すると同じように、会議の主催者が、会議前のチェックリストに必要項目「全員出席しているか?」「専門知識を持っているか?」などなどを確認しておくと良いでしょう。

 不必要な出席者は会議を遅延させるだけなので、スティーブ・ジョブズの様に必要のない人は、ドンドン会議室から追い出すようにすべきです。(と言うか、最初から呼ばない)

 四点目

 「内容に応じてテーブルと椅子の配置を変える」

 マーケティング研究者のJ・チューとJ・J・アーゴによる最近の研究があります。

 例えば、席の位置を丸くすると、参加者の帰属意識が強まります。その為、誰か一人ではなくグループ全体の利益を強調した提案に納得する可能性が高くなります。

 逆にL型や四角い配置にすると、参加者個々の個人志向を強める傾向があります。

 会議の目的が協力や協調を作りたいなら丸く机を配置し、個人の業務に対する責任に従業員の意識を向けるなら、L形や四角くの配置を心がけましょう。

生産を向上させる賢い親切とは

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 親切は人々の関係に良い結果をもたらすのは言うまでもありません。

 しかし、そんな親切もより上手に活用することで従業員の生産性を向上させることが可能なのはご存じでしょうか?

 組織心理学者のF・フリンが大手電気通信会社で実施した研究があります。(4)

 従業員の親切から生じる結果を調査しました。すると注目すべき二点が見つかります。

 一点目は、他の従業員に親切な行為をした人間は、周りからも感謝され高い評価と貴重な人材であると見なされました。

 二点目では、助けた本人の生産性はどれくらい向上したのかを調べました。すると以外にも、他の従業員よりずっと生産性が低かったのです。

 この原因としては、他の人を手伝い過ぎて自分の仕事をおざなりにしてしまった事だと判断できます。

 フロンの研究から私達はどう行動すればいいでしょうか?

 それは親切を行った回数ではなく、親切の交換を積極的に行うのがベストであると。

 簡単に言えば、自分が相手を助けたら、次は自分が相手に助けて貰えばいいのです。

 これは経営者や従業員でも、さらには私生活でも同じ事です。

 まずは最初に気前よくこちらから提供して、その後、その親切やサービスは「お互いに貸したり返したり」する至極当然のルールあると、相手にさりげなく言葉で示しましょう。

 そして、ちゃんとそのルールに則って助け合い事が出来る職場では、生産性も社員同士のコミュニケーションも向上します。

 逆に助けて貰ったけど自分からは相手を助けない。そんな奴は会社に悪影響を及ぼす存在になりかねません。

 例え、その人が優秀でも、一人の優秀な社員が居るだけでは企業は成長しないのです。

 企業環境を整えるのも経営者の務めなので、そこいら辺もしかっりと見極めて置くことに越したことはないのです。

参考文献

書籍

・ロバート・B・チャルディー二「影響力の武器「第三版」」(誠信書房、2014年)

・ノア・J・ゴールドスタイン、ロバート・B・チャルディー二、S・マーティン「影響力の武器 実践編「第二版」」(誠信書房、2019年)

・スティーブ・J・マーティン、ロバート・B・チャルディー二、ノア・J・ゴールドスタイン「影響力の武器 戦略編」(誠信書房、2016年)

論文

・(1) Alter, A. L., & Oppenheimer, D. M. (2006) . Predicting short-term stock fluctuations by using processing fluency. Proceedings of the National Academy of Sciences, 103, 9369-72.

・(2) Grant, A. M.(2008) . The significance of task significance: Job performance effects, relational mechanisms, and boundary conditions. The Journal of Applied Psychology, 93(1), 108-124. doi:10.1037/0021-9010.93.1.108

・(3) Larson, J. R., Christensen, C., Franz, T. M., & Abbott, S. (1998). Diagnosing groups: The pooling, management, and impact of shared and unshared case information in team-based medical decision making. Journal of Personality and Social Pschology, 75(1) , 93-108.

・Zhu, R., & Argo, J. J. (2013). Exploring the impact of various shaped seating arrangements on persuasion. Journal of Consumer Research, 40(2), 336-349. doi:10.1086/670392

・(4) Flynn, F.J. (2003). How much should I give and how often? The effects of generosity and frequency of favor exchange on social status and productivity. Academy of Management Journal, 46(5), 539-53. doi:10.2307/30040648

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