近年、多くの研究が宗教と健康の関係を探求しており、その結果、宗教を信じる人々が長生きする傾向があることが示されています。
この現象は、宗教が身体的・精神的な健康に及ぼす効果に起因しているとされています。
また、宗教においては、定期的な集会や儀式が行われることが多く、社会的なつながりを強めることができるため、孤独や社会的孤立感を感じることが少なくなることが示唆されています。
しかしながら、これらの効果がどの程度健康に影響を与えるのかはまだ完全には解明されておらず、今後の研究が待たれるところです。
宗教を信じる人は知性は低いか?
インペリアル・カレッジ・ロンドンの研究で、最初の一文を紹介すると「宗教性が知性と逆の相関を示すことは広く認められている。」
つまり、宗教にハマりやすかったり信仰心が厚い人は、なぜか頭が良くない傾向があるそうです。
これは実際に何度も確認されており、たとえば2013年のメタ分析では63件のデータをまとめて大きな結論を出したものでは、宗教的な人と知性の相関は「r = −24」になっております。
数値としてはハッキリとは言えないものの、やはり大きな傾向としては可能性があります。
そして今回の研究では、「宗教的=知性が低い」という関係があるのはなぜなのか?ということを調べております。
研究チームはオンラインで約63,000人に協力をお願いして、12種類の認知テストを実行しました。
さらに計画力、推論力、注意力、ワーキングメモリなどの高さをチェックしたうえで、以下の3パターンに全員を分けております。
- 宗教的
- 不可知論者(神がいるかどうかは人間には判断できないのだ!みたいなやつ)
- 無神論者
その後、全ての数字を以下にまとめました。
- 全体的に、宗教的な人より無神論者の成績がよかった
- その傾向は、年齢や教育レベルなどの要素を調整しても残った
- 不可知論者はほとんどのテストで真ん中の点数を取った
もう少しデータを細かく見てみると、以下のようなところが気になりました。
- ワーキングメモリの性能にはそれほどの差はない
- ただし宗教的な人は、ストロープタスクのように推論の能力が必要なテストに弱い
つまりベースとなる脳の機能には差がないですが、推論が必要な作業になると宗教的な人は直感に頼る可能性があるみたいです。
信心深いと33%も長生きする?
よく「信じる者は救われる」などと言いますが、どうやら信心深い人のほうが長生きしやすい傾向があるそうです。
ハーバード大の研究では、1992年〜2012年にかけて74534人の女性に行われた健康データを使い、4年に1回ごとに全員に「1カ月にどれだけ教会に行ってますか?」と尋ねたうえで、その後の死亡率と比べました。
一応、年齢や喫煙、飲酒、BMI、収入といった要素の影響を取り除いたところ、以下のような結果になりました。
- 週イチのペースで礼拝に参加した女性は、まったく教会に行かない女性にくらべて、その後16年間の死亡率が33%も減っていた
- 4年以上にわたって定期的に教会に通った場合、死亡率はさらに45%まで減る
調査を行った研究者は、以下のように述べています。
宗教的な礼拝にひんぱんに参加すると、心疾患や発がん率などをふくむ全死亡率は明確に下がる。
宗教とスピリチュアルは、病気予防の手段として見過ごされてきた要素だ。
また、研究者は「宗教とスピリチュアルで寿命が伸びる理由」についても統計処理を行っており、以下のようになりました。
- 定期的に礼拝に参加する人は社会の人間関係がいい
- 信心深い人はタバコを吸わないケースが多い
具体的な数字をあげると、寿命が伸びる理由の23%を「人間関係」が占めており、22%を「タバコ」が占めているそうです。
つまり、人間関係とタバコの2つだけで、寿命が伸びる理由の約半分は説明ができてしまうそうです。
ちなみに、「楽天的な性格」は全体の9%ぐらいで、寿命を伸ばす要素としては重要ではないそうですね。
宗教に代わる信仰対象を作れるか?
「宗教がダメならテクノロジーを信じれば良いのでは?」と喝破していておもしろかったです。
この研究は、宗教と科学に対するスタンスが、人生の満足度にどんな影響を与えるかについて2種類の長を行い、まずはオランダ人を対象に、宗教心とテクノロジーへの考え方を調べたところ、以下のような結果が分かりました。
- 宗教心が厚い人は人生の満足度が高い
- 科学の進歩を信頼している人は、さらに人生の満足度が高い
信仰心よりも科学への信頼が厚い人のほうが、幸福度が高い傾向があったわけですね。
ここでいう「科学への信頼」ってのは、「テクノロジーの進歩により、人類はより健康で幸せになり、世界がより良くなるだろう」って考え方のことです。
もちろんテクノロジーが万能だって話ではなく、あくまで「科学で少しずつ世の中は向上していくのでは?」程度の信頼感です。
もうひとつの調査は世界72カ国を対象に、同じように宗教と科学への考え方をチェックしました。
その結果は、以下のようになっております。
- 科学への信頼が厚い人ほど人生の満足度が高い傾向があったのは69カ国
- 信仰心が厚い人ほど人生の満足度が高い傾向があったのは28カ国
科学を信頼すると幸福になるのかというと、「自己コントロール感が高まるからではないか?」と推測しております。
無宗教な人間がメリットを得る方法
ドイツから出てきた研究では、「宗教を使わなくても似たようなメリットは得られるかもしれない」という話になっています。
マンハイム大学の研究で、74,966人の男女を対象都市、大きく3つの調査を行いました。
調査1
被験者が日常的にどれぐらい「一体感」を感じているかをチェック
一体感と人生の満足度がどれぐらい関係してるかを比較
調査2
被験者が信じる宗教と、「一体感」のレベルをチェック
一体感と人生の満足度がどれぐらい関係してるかを比較
どちらの研究も「一体感」(oneness)がテーマになっており、まずは論文の言葉を引用すると、
- 「この世のすべてはひとつの原理をベースに動いている」と感じている
- 「この世のものはお互いにからみあい、それぞれが影響を受けている」と感じている
調査を行った研究チームは、「神聖なものへの同一感。人生や世界、他者との一体感。これらの要素は、かねてから宗教の世界では幾度となく議論されてきたテーマだが、近年では科学的なリサーチも進められてきた。」
一体感ってのは宗教を信じてない人でも大事なのではないか?ということです。
では、一体感が強い人は以下のような傾向があったそうです。
- 人生の満足度が高い
- 勉強もよくできる
- 歳を取ってからの健康度も高い
また、宗教によって得られるメリットが、一体性の感覚で調整すると消えてしまうので、別に宗教やスピリチュアルを信じてなくても、一体感さえ持っていれば似たようなメリットは得られるんじゃないのか?ということも論文でも述べられていました。
参考文献
・AUTHOR=Daws Richard E., Hampshire Adam TITLE=The Negative Relationship between Reasoning and Religiosity Is Underpinned by a Bias for Intuitive Responses Specifically When Intuition and Logic Are in Conflict JOURNAL=Frontiers in Psychology.8,2017 https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fpsyg.2017.02191
・Dolcos, F., Hohl, K., Hu, Y. et al. Religiosity and Resilience: Cognitive Reappraisal and Coping Self-Efficacy Mediate the Link between Religious Coping and Well-Being. J Relig Health 60, 2892–2905 (2021). https://doi.org/10.1007/s10943-020-01160-y
・Edinger-Schons, L. M. (2020). Oneness beliefs and their effect on life satisfaction. Psychology of Religion and Spirituality, 12(4), 428–439. https://doi.org/10.1037/rel0000259
・Olga Stavrova, Daniel Ehlebracht, Detlef Fetchenhauer,Belief in scientific–technological progress and life satisfaction: The role of personal control,Personality and Individual Differences,96,2016,227-236,0191-8869,https://doi.org/10.1016/j.paid.2016.03.013.
・Li S, Stampfer MJ, Williams DR, VanderWeele TJ. Association of Religious Service Attendance With Mortality Among Women. JAMA Intern Med. 2016;176(6):777–785. doi:10.1001/jamainternmed.2016.1615