直感的食事法と社会的影響:健康とダイエットに関する科学的解明

ナッツ類は酒の肴として食べたことがある人もいるのではないでしょうか?それ以外にも、健康目的にで定期的に摂取している人もいるかもしれません。

そこでこの記事では、「具体的にナッツ類を食べれるとどんな効果があるのか?」や「ナッツ類で」と考えている人に向けて科学的な視点から解説をしてきたいと思います。

他人といると食事の量が変わるのか?

バーミンガム大学の論文で、過去の膨大なデータから信頼度が高めな42件を精査したメタ分析を行い、総計6051人のデータをまとめました。

そしてメタ分析から分かったことは以下の通りになります。

  • 多くの人は、1人で食べるよりも他人と食べたほうが、かなりの確率で食事の量が増える(Z = 5.32)
  • ただし、顔見知りでない人が周囲にいたとしても食事の社会的促進は起きない(つまり、レストランで大食いの人がいても、自分も食べ過ぎることはない)
  • 食事の社会的促進が起きるかどうかは、本人の体重や食事の種類によって変わるが、基本的には「食事相手との仲が良ければ良い」ほど発生しやすい
  • 女性の場合は、男性と食事をすると一貫して食事の量は減る

どうやら人間は顔見知りと食べてるとつい食べすぎちゃう傾向があるらしい。

さらに、人間の食事量が他人の影響を受けやすいってデータは昔からあり、2015年のメタ分析によれば、その相関は「r = .39」でそこそこ高めの数値でした。

これについて研究チームは、『あなたが、レストランで友人とランチを共にしたところ、大食漢の友人が、店のおすすめ定食をすぐに間食したと想像してほしい。そして、その翌日、あなたは別の友人とランチに出かけて同じ定食を頼んだが、今度は相手がほとんど食事を口にしなかったとする。少しイメージしてみただけでも、この2つの状況では、あなたの食事量が変わることが実感できるはずだ。もちろん、その時の空腹感や食事の内容も関係するが、多くのデータは「同席者がどれぐらい食べるか?」の重要性を示している。』

みんな無意識のうちに食事相手の行動をマネする傾向があるとのことでして、俗に「食事摂取量のモデリング理論」などと呼ばれております。

好きに食べる人ほど痩せる

「直観的な食事」とは1990年ごろに作られた言葉で、ざっくり言えば以下のような食べ方をする人のことです。

  • お腹がすいたときにだけ食事をする
  • 特定の食品を「NG」と思わない
  • ストレス解消のためではないく、身体的な理由で食べる。
  • 自分の空腹と満腹の合図を信頼している

直感的に食べる人は、あくまで身体が必要とするぐらいの食事を食べて、「やけ食い」とか「手持ちぶさただから食べる」みたいなことをしないということです。

以前から「直感的な食事ができる人ほどメンタルが安定してるのではないか?」という考え方と以下のような報告がされていました。

  • 直観的な食事をする人は、時間がバラバラな食事をしないし、厳しい食事制限もしない
  • そのため、自分の肉体へのコンプレックスがなく心理的苦痛も低い
  • そのおかげで、生活の質も一貫して高い傾向がある

そこで今回のメタ分析では、97件の研究をもとに「直感的な食事」をしている人たちの特徴ってどんな感じなのかを調べています。

ここでは「直感的な食事」をしている人たちのメンタルを23にわけて、おおまかに以下のような傾向をチェックしています。

  • 直感的な食事をする人には、以下の特徴がなかった
  • 不安定な体重
  • 暴飲暴食
  • 食べるのを我慢する
  • 感情だけで食事をする
  • 空腹の感覚ではなく、視覚、味覚、嗅覚なの外面的な手がかりに反応して食事をする
  • 摂食障害
  • 「こういう見た目じゃないとダメだ!」という理想
  • 体型や体重への不安
  • 不安症状
  • 抑うつ症状
  • 否定的感情

そして直感的な食事をする人には、以下の特徴があったそうです

  • 他者から身体の特徴を受け入れられている
  • 自分の身体への評価の高さ
  • 身体機能の高さ
  • マインドフルネス
  • ポジティブな感情
  • 自尊心
  • 社会的支援
  • 全般的な幸福感

昔から言われてきたとおり「直感的な食事」は幸福感と大きな関係性があるらしい。

まぁいちいち食事のことを気にしてたらイライラするでしょうから、これはよくわかりますね。

が、だからといって「直感的にガンガン食事をすればいいんだ!」ってわけではないのでご注意ください。

これはあくまで観察研究なので、なにか別の原因が「直感的な食事」につながってる可能性は十分あるわけです。

そこで、この研究チームが主張してるのが、『簡単に言えば、他人から体型をバカにされたりせず、そのおかげで自分でも「まぁ自分はこれぐらいの身体でいいかー」と思える人ほど、直感的な食事をしやすいのでないか』という考え方です。

それもそのはずで、「自分の身体はこれでいい」と思える人は、社会のルールや理想に従わねばならないと感じる可能性も低い可能性があるので、プロポーションが良い人を見かけてもコンプレックスを抱かず、無理なダイエットや食事法には手を出さないという風になるわけですね。

実際、このメタ分析では、「自分の体を尊重する人は空腹や満腹の合図に敏感」とか「自分の体を受け入れている人は、身体の合図を尊重する」という過去の研究も例を挙げています。

なぜテレビやスマホを見ながら食事をすると太るのか?

バーミンガム大学の実験で、まずは39人の女性を以下の3つのグループに分けました。

  • スマホでゲームをしつつ食事(集中レベル低)
  • ボードゲームをしつつ食事(集中レベル中)
  • ひたすら食事に集中(集中レベル高)

その後、全員がどれだけ間食をしたかを調べたところ、以下のような違いがでました

  • スマホでゲームをしたグループは、食事に集中したグループよりもお菓子を69%多く食べた
  • ボードゲームをしたグループは、食事に集中したグループよりもお菓子を28%多く食べた

食事に集中するほど、その後の間食は減っていくようです。

これについて研究者は、『何かをしながら食事をすると、後で間食をとる量が増える。食事に集中すれば、逆に間食の量は減る。食事の種類や注意を反らす対象が変わっても、この傾向は一貫していた。たとえば、食事の形式がビュッフェろうがスープだろうが、注意を反らすものがスマホだろうがテレビだろうが、集中レベルが下がれば間食は増えるのだ。集中して食事をすれば、食欲はコントロールできる。』と述べています。

できるだけ食事の記憶を脳にすり込ませるのが大事なわけですね。すべての食事をマインドフルに行うのは大変なので、まずはテレビやスマホを切るとこから始めたらいいかもしれません。

1日3食のほうが血糖値が安定するから体に良いか?

シラキュース大学の実験で、健康な参加者に以下の2パターンの食事をしてもらいました。

  • 高糖質な食事を1日3回
  • 高糖質な食事を1日6回

そのうえで血液サンプルを取ったところ、結果は以下の様になりました。

  • 食事の回数が少ないほうが食後の血糖値は大きく上がる
  • 1日全体で見ると、食事の回数が少ないほうが平均の血糖値レベルは低くなる

食事回数を少なくしたほうが、1日の血糖値は低めに安定するようです。

食後の血糖値上昇につきましては、どちらのグループも気にするレベルではありません。

もちろん、これは「3食 vs 6食」なので、「1食 vs 3食」だったら場合には違う結果が出る可能性も否定はできません。


また、2009年に行われた有名なメタ分析では「食事回数と健康」に関する過去のデータから176件を抜き出したもので、サンプル数が少ないのが難点ですが、参考なります。

その結果は以下の様になりました。

  • (カロリーが同じ限り)食事回数と健康にはほとんど関係なし!というか、食事回数を減らしたほうが体重は減りやすいみたいよ!

食事の回数を減らそうが健康への悪影響は確認されず、逆に体重が減るので体にいいのでは?という結論になっています。

やはり1日3食にこだわる理由はないように思います。

ただし糖尿ぎみの人だと少し話が変わってくる
もっとも、上のデータはあくまで「健康な成人」がメイン。

糖質の処理機能に問題がある「糖尿病」の人だと、やや話は複雑になってきたりします。

というのも、一部のデータでは「糖尿気味なら回数を多くしたほうがいいかも!」って傾向も出てるんですよ。

アテネ農業大学の2017年実験(3)なんかだと、糖尿ぎみな47人の患者さんを「1日6食」と「1日3食」の2つに分けて、両グループの食事量はすべて維持カロリー(現在の体重をキープするのに必要なカロリー)に調整して、24週間の経過をチェックしました。

結果は全員の体重は減らなかったにもかかわらず、1日6食グループのほうがHbA1cが減り、経口ブドウ糖負荷試験の結果も良好でした。

つまり、1日6食のほうが糖質のコントロール能力がアップしました。

しかし「糖尿ぎみの人は食事を増やそう」とまでは言い切れず、糖尿病の人が1日2食で改善したケースもあります。

「朝食を抜くと太る」は大嘘だった?


2014年に行われた実験では283名を対象にした厳密なランダム化比較試験で、もちろんどのメーカーも金を出していません。

この実験では、まず参加者を以下の3グループに分けました。

  • 朝食に食物繊維が少ないシリアルを食べる
  • 朝食に食物繊維が豊富なオートミールを食べる
  • 朝食抜き

それぞれ朝食だけを変えて、あとの時間は自由に食べてもらったもよう。

実験の期間は16週間で、終了後には全員の体重と体脂肪、コレステロール値、血圧などを調べたんだそうな。

その結果は、

  • 体重が大幅に減ったのは朝食抜きグループだけだった
  • 朝食抜きグループは体重が平均で1.18kg減
  • シリアルグループは平均0.12kg減
  • オートミールグループは平均0.26g増
  • 安静時代謝や血圧などは3グループとも差はなかった
  • 朝食抜きグループのみコレステロールの増加がみられた。ただし心疾患リスクは上がっていなかった

なんと、朝食抜きグループがもっともダイエットに成功していました。

これについて研究者は、『朝食抜きグループは午後になっても食べ過ぎに走るケースが少なく、結果として総摂取カロリーが減った』ようです。

また1992年に52名を対象にした実験でも「朝食を抜いたほうが体重は減る」という結果が出ており、どうやら「朝食を抜くと体が栄養を貯めこむから太る」という説にも根拠が薄いようです。


以上のデータをふまえますと、いまのところハッキリ言えるのは「朝食抜きが悪いって話は根拠が怪しいよ!」ってことぐらい。

「朝食はメチャクチャ体にいい」という証拠もないので、朝起きて腹が減ってたら食べれば良いのではないでしょうか?

参考文献

・Hazzard, V.M., Telke, S.E., Simone, M. et al. Intuitive eating longitudinally predicts better psychological health and lower use of disordered eating behaviors: findings from EAT 2010–2018. Eat Weight Disord 26, 287–294 (2021). https://doi.org/10.1007/s40519-020-00852-4

・Helen K Ruddock, Jeffrey M Brunstrom, Lenny R Vartanian, Suzanne Higgs, A systematic review and meta-analysis of the social facilitation of eating, The American Journal of Clinical Nutrition, Volume 110, Issue 4, October 2019, Pages 842–861

・Kahleova, Hana et al. “Eating two larger meals a day (breakfast and lunch) is more effective than six smaller meals in a reduced-energy regimen for patients with type 2 diabetes: a randomised crossover study.” Diabetologia vol. 57,8 (2014): 1552-60. doi:10.1007/s00125-014-3253-5

・Linardon, Jake et al. “Intuitive eating and its psychological correlates: A meta-analysis.” The International journal of eating disorders vol. 54,7 (2021): 1073-1098.

・Michael E. Holmstrup, Christopher M. Owens, Timothy J. Fairchild, Jill A. Kanaley,Effect of meal frequency on glucose and insulin excursions over the course of a day,e-SPEN, the European e-Journal of Clinical Nutrition and Metabolism,Volume 5, Issue 6,2010, e277-e280.

・Palmer, Michelle A et al. “Association between eating frequency, weight, and health.” Nutrition reviews vol. 67,7 (2009): 379-90. doi:10.1111/j.1753-4887.2009.00204.x

・Suzanne Higgs,Manipulations of attention during eating and their effects on later snack intake,Appetite,Volume 92,2015, 287-294.

・https://www.jneb.org/article/S1499-4046(19)31154-6/fulltext

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