「プライベートで友達がいない」や「逆に友達は多いが心から信用できない」、などなど様々な理由が重なり孤独感を覚えてしまう人がいるのではないでしょうか?
この記事では、「孤独感を覚えるとどんな影響が出るのか?」や「SNSで友達がいいてもダメなの?」と考えている人に向けて科学的な知見から紹介をしたいと思います。
コミュニケーションスキルを磨いても無意味
これに対しては「コミュニケーションスキルを磨け」とか「積極的に人に会おう」などと言われてるわけですが、2010年のシカゴ大学ではそのような解決策を実践しても無駄なようです。
これは、1970年から1999年に行われた「孤独感」の研究をメタ解析にかけたもので、研究者によれば、『人との交流を増やしたり、社会的支援を行ったり、コミュニケーションスキルを学ばせたりするのは、孤独感を減らす効果的な方法ではない。』ようです。
確かに、いくら多くの人と上手く会話ができたとしても、奥底ではなぜか孤独感が根強く残ってるケースはよくあることかと思います。
論文によれば、孤独感は「実際に友人が多いかどうか」や「会話が上手いかどうか」とは関係なく、孤独な人たちは「自分は他人に受け入れられない」とか「他人からヘンな目で見られてるに違いない」といった思い込みがあるのが原因らしいです。
孤独感に悩みの方は、無闇に友だちを増やそうとしたり、コミュニケーションスキルを上げようとせず、まずは自分の認知を変えてみることを考えたほうが良さそうですね。
孤独感で糖尿病になる?
これは50歳以上の男女4112人を15年間にわたって追跡調査した研究で、期間中に264人が2型糖尿病を発症したようです。
ここから、喫煙、アルコール摂取、血糖値、うつ病などの因子を調整したところ、孤独な人ほど糖尿病になりやすいという傾向が出たようです。
研究チームは『孤独な気持ちが慢性化するとストレスシステムが毎日刺激され、時間をかけてあなたの体をすり切れさせていく可能性がある。』
ただし、孤独といっても、社会から孤立してたり友人がいないだけでは糖尿病と相関しないという傾向も出てたりします。
あくまで重要なのは「俺って孤独だな」という主観的な感覚であり、友達の有無やら社会になじんでるかどうかは無関係みたいです。
孤独はアンチエイジングにも良くない
カリフォルニア大学の実験では、孤独がヒトの細胞にどんな影響をおよぼすかを調べ141名の高齢者から血液と尿サンプルを5年にわたって採取して、全員の免疫系やストレス反応をチェックしました。
そのうえで参加者の孤独感とデータをくらべたところ以下のような結果になりました。
- 主観的な孤独感が強い人は、免疫系の遺伝子が12.2%ほど活性化した
- 孤独感が強い高齢者は、寿命が縮まるリスクが14%高くなる
免疫系の遺伝子はウイルスの駆除に役立ついっぽうで、活性化しすぎると体内に慢性炎症を起こしてしまい、老化を進める原因になるわけですね。
こういった現象が起こる原因としては、
- 孤独を感じる
- 仲間がいないため、脳が「危険に備えよう!」とパニックを起こす
- 交感神経が暴れ始める
- 免疫系が活性化
- 老化する
あくまで仮説ではありますが、もともとヒトは集団生活に適応して進化してきた生き物ですから、孤独によって脳が対応できていない可能性が考えられます。
ちなみに、ここで問題なのは「主観的な孤独感」なんで、いくら友だちが多くても内面で寂しさを感じていれば同じことなんでご注意ください。
SNSの使いすぎで孤独感が3倍になる?
ある19歳〜32歳の参加者1787人の成人を対象に研究では、以下のような調査を行いました。
- 全員のSNSの使い方を質問紙でチェック
- 続いてみんなの「孤独感」をテストで調べる
SNSの使用量と孤独感の関係を見たところ、以下のような傾向が確認されました。
- 1日にSNSを2時間以上使っている人は、1日30分以下の人に比べて孤独を感じる確率が2倍も高い
- 週にSNSに58回以上アクセスする人は、それ以下の人に比べて孤独を感じる確率が3倍も高い
これは孤独を感じている人ほどSNSにハマりがちなだけでは?という考え方も十分にあります。
その点で「SNSは孤独を加速する」とは言えません。
孤独感で脳が衰えるリスクが40%増える?
次はフロリダ州立大学の研究では、平均50歳以上の男女約12000人を10年にわたって調べた観察研究で調査のあいだに1104人が痴呆症に罹りましたが、ここでハッキリした傾向でました。
- 孤独感が強い人は頭がボケる確率が40%も高い!
この論文における「孤独」の定義は以下のようになっています。
「孤独」とは、あなたが周囲の人間に受け入れられていない、または感覚的にフィットしていないという感情のことである。
つまり、もしあなたが一人で暮らしており、あまり他人との接触がなかったとしても、「自分は他人に受け入れられている」とさえ思えれば孤独ではない。
逆に言えば、あなたがたくさんの人と付き合っていたとしても、「なじんでいない」と感じられれば、それは孤独だと考えられる。
大事なのは人付き合いの量ではなくて質だそうです。
SNSで孤独を減らす方法は?
ペンシルバニア大学から出た論文では143人の学生を対象にした実験を行い、全員の行動を3週間にわたって記録し、その際に全体を以下のように2グループにわけました。
- いつもどおりSNSを使う
- SNSの使用を1日30分に限る
以前から「SNSは孤独感の原因になってるんじゃないのか?」と推測したわけですね。
結果は以下のようになっています。
- Facebook、Snapchat、Instagramなどの使用時間が多い人ほど孤独感が高まり、不安に悩みやすい
これについて研究者は、『SNSの使用量が減れば減るほど、うつ症状と孤独感も減少した。この効果は、実験が始まった時点でメンタルが悪化していた人ほど大きかった。』
どうやら現代では、SNSが孤独感を悪化させているみたいなんですな。
孤独感が引き起こす6つのデメリット
- 孤独な人は早死にする
2015年にブリガムヤング大が行った研究で、過去に出た70件のデータをメタ解析したところ、孤独感は死亡率を26%高める、社会からの孤立は死亡率を29%高める、一人暮らしは死亡率を32%高めるという結果がでました。この数字は、ほぼ肥満の死亡リスクと同じだそうです。 - 孤独な人には認知症が多い
2012年のデータによれば、孤独感が強い人ほど認知症になる確率が高かったそうです。ただし、ここで重要なのは「孤独感」で、実際に友人が多いかどうかとは関係がないとのことでした。 - 孤独な人は栄養状態が悪い
2013年に行われた調査では、50代を超えても1人で暮らしている人は、パートナーがいる人にくらべて野菜をとる割合が少なかったらしいです。孤独感を埋めようとして、すぐに安心感が得られるお菓子やジャンクフードに手を出すのが原因らしいです。 - 孤独な人は全身に炎症が起きる
2011年の論文によれば、孤独感を抱えたままの人は、遺伝子の発現に違いが出てしまい、細胞に慢性的な炎症を起こすそうです。慢性炎症は、うつ病や心疾患、肥満、アレルギーなどの原因になりますんで、結果として死亡率も高くなるようです。 - 孤独な人は睡眠の質が下がる
2011年の実験で95人の参加者をしらべたところ、孤独感のスコアが高かった人ほど睡眠時間が短く、夜中に起きてしまう傾向が強いようです。この現象は普段のストレスや不安感とは無関係で、孤独感が睡眠をジャマする理由は不明だそうです。 - 孤独な人は実際に体が痛む
2003年の実験によれば、孤独感は脳の前帯状皮質に刺激を与えて、現実の痛みに近い感覚を生みだすそうです。しかも、その痛みをやわらげるために脳内麻薬まで分泌されるみたいです。
参考文献
・Hackett, R.A., Hudson, J.L. & Chilcot, J. Loneliness and type 2 diabetes incidence: findings from the English Longitudinal Study of Ageing. Diabetologia 63, 2329–2338 (2020).
・Holt-Lunstad, Julianne, et al. “Loneliness and Social Isolation as Risk Factors for Mortality: A Meta-Analytic Review.” Perspectives on Psychological Science, vol. 10, no. 2, Mar. 2015, pp. 227–237,
・Holwerda TJ, Deeg DJH, Beekman ATF, et alFeelings of loneliness, but not social isolation, predict dementia onset: results from the Amsterdam Study of the Elderly (AMSTEL)Journal of Neurology, Neurosurgery & Psychiatry 2014;85:135-142.
・No More FOMO: Limiting Social Media Decreases Loneliness and Depression Melissa G. Hunt, Rachel Marx, Courtney Lipson, and Jordyn Young Journal of Social and Clinical Psychology 2018 37:10, 751-768
・https://www.ajpmonline.org/article/S0749-3797(17)30016-8/fulltext
・https://www.cedar.iph.cam.ac.uk/resources/evidence/eb5-social-ties-older-people-diet/
・https://www.pnas.org/doi/pdf/10.1073/pnas.1014218108
・https://www.pnas.org/doi/abs/10.1073/pnas.1514249112