仕事や人生で大成功するたに必要なのは運か才能か?成功への鍵を科学が解明

「成功するためには運か才能が必要なのか?」という問いに対する答えは、明確な結論が出されていないものの、研究結果からは両方が重要であることが示唆されています。

一部の研究によれば、才能によって成功する人もいれば、運によって成功する人もいるということです。

また、両方を併せ持つ人が最も成功するという見解もあります。

ただし、才能は遺伝的な要素もあるため、運に左右されることがないと言えるかは疑問です。

そのため、個人の環境や努力も成功に影響を与えることが分かっています。

成功には運が必要

「成功には幸運が必要」というのは科学において良く言われることで、実際、才能を持った人が運に恵まれなかったせいで成功しなかったという例はいくらでもあります。

一方、どのような形であれ成功した人は、「この成功は自分の実力である」と思いやすく、さらに成功してない人も、成功した人たちの自信に影響され、「自分も頑張らなければ」と焦らされるバイアスのせいで、運の重要性は軽視されてしまうことが多いです。

そんな中で、中央ヨーロッパ大学などのは「運は成功にどこまで必要なのか?」という点を調査しました。

映画、書籍、音楽、科学などのジャンルから、いろんな有名人のキャリアの変遷を調査し、これを数理モデルに入れて、ランダム性と個人の能力が「作品のヒット」にどう影響するかを割り出しました。

調査の対象になった人はジョージ・ルーカスとかシナトラといったレジェンドから、デヴィッド・ゲッタみたいな最近の人も入っていました。

そして結果は以下のようになりました。

  • 大ヒットの発生は本質的にランダムなので、いつになったら売れる作品ができるのかや、科学的な大発見が生まれるかはまったく予想ができない
  • 個人のキャリアでヒットが生まれるのは、人生で初の作品かもしれないし、人生で最後の作品かもしれない。こちらも完全にランダムなので、作品発表のタイミングからヒットは読めない
  • ランダム性はクリエイティブな分野すべて同じような効果を持ち、その役割は個人の能力がもたらす影響よりも大きい
  • ただし、ジャンルによって運の影響度はやや異なり、映画プロデューサー、電子音楽系のアーティスト、本の著者、宇宙科学者、政治科学者、生物学者などは、より幸運の影響に左右されやすい
  • 一方で、ヒップホップ、クラシック、コンピュータサイエンスなどは運の影響を受けにくい(ただし、あくまで微妙な差ではありますが)

つまり「個人の能力より運の影響が大きく、成功の予測は出来ない」という傾向が出ました。

また研究チームは「ヒットが続く人の違い」も調べ、以下のような結果は出しました。

  • ヒットを続けられる人には2種類あり、もっとも多いのがまず最初に良い作品を作り、その後に関連する人たちのあいだで中心的な存在になったおかげで成功が持続するパターン
  • もうひとつが、手始めに人的ネットワークの中心になっちゃって、人脈やリソースにアクセスしてからヒットを生み出すパターン

つまりヒットを続けるには他者のリソースが欠かせないということです。

また残念ながら「人脈」を作ろうと考える人もいるかもですが、人的ネットワークの中心に入れるかも、完全にランダムで決まるという結果が出ています。

コンピューターで「運」と「成功」を重要度を比べる

「成功は才能or運か?」という問題をコーネル大学は、実際にヒトを使ったわけじゃなくて、コンピューターモデルを採用して調査しました。

まずは架空のエージェントを1000体作って、それぞれに知性やソーシャルスキル、モチベーション、決断力、創造性、感情知性などの数値を設定。

実世界の「才能」をシミュレートしました。

さらにすべてのエージェントには人間の40年分にあたる時間を過ごしてもらい、この時に6ヶ月おきに何らかのラッキーな出来事かアンラッキーな出来事が起きるようにセットしました。

さらにラッキーなイベントに遭遇したエージェントは成功の確率が「才能」の割当量に応じて倍増するのに対して、アンラッキーに遭遇した場合は成功率が半分になるというルールしました。

それの結果は以下のようになりました。

  • たった20人のエージェントが、「成功」の総量の44%を独占していた
  • 全体の50%のエージェントは、「成功」度が初期レベルのままだった

少数の者が富を独占するという現実世界と同じような状況になってたらしいです。

さらに、才能と成功の関係で言いますと、もっとも才能がある奴がもっとも成功するわけではないが、ただし才能が少なくとも平均値にはいないと、ほぼ成功することはないそうです。

これについて研究者は、「成功した者のほとんどが幸運に恵まれていたのは明白だ。そして、さほど成功しなかった者が不運だったのも明白だ。人生の成功にいくばくかの才能が必要だったとしても、才能に満ち溢れた者が最高の成功を手にするわけではない。私たちは時にランダムネスが成功にもたらす影響を忘れ、本当に有能な人にふさわしい栄誉を与えないことがある。」

成功のかなりの側面は偶然が左右してるのに、人間は「あの人は有能だからうまくい」と思う傾向があるということです。

不幸な人は不幸を呼び込む

成功が運の要素が強い一方で幸福な人や不幸な人がいるのも事実でしょう。

そして科学では不運を呼びこむメカニズムは「ネガティブバイアス」と呼ばれており、否定的な現象につい意識が向いてしまう傾向のこと指しています。

よくマイナス思考と呼ばれる人は、ネガティブバイアスを持っているケースが多いんですな。

ちなみに、マイナス思考と事故の関係は過去のデータにもハッキリ出ております。

たとえば2012年の実験では、ネガティブな人は余計なことに気を取られがちで、結果として事故を起こしやすい傾向があったそうです。

つまり、対向車線にスピード違反の車が出現し、ネガティブバイアスのせいで対向車にばかり意識が向くことで自分の運転がおろそかになって事故にあってしまうという流れです。

2011年の実験でも似たような結果が出ていて、ネガティブな感情が多い人は一度にひとつのことしか意識が向かなくなり、目の前の危険を見逃す可能性が高まるそうです。

もともとネガティブな感情には集中力を高める作用があるんですが、この効果が裏目に出てしまうこともあるのです。

お金を考えるだけでも不幸になる?

これはバッファロー大学の研究で、だいたい2,500人の参加者を集めて複数の実験をしました。

第一の実験

345人の男女を集めて「お金と自己価値の結びき」を調べました。(例えば、「私の自尊心は、どれだけお金を稼ぐかによって影響される」とか「十分なお金を稼いでいないと自分にがっかりする」みたいな文章にどれぐらい賛成するかをチェックした)


さらに毎日の暮らしの中でどれぐらい時間のプレッシャーを感じているかを調べました。そして全員の「孤独感」「他の人とのつながりの感覚」「人生のコントロール感」を測定してすべてのデータを比較しました。

まずは「お金の感覚と幸福度」を調べたところ、経済的な成功に自己価値を結びつけている人ほど、日々の暮らしに時間的なプレッシャーを感じ、人生のコントロール感も低く、他人との関係も悪かったそうです。

つまり「金を稼ぐことこそ、成功である」と考えている人ほど日々にストレスを感じ、「人生を自分でコントロールできてない」という不満を抱いてたんだそうです。

第二の実験

第二の実験では940人の男女を集めて、同じように「お金と自己価値」のレベルをチェックし、プライベートな暮らしの幸福度を調べて、お金への価値観と比べましたが、その結果もほぼ同じでした。

三つ目の実験

第三の実験では246人の男女を集めて、「お金と自己価値」のレベルをチェックし、毎日の気持ちや行動を日記につけ、さらに日々の感覚と行動を記録してもらい、メンタルの変化をさらに細かく調べました。結果は、参加者のなかで「お金こそ成功の証である」という気分が高まった日は、人生のコントロール感と社会的なつながりの両方が激しく悪化し、持続して気分が高い人は、人生のコントロール感と社会的なつながりの両方が慢性的に低く、自分の懐具合を心配していたそうです。

以上の結果から調査を行った研究チームは、「経済的な成功に自己の価値を置く人は、プレッシャーや自律性の欠如を経験し、社会的にマイナスの結果につながる。金銭的な目標を達成するためにプレッシャーを感じるせいで、愛する人たちと過ごす時間が犠牲になり、孤独感や疎外感につながるからだろう。」と述べています。

参考文献

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・Kushlev, K., Dunn, E. W., & Lucas, R. E. (2015). Higher Income Is Associated With Less Daily Sadness but not More Daily Happiness. Social Psychological and Personality Science, 6(5), 483–489.
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・Ward, D. E., Park, L. E., Naragon-Gainey, K., Whillans, A. V., & Jung, H. Y. (2020). Can’t Buy Me Love (or Friendship): Social Consequences of Financially Contingent Self-Worth. Personality and Social Psychology Bulletin, 46(12), 1665–1681.
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