卵の消費と心疾患リスク低減:科学が明らかにする真実

健康に注意している人の中には卵について、余り良いイメージを持っていない人もいるかもしれません。おそらく、その根底には「卵を食べるとコレステロールが上がる」などといった情報が原因ではないかと思います。

そこでこの記事では、「卵は一週間で何個まで食べても大丈夫なのか?」や「本当に卵はコレステロールを上げるのか」ということ考えている人に向けて科学的な知見から紹介したいと思います。

1日最大3の卵でコレステロールが改善

コネチカット大学の研究では、14週間の間18歳から30歳の40人の、健康な男女を対象に、最初の2週間だけは卵をまったく食べないでもらい、次の4週間は卵を1日1個の生活を送ってもらいました。

さらに次の4週間は卵を1日2個に増やして、最後の4週間は卵をさらに1日3個へ増やし、卵を増やす以外は普段の食事を続けてもらい、特に運動なども指示はしませんでした。

そしていつもの暮らしに卵を足したらどうなるかを調べたところ、なんと卵を1日3個ずつ食べた参加者はコレステロールの粒子サイズが上がり、全体的な機能が改善したそうです。

具体的には、大きいLDLは21%~37%、大きいHDLが6%~13%も増加しました。

またコレステロールの流出能も改善しました。

コレステロール流出能ってのは、血管の壁にこびりついたプラークをHDLがこそげ取る能力のことで、簡単に言えば、動脈硬化のリスクが減ったということです。

さらに血中の抗酸化物質が増量し、卵を増やせば増やすほど、血中のルテインやゼアスタキサンチンが増えたそうです。

一方、他のパラメータに悪影響は出ておらず、基本的にはメリットしかない結果になっております。

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卵で脳卒中が減る

1982〜2015年の間に出た卵の研究データをまとめてメタ分析したもので、サンプル数はおよそ30万。

研究の地域もアメリカや日本、スペインと幅広く、 かなり信頼性が高いです。

で、その結論を簡単にまとめると、1日1個の卵で脳卒中のリスクが12%減る!というもの。

卵の黄身にふくまれるルテインやゼアスタキサンチンといった抗酸化物質が、脳卒中の予防に役立ってくれてるみたいです。

そんなわけで、最低でも1日1個の卵は食べておきたいところですね。

また、卵を生野菜と一緒に食べると抗酸化物質の吸収率が上がるそうなので、お試しください。

卵と心疾患リスク①

30〜79歳の男女50万人を対象にした観察研究で、2004〜2008年の間に参加者を集め、全員の卵の消費量を聞いた上で、平均8.9年かけてみんなの健康状態の変化を追いました。

その結果、期間中に約8万件の心疾患が確認され、そのうち約1万人が死亡したとのこと。このデータと卵の消費量をくらべたわけですな。

そこでどんな傾向が確認されたかと言いますと、ほとんど卵を食べない人にくらべて、1日1個の卵を食べる人は心疾患のリスクが下がる!だったそうな。

具体的には、1日1個の卵を食べる人は

  • 脳卒中の死亡リスクが28%低下
  • 心疾患による死亡リスクが18%低下
  • 脳卒中リスクが26%低下

しかし、この研究で心疾患リスクが低下した人たちは平均で1週間に5.32個の卵を食べてまして、それ以上を食べたら果たしてどうなるかは不明です。

観察研究につき「卵を食べれば心疾患が下がる!」とは言い切れない部分があります。

さらにデータを細かく見れば、卵を食べない人には、喫煙者が多いや低所得者層が多いという傾向もありまして、これらの影響を省くのも難しそうです。

卵と心疾患リスク②

「卵で心疾患のリスクは上がるか?」について調べたアンブレラレビューで、7件の系統的レビュー、15件のメタ分析をまとめています。

まずは全体的なデータの質から言いますと、基本的に卵に関する系統的レビューは質が低い、一方でメタ分析の方は中程度から高いレベルのクオリティを持つものが多く、メタ分析にはそこそこ信頼がおけそうです。

というわけで結論は、全体的に見れば、健康な人が卵で心臓病や脳卒中のリスクが上がる可能性は低い一部条件付きで、基本的に卵の消費量が増えても心疾患の心配はなさそうですが、ただし糖尿病の人などは別ということです。

参考文献

・Berger, Samantha et al. “Dietary cholesterol and cardiovascular disease: a systematic review and meta-analysis.” The American journal of clinical nutrition vol. 102,2 (2015): 276-94. doi:10.3945/ajcn.114.100305

・da Luz, Protasio Lemos et al. “High ratio of triglycerides to HDL-cholesterol predicts extensive coronary disease.” Clinics (Sao Paulo, Brazil) vol. 63,4 (2008): 427-32. doi:10.1590/s1807-59322008000400003

・Diana M DiMarco, Gregory H Norris, Courtney L Millar, Christopher N Blesso, Maria Luz Fernandez, Intake of up to 3 Eggs per Day Is Associated with Changes in HDL Function and Increased Plasma Antioxidants in Healthy, Young Adults, The Journal of Nutrition, Volume 147, Issue 3, March 2017, Pages 323–329

・Fuller, Nicholas R et al. “Effect of a high-egg diet on cardiometabolic risk factors in people with type 2 diabetes: the Diabetes and Egg (DIABEGG) Study-randomized weight-loss and follow-up phase.” The American journal of clinical nutrition vol. 107,6 (2018): 921-931. doi:10.1093/ajcn/nqy048

・Lee, Grace J et al. “Egg intake moderates the rate of memory decline in healthy older adults.” Journal of nutritional science vol. 10 e79. 21 Sep. 2021, doi:10.1017/jns.2021.76

・Mah, Eunice et al. “The effect of egg consumption on cardiometabolic health outcomes: an umbrella review.” Public health nutrition vol. 23,5 (2020): 935-955. doi:10.1017/S1368980019002441

・Millán, Jesús et al. “Lipoprotein ratios: Physiological significance and clinical usefulness in cardiovascular prevention.” Vascular health and risk management vol. 5 (2009): 757-65.

・Qin, Chenxi et al. “Associations of egg consumption with cardiovascular disease in a cohort study of 0.5 million Chinese adults.” Heart (British Cardiac Society) vol. 104,21 (2018): 1756-1763. doi:10.1136/heartjnl-2017-312651

・https://www.diabetes.org/food-and-fitness/food/what-can-i-eat/making-healthy-food-choices/meat-and-plant-based-protein.html

・https://www.thediabetescouncil.com/are-eggs-good-or-bad-for-diabetes/

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