健康効果を疑うべき商品トップリスト:マウスウォッシュ、セサミン、プラセンタの真実

 近年、健康志向が高まり、多くの人が健康に良いと信じて口にする健康商品が市場に溢れています。

 しかし、中には実際の効果が怪しいと言われている商品も存在します。

 その中でも、マウスウォッシュ、セサミン、プラセンタなどは特に注目を集めています。

 このような商品が持つ効果や効果が怪しい理由、その他にも知っておくべきことを解説していきます。

マウスウォッシュ

 虫歯や口臭予防のためにマウスウォッシュを使っている人は多いでしょう。

 一見、なんの害も無さそうなアイテムですが、2017年にハーバード大学から衝撃の報告が出まし 。

 なんと、マウスウォッシュを使い続けている人は糖尿病のリスクがはね上がるというのです。

 これは太りぎみの男女約1200人を対象にした研究で、糖尿病や心疾患にかかっていない人を3年にわたって追跡調査したもの。

 すると、マウスウォッシュをほとんど使わな 人に比べて、マウスウォッシュを1日に2回以上使う人は糖尿病のリスクが55%もアッ プしていました。

 なぜマウスウォッシュと糖尿病に関係があるかといえば、ズバリ「口内の良い菌が死ぬ から」です。

 ハーバード大学の研究チームは、次のようにコメントしています。

 「口の中には大量のバクテリアが住み着いている。このバクテリアは硝酸塩を亜硝酸塩に 代謝する働きを持つ。口の中で生まれた亜硝酸塩は消化器官へ送り込まれ、一酸化窒素に 変換される」

 一酸化窒素は人体の働きに重要な役割を持つ物質で、代謝をコントロールしたり血流をアップさせたりと、いろんな仕事をしています。

 なかでも大事なのが体内のインスリン(血糖値を整えるホルモン)を調整する働きで、当然ながら、このバランスが崩れれば糖尿病 の発症につながっていきます。

 残念ながら、マウスウォッシュに含まれる抗菌剤は、良い菌と悪い菌を区別してくれま せん。

 そのため、虫歯の原因となるバクテリアだけでなく、口の中の菌を手当たりしだい殺していくのです。

 このハーバード大学の論文は観察研究なので、まだマウスウォッシュの危険性は確定したわけではありません。

 しかし、わざわざマウスウォッシュを買わなくても、日本には昔からオーラルケアに役立つ飲料が存在しています。

 それは、緑茶です。

 緑茶がオーラルケアに役立つことを示したデータは多く、例えば2015年の実験では、 緑茶とクロルヘキシジン(市販のマウスウォッシュに使われる殺菌剤)の効果を比べたところ、歯のプラークはどちらも同じように減っていました。

 また、2009年に九州大学が行った研究でも、緑茶をよく飲む中高年ほど歯周病にかかりにくく、歯ぐきからの出血も少ない傾向が見られました。

 緑茶がオーラルケアに役立つ理由はまだハッキリしませんが、どうやら茶カテキンが悪い菌を抑えてくれるよ うです。

 マウスウォッシュを使うよりも、まず緑茶を飲むべきでしょう。

甘酒

 甘酒は昔から続く人気商品です。

 健康番組や雑誌などでは、「病院の点滴と同じぐらい栄養価が高い」、「コウジ酸のおかげで美肌になれる」などと盛んに宣伝されています。

 日本古来の伝統的甘味飲料に、果たしてそこまでの効果があるのでしょうか?

 まず、「甘酒は点滴と同じぐらいの栄養価」という説はどうでしょう。

 この主張の問題点は、そもそも点滴には別に栄養があるわけではないところです。

点滴とは、病気中の脱水を防ぐために使われる装置です。

 腸炎などのせいで何も食べら れなくなった人が使うものであり、一般人の栄養補給に役立つようなものではありません。

 実際、100gあたりのビタミン、ミネラル、アミノ酸の量を見ると、甘酒よりも卵のほうが栄養価は優秀です。栄養補給のために、わざわざ甘酒を使う理由はないといえるで しょう。

 同じように、「甘酒に含まれるコウジ酸で美肌になれる」といった説にも根拠はありません。

 確かにコウジ酸にはメラニンの生成を抑える働きがあり、肝斑に効くといったデータも 存在しています 。

 しかし、実はそもそも甘酒にはコウジ酸がほとんど含まれていないのです。

 2003年に行われた薬事・食品衛生審議会では、次のような発言が出ています。

 「製麹時にコウジ酸が産生されたとしても、醸造中に微生物、酵素などの影響により分解されるため、最終製品中にコウジ酸が残存する可能性は少ない」

 どうやら、甘酒で美肌が手に入ることはなさそうです。

 考えてみれば、甘酒とは発酵したお米を水で薄めた飲み物に過ぎず、そこまでの栄養価があるはずはありません。

 それにもかかわらずメディアで甘酒がもてはやされるのは、森永製菓が定期的にプレス リリースを出しているからです。

 同社は毎年のように自社で実験をくり返しており、「甘酒でニキビや目の下のくまが改善した」などの発表を行っています。

 残念ながら森永製菓によるデータは、正式な学術誌に発表された論文ではないため、 科学的な信頼性はありません。

 甘酒は、あくまで嗜好品として楽しむべきでしょう。

ローヤルゼリー

 ローヤルゼリーは、働き蜂が体内で合成する白い液体を使った商品です。

 タンパク質、 ビタミン、ミネラルが豊富なため、昔から定番の健康食品として扱われてきました。

 一部では「長寿に効く」などと言われるほど評価が高く、海外では「ローマ教皇の病気が治った」といった噂まで流れ、サプリの売れ行きが急増したそうです。

 そして実際の効果については、まだこれといった研究は無いのが現状です。

 「完全に無意味」とは言い切れないものの、わざわざ高い金を出すほどの価値は感じられません。

 具体的に、いくつかの研究を見てみましょう。

 5人の男女に1日3gのローヤルゼリーを飲んでもらったところ、 6カ月で血糖値がやや改善。

 しかし心肺機能には変化がありませんでした。

 また5件のデータをまとめたところ、1日100~500mで 総コレステロール値が10%ほど低下することがわかった。

 以上の数字だけを見ると、つい「効果がありそうだな」と思われるかもしれません。

 しかし、これらのデータは、あくまで統計的に差が出ただけの話で、ローヤルゼリーによって期待できる変化は毎日1杯の緑茶を飲んだ場合と大差がありません。

 実は緑茶にも、コレステロール値の低下や血糖値の改善効果は認められているからです。

 また、これらの研究を受けて、 2010年にアメリカ食品医薬品局(FDA)は、ローヤルゼ リーを扱うサプリメーカーに対して、販売差し止めの措置を行いました。

 その理由はローヤルゼリーには多くの会社が宣伝しているような効果がなく、法律違反だというので す。

 現在、日本でローヤルゼリーのサブリを買うと、だいたい1カ月で5000円~6000円はかかり ます。

 それだったら、もっと簡単に手に入る緑茶を毎日飲んだほうが安上がりでしょう。

セサミン

 セサミンは、ゴマに含まれる健康成分です。

 高い抗酸化パワーを持つとされ、これを飲 むと血液がサラサラになったり、年を取っても活動的になれたりするとして、サントリー などが中高年に向けたアンチエイジング用のサプリを販売しています。

 しかし、大手メーカーが力を入れているわりに、いまのところセサミンの研究成果はか例えば、もっとも信頼度が高い論文として、2016年に行われた研究があります。

 1960年代~2015年の間に行われたすべてのセサミン研究から、質が高い10件のデ ータをまとめたものです。

 その結果、セサミンに総コレステロールや悪玉コレステロールの値を改善する作用は認められませんでした。

 血中の中性脂肪には多少の変化がありましたが、その数値は個人差 が大きすぎるため、とても実用的とはいえません。

 具体的には、リウマチの患者に1日200mを飲ませた実験では、6週間が過ぎても悪玉コレステロール値には変化がありませんでした。

 オーストラリアで行われた別の実験でも、肥満の男女に1日25gのゴマを食べ続けさせてみたものの、体内の酸化レベルや炎症への影響は認められませんでした。

 まだ「セサミンは無意味」と断言できるレベルではありませんが、とりあえずメーカーが宣伝するほどの効果がないのは確実です。

 そもそも、わざわざ高価なセサミンサプリを買うぐらいなら、普通にゴマを食べればいいのではないでしょうか。

グルコサミン/コンドロイチン

 テレビCMでおなじみのグルコサミンとコンドロイチンは、どちらも軟骨の成分をサプリにした商品です。

 これを飲むと軟骨が強化されて、結果として関節の痛みが減るといわ れます。

 中高年になると、ヒジやヒザの痛みを覚えるケースが増えるもの。

 サントリーや資生堂 といった企業からも商品が発売されていますが、果たしていかほどの実力があるのでしょ うか?

サプリで関節の痛みがやわらぐならありがたいですが、残念ながらそんな上手い話はあ りません。

 確かに、グルコサミンとコンドロイチンはどちらも関節の軟骨部に多く含まれる成分ですが、だからといって口から飲んだサプリが、そのまま軟骨になるわけではないからです。

 食事と同じように、グルコサミンとコンドロイチンもいったん消化器官で分解され、その後、体内に散らばってしまいます。

 実際、このサプリには批判も多く出ています。

 最近もっとも徹底的な批判をしたのは、2010年にスイス・ベルン大学が行った研究 でしょう。

 過去のグルコサミンとコンドロイチン研究から質が高い約4000人分のデータを調べ直したところ、「まったく効果はない」との結論が出てしまったのです。

 調査を行ったピーター・ジュニ教授は次のように言います。

 「プラシーボと比べて、グルコサミンとコンドロイチンには、関節の痛みを減らすことも、 関節の状態を改善する効果も認められなかった。 健康保険会社は、グルコサミンとコンド ロイチンを使った治療への資金提供をやめるべきだろう」

 一般的に、科学論文でここまで厳しい言葉が使われるケースは多くありません。

 まさに 完全否定と言っていいでしょう。

プラセンタ

 プラセンタは、おもにブタなどの胎盤から抽出した成分。

 体の治癒力を高めて、疲労、 アレルギー、シワ、肌荒れ、肝炎など、様々な症状に効くといわれています。

 芸能人にも愛好家が多く、若返りや発毛のために使っている俳優やタレントも少なくないようで、ほとんど万能薬のような扱いです。

 確かに「胎盤」といわれると神秘的なパワー がありそうな気もしますが、実際のところはどうなのでしょうか?

 結論から言えば、論文を調べてみると、プラセンタが効くという証拠はどこにもありません。

 というのも、プラセンタを健康や美容のために使っているのは日本と韓国がメイン で、世界的にはほとんど研究例がないからです。

 有名なのは韓国で行われた臨床テストで、プラセンタ注射を行った8人の女性を調べたところ、疲労と更年期障害が軽くなったとの結果が出ています。

 研究者によれば、「プ ラセンタに含まれる免疫性の物質が効いているのかもしれない」とのことですが、具体的 なメカニズムまではハッキリとわかっていません。

 ただし、これはあくまでプラセンタ注射の話。

 薬局などで手に入るプラセンタエキスの ように、口から体内に取り込む商品については、信頼できる研究はゼロに近いのが現状です。

 そもそも、プラセンタにどのような成分が入っているのかすら現時点ではハッキリしておらず、体内でどのような作用が起こるかもわかりません。

 実際、プラセンタについては、過去に副作用の例がいくつか報告されています。

 例えば 2009年には、若返りのためにプラセンタエキスを飲み続けていた20歳の女性に、 皮膚が硬くなる症状が発生 。

 健康のためにブタのプラセンタサプリを2年ほど摂り続け 52歳の女性も、1カ月にわたって肺炎が続く事態になったとのことです。

 要するにプラセンタエキスには、健康や若返りのために効くという証拠がほとんどないうえに、深刻な副作用を起こす可能性があります。

 更年期障害用のプラセンタ注射は別として、抽出エキスは決して気軽に飲むようなものではありません。

参考文献

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