名前と外見が決める成功の法則:心理学が明かす影響力「キラキラネームの功罪」

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 人は常に外見や名前によって、人物の印象を決めてしまう傾向があります。

 実際に、外見や名前が成功や結婚に大きな影響を与えるとされることがあります。

 例えば、魅力的に見える人は、就職において有利になる傾向があるという結果も出ています。

 また、名前に関しても、特定の音や文字の組み合わせが、印象や人気に影響を与えることが明らかになっています。

 本記事では、外見や名前が人生に与える影響を心理学的に解説し、その影響をどのように利用すればよいかを考えていきます。

名前は平凡が一番か?

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 1971年に、バーバラ・ブキャナンとジェイムズ・ブルーニングが、1000以上のファーストネームの中で人に好まれる名前を調査した。(1)

 すると、多くの人に好まれる名前は、マイケル、ジェイムズ、ウェンディの3名で、逆に嫌われる名前はアルフリーダ、パーシヴァル、イザドーラだった。

 たかが名前くらいで人生に重大な影響はないと思いたいが、どうやらそうも行かないようだ。

 1960年代末に、アメリカの研究者、アーサー・ハートマン、ロバート・ニコレイ、ジェシー・ハーリーらが、変わった名前の持ち主は、普通の名前の持ち主よりも、精神障害になることが多いかどうか調査した。(2)

 精神障害者の裁判記録を一万件以上調査したところ、非常に変わった名前の人が88人おり、彼らと同じ性別、年齢、出生地で、名前だけは普通という人たち88人を探し出して比較してみた。

 すると、普通の名前のグループに比べ、変わった名前のグループは精神異常者と診断されている人が多いのである。

 その研究論文には、「子どもの名前は、生まれたときに決められ、そのまま続くのが普通であり、その子が将来どんな人間になるかに影響をあたえる」とあった。

 さらに、学校の教師が好ましい名前の生徒の作文の方に良い成績をあたえることも明らかにした。(3)

 好ましくない名前の生徒は大学で、他者とのコミュニケーションがとれない経験をすることも多い事が分かっている。

 また他には名前が人生におよぼす影響を調べた研究者がいる。

 ニューヨーク州立大学バッファロー校のプレットペルハム教授の研究グループで、名前はその人がどこに住むか、どんな仕事につくか、誰と結婚するか、どの政党を支持するかなどにも影響をあたえるかもしれないという。(5)

 まず膨大なアメリカの人口調査の記録を調べたところ、フロリダ州には「フローレンス」、ジョージア州には「ジョージ」、ケンタッキー州には「ケネス」、ヴァージニア州には「ヴァージル」という名前の人が、通常より多く見られた。

 さらにペルハムらは、1823年~1965年までの15000件を超える結婚記録を調査した。(6)

 すると、面白いことに、姓のイニシャルが同じ人同士の結婚は、偶然というにはあまりに多い事が分かった。

 もちろん、民族によっては、特定の文字で始まる名前の人同士で結婚するのを好む場合もあるのでその可能性を排除するため、研究チームはアメリカ人に最も多い姓(スミス、ジョンソン、ウィリアムズ、ジョーンズ、ブラウン)に限って調査をやり直しても同じ傾向が表れたのである。

 スミスさんはジョーンズさんやウィリアムズさんと結婚するより、スミスさんと結婚することが多く、ジョーンズさんは、ブラウンさんやジョンソンさんよりも、ジョーンズさんに「はい、結婚します」と言う傾向があったのだ。

本当に高身長は成功するか?

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 現代社会では、身長が高いからといって物理的に得をすることは余りないが、今も背が高い人は成功しやすい傾向にあるようだ。

 心理学者のレズリー・マーテルとへンリー・ビラーは、大学生にいろいろな身長の男性たちを評価させた。

 その結果は、著書「身長と汚名(Stature and Stigma)」で報告されている。

 それによれば男女とも、身長165cm以下の男性に対して「積極性・安定性・男らしさ・出世力・才能」が共に低いと評価する傾向にあった。

 またリヴァプール大学のダンバー教授の研究グループは、1983年~1989年の間に健康診断を受けた健康なポーランド人男性4000人以上のデータを調べた。(7)

 すると、子をもたない男性は、子もちの男性よりも約3cm身長が低いことが明らかになったのである。

 ただし、これは1930年代生まれの男性たちには当てはまらなかった。

 それは、第二次世界大戦終了直後で独身男性が少なかったため、女性側にあまり選択の余地がなかったせいではないかと、ダンバーは推察するが、結婚相手の獲得と身長との関連は万国共通に見られる傾向だ。

 また1940年代に心理学者が研究したところによると、背が高いセールスマンは、背が低い同僚よりも成績がよかったのだ。

 1980年のある調査で、アメリカのフォーチュン500にランクインしている優良企業の最高経営責任者は、半数以上が身長183cm以上だった事も分かっている。

 フロリダ大学経営学教授のティモシー・ジャッジとダニエル・ケイブルが、4つの大きな研究から得られたデータを分析した。

 それは人びとの生涯を長く追跡した研究で「人柄、身長、知性、収入」などが注意深く観察されていた。

 ジャッジが身長と収入の関係に注目したところ、身長が1インチ高くなるごとに、年収が787ドル高くなった。

 つまり、身長が173cmの人は身長165cmの同僚よりも年に4734ドル多く稼ぎ、30年間で、数十万ドル多く稼いでいた。

 同様に、政治家を調査した研究では、アメリカの大統領のうち、平均身長より低い人は5人しかいないことが分かっている。

 最後に平均身長より低い大統領が選出されてから、もう百年以上経つ。歴代のアメリカ大統領は殆どが、男性の平均身長よりも数cmも高いが、1896年に就任した第25代アメリカ大統領のウィリアム・マッキンリーは、身長が170cmにも関わらず、新聞に「リトル・ボーイ」と書かれていた。

髭はお好き?

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 私たちが他人をどう見るかは、奇妙な要素によってかなり左右されるが、それは身長だけに限らない。

 なぜなら昔の人間は今よりもっと毛深かったからだ。

 髭を生やすという行為は当人が気づかうちに、周りからの評価に影響を与えている。

 1973年に、心理学者のロバート・ペレグリーニは、髭によって人物評価がどのように変わるか調べていた。(8)

8人の若者が、この調査のために顔じゅうに生やした髭を剃ることに同意してくれた。

 ペレグリーニは、まず髭を剃るまえの姿を一人ずつ撮影し、次に下あごの髭と口髭を残した姿、口髭だけの姿、すっかり髭を剃り落とした姿を撮影していった。

 無作為に選んだ人びとに、写真の人物がどういう人に見えるか、評価してもらった。

 すると、髭の量の多さは、「男らしい、大人っぽい、できそう、自信がありそう、勇ましい」などという評価につながった。

 ペルグリーニは、「きれいにひげを剃った男性の体内には、出してくれと叫んでいる髭がいるのかもしれない。そうだとすれば、この研究結一果でも明らかなように、ひげの要求を聞き入れてやるべきなのではないか?」と述べた。

 ところが最近の調査では西欧の一般人の50%以上が、きれいにひげを剃った男性のほうが、髭のある男性よりも正直だと感じている。

 どうやら髭は「悪魔のたくらみ、隠し事、不衛生」を連想させるようだ。

 実際、髭と「正直さ」と無関係だが、その固定観念は強く、世界全体に影響をあたえている。

 お金持ちや政治家が「長老」や「仙人」のような髭を生やさず、綺麗に剃っているのも、アメリカの大統領選挙で、1910年以来、あごひげや口ひげを生やした候補者が当選していないのも、こうした理由によるのかもしれない。

参考文献

(1)B. Buchanan & J. L. Bruning-‘Connotative meanings of first names and nicknames on three dimensions’, Journal of So- cial Psychology, 85, pages 143-4. 1971.

(2) A. A. Hartman, R. C. Nicolay & J. Hurley – ‘Unique personal names as a social adjustment factor’, Journal of Social Psy- chology, 75, pages 107-10. 1968. Heldref Publications.

(3) H. Harari & J. W. McDavid-‘Name stereotypes and teachers’ expectations’, Journal of Educational Psychology, 65, pages 222-5. 1973.

(4) R. L. Zweigenhaft-The other side of unusual names’ Journal of Social Psychology, 103, pages 291-302. Heldref Pub- lications 1977.

(5) BW. Peham, M. C. Mirenberg & J. K. Jones-Why Susie sells seashells by the seashore: Implicit egotism and major life decisions’, Journal of Personality and Social Psychology, 82, pages 469-87. 2002.

(6) J.T. Jones, B. W. Pelham, M Carvallo & M. C. Mirenberg-‘How do I love thee? Let me count the Js: Implicit egotism interpersonal attraction’, Journal of Personality and Social Psychology, 87 (5), pages 655-83.2004.

(7) B. Pawlowski, R. I. Dunbar &A. Lipowicz -Tall men have more reproductive success’, Nature, 403 (6766), page 156. 2000.

(8) R. J. Pellegrini ‘Impressions of the male personality as a function of beardedness’. Psychology, 10, pages 29-33. 1973.

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