交渉前に理解すべき心理学:効果的な営業戦略とは?

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営業マンが交渉を行う際には、相手の心理を正しく理解することが非常に重要です。

交渉においては、相手の欲求やニーズ、価値観、心理的状態などを把握し、それに応じたアプローチが求められます。

さらに、相手の発言や行動によって示される意図や感情に注意を払い、それに応じた対応を行うことも重要です。

デキる営業マンは、こうした相手の心理的側面にも目を向け、交渉の成功につなげるために努めます。

想像しやすさが重要

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人に何かを売る際には、いかにして顧客にその商品を使っている場面を想像させられるかで成否が分かれます。

 心理学の研究では「単にその商品を使っている場面を想像するのが簡単なのか難しいのか」で顧客の判断に影響を与える事が分かっています。

 顧客にレストランでの食事や休暇旅行を楽しんでいる場面を思い描くように促すだけで、その想像が簡単な場合には、実際に行きたいと思う気持ちを強められることが明らかになっています。

 ただし、消費者がその商品について、本当に何も知らない場合にはあまり効果が無いので注意して下さい。

 想像するのが難しい商品についてのデメリットも分かっています。

 別の心理学の研究では「新しい車を買う際にBMWとベンツだと、BMWが選ばれる理由は沢山ありますが、あなたはその理由を10個挙げられますか?」という質問をしました。

 すると「理由を1個だけ挙げてください」と言われたグループよりも「理由を10個挙げてください」と言われたグループの方が、BMWに対して低い評価をしました。

 その理由は明確で、普通なら10個も挙げられないからです。

 最初は順調に想像する事ができますが、後半になると想像しにくくなるので、自分の考えついた理由の数を判断基準にするより、理由を考えるのが簡単か難しいのかで判断してしまうようになってしまいます。

 人によっては、この傾向を逆手にとって、顧客に競合他社の商品やサービスを好む理由を沢山考えさせて、答えられる数が少なくなるほど、相対的にこちらの品物やサービス、提案の方が良く見るようしむける事が出来ます。

言葉より権威の方が役に立つ

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説得の目的は、相手の態度・決定・行動を変えさせることです。

 そして研究者達が長年伝統的に注目してきたのは、メッセージの明両さ、構造、論理性と言った要素でした。

 確かにメッセージの内容を受けてに理解される事が、説得の第一歩なのは間違いありません。

 しかし、最近の脳映像の研究からは、あるメッセージに対して専門家(権威)の言葉を引用する、つまり権威を見せる事が説得に大きく貢献する事が分かりました。

 実験では参加者に馴れない金融関連の選択を何度か行わせ、その際にいくつかの設問には、専門家による助言を付けました。

 専門家の助言が利用できる場合、参加者の選択はその助言から非常に影響を受け、脳画像をみると反論や批判的な思考を行う際に活性化する領域が、反応を示しませんでした。

 消費者は自分の考えに自信が無い状況(大抵の消費者に当てはまる)では、専門家の意見は他の全ての要素を投げ捨てて優先してしまいます。

  これは所謂「混乱法」と呼ばれるもので、人は判断に迷う状況では、考えるのが面倒になり、差し出された答えに賛同しやすくなります。

 特に自分の知識が不足している場合ほど、専門家からの意見に流されやすく、知識よりも安定を求めるのです。

 この研究からは、人が反論を行う力を手放してまで専門家(権威)の助言にしたがう事が多い以上、自分が説得する側なら、どのような専門知識を有しているのかを早い段階で知らせる方が得だと言うことが分かりますね。

 昨今の現代社会においても、未だに肩書などといった古典的なものが世の中で効力を発揮するのは、それなりに意味があるのです。

説得を後押しする理由づけ

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多くの人が勘違いをしているのは、説得を後押しする際の理由づけを適当にするところです。

 例えば、ある家庭があるとしましょう。

 子どもに「すぐ食卓に着きなさい」「早く寝なさい」とただ言いつけるだけでは、子どもが従う事はありません。

 昔から言われていると思いますが、ただ自分の主張のごり押しでは意味が無いのです。

 お顧客に会合の予定を入れてもらう、また同僚に新プロジェクトへの協力を依頼するといった時には、当たり前ですが必ず理由付けが必要です。

 「他の人たちも依頼の理由を知っているはずだ」と考えるのは、単なる思い込みに過ぎないことが良くあります。

 また、理由を付ければなんでも説得できるという誤解に繋がる研究がありました、それはコピー機の実験です。

 コピー機を使おうとしている人に向かって単純に「すみまんせ、五枚だけ先にコピーしてもとらせください」と頼む状況を設定しました。

 単刀直入にお願いした場合では60%の人が承諾しましたが、お願いの後に理由(とていも急いでいる等)を付けると、94%もの人が承認してくれました。

 しかも、理由が「コピー機を使ってもいいですか?コピーを取りたいので」という、理由になっているのか微妙だとしても、93%の人が順番を譲ってくれました。

 そこから、何か説得したい時には「とりあえず適当な理由を繕えばいいや」みたいな考えが生まれてしまう可能性がありました。

 ところが、この実験には続きがあり「コピーする用紙が5枚」までは有効でしたが、「コピーする用紙が20枚」になると、直接的な申し出や意味の分からない理由付けでは承諾率が上がりませんでした。

 唯一、承諾率が変わらないのは「急いでいるので」のような正当理由があった場合に限りました。

 つまり、説得の内容が大きくなると理由もそれに付随して、納得のできるモノにしなければならないという、一見当たり前の事ですが意外とおろそかにされる事が分かりました。

終わりに

 意外な事から、当たり前のことまで、説得において重要なのは新しいテクニックにばかり目が行き過ぎて基礎的な部分が疎かにならない事です。

参考文献

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