カルト教祖に学ぶ:影響力を高める心理学テクニック7選

 カルト教団は、多くの場合、独自の信仰体系や思想を持ち、指導者や教祖によって統制された組織です。

教祖たちは、多くの場合、自らの教えや信仰を広めるために、心理学的なテクニックを用いて信者たちを惹きつけます。

 これらのテクニックは、彼らがカリスマ的な指導者としての地位を確立し、信仰を深めるために不可欠なものです。

 カルト教団の教祖になるための心理学的なテクニックには、信者たちに共感を与え、自分たちとのつながりを強化するためのもの、その教団の教えや信仰体系を確立するためのもの、そして、自己啓発や成長のためのものなどがあります。

 これらのテクニックを熟知し、巧みに使いこなすことが、カルト教団の教祖になるための重要なスキルとなります。

 本記事では、万が一にも怪しい宗教団体に絡まれた場合に備えて、知識としてそのテクニックの全般を紹介したいと思います。

カルト教団はどう作られる?

 1979年11月18日

 当時、南米の小国ガイアナについて知っている人は少なかった。

 ジム・ジョーンズ 師が、このガイアナのジャングルに信者たちの理想郷を建設していたことを知っている人は、サンフランシスコ 湾岸地域を除けば、さらに少なかった。

 しかしその日、914人の人民寺院 (People’s Temple) の信者が集団自殺を決行した。

 青酸と鎮静剤が入ったフルーツパンチの樽が用意され、ジョーンズは「われわれはまもなくCIAに攻撃される、 それならば革命に殉じたほうがよい」、そう言って信者たちにフルーツパンチを飲むように 命じた。

 まず信者は子どもたちにそれを飲ませ、次に自分たちもそれを口に運んだ。

 このような一見すると不可解なカルト信者の行動は、非常に興味深い側面を持っている。

 例えば文鮮明の世界平和統一家庭連合(旧統一協会 )の信者は定期的に合同結婚式を挙げる。

 結婚相手は教祖の文鮮明と幹部によって無作為に選ばれ、信者はそれまで会ったこともない相手と結婚させられるのである。

 またデイビッド・バーグの神の子教会 (Children of God) の信者は、全財産を喜んで教会に寄付する。

 だから神の子教会共同体の裏庭には、主に若い信者たちがバーグ師に提供した自動車、バス、ジープ、オートバイでいっぱいである。

 スワミ・ラジニーシに従う人びとは、全財産を彼に捧 げて、彼が自分専用の18台のロールス・ロイスを所有するようになっても、善良な笑みを浮かべている。

ハル マゲドン教会 (The Church of Armageddon) のある信者は、自分は純化されたので空を飛べるはずだと信じ込み、木の上からジャンプして墜落死した。

 さらに別の信者は、車座になって手をつなぎ、肉体がどのくらい の電流に耐えられるかを調べるために電気装置に自らを接続した。

 なぜなら、「すべての物質は神がお創り になった」と信じているからである。

 多くの人びとは、信者たちが「洗脳」されていると主張する。

 それ以来、 洗脳という言葉はかなり拡大解釈して使われ、謎めいた意味が伴うようになった。

 そしてこの言葉は、不可思 議で、実際上まず抵抗できない説得術を意味するようになった。

 テレビや映画では、洗脳の犠牲者たちがまるで催眠状態にあるかのように描写される。

 しかし、これは非常に誤解を招く表現である。

 カルトは心理的な技術を馴染みの深いやり方ではなく、組織的かつ徹底 して行うだけである。

 結末が劇的で悲惨であるからといって、手段までが謎めいているというわけではない。

あなた独自の社会的真実を作りなさい

 まずカルト創設の第一歩は、教団本部が与える以外の情報をすべて排除して、あなた自身の社会的真実を構築する ことである。

 そのためには、カルト教団の本部は外部から隔離しなければならない。

 たとえば、オレゴンの農場、人里離れた郊外の家やガイアナのジャングルなどだ。

・信者の手紙は検閲する必要がある。

・家族の信者訪問は禁止する。

 「信者」と「未救済者」との間に厳しい境界を設け、それを維持することが必要である。

 このような 検閲は肉体的に行う場合もある。

 すなわち、部外者を強制的に排除し、言うことを聞かない者を力ずくで押さえつける。

 しかし、「カルトでないもの」は「悪魔のものである」とみなす方向に、信者が自己検閲するように教えるほうが実用的である。

 社会的真実構築のための第二段階では、信者たちにカルト的世界観を与える。

 この世界観によって、信者たち はすべての出来事を解釈する。

 ジム・ジョーンズは、「核戦争の脅威が常に存在し、世界は人種差別主義者で溢れている」と教えた。

 この邪悪な世界に生きるためには、人は死ぬ覚悟をしなければならない。

 邪悪な世 界によるこの寺院への攻撃は避けられないので、それに備えて信者たちは自殺の練習を繰り返した。

 旧統一教会は、原理講論 (Devine Principle) を教える。

 それは、金銭的な犠牲 (罰金)と新しい救世主 (文鮮明)の出現を 通して人間愛を神の恩寵に戻さなければならないという教義である。

 そのため信者は、教会への奉仕活動を通し て罪を償い、指導者の言葉を真実であるとして受け入れる。

 信者の間ではモーゼとして知られているデイビッド・バーグは、神の子教会の社会的真実を作り上げるために、「モーゼの手紙」を使う。

 これらの手紙は神からの啓示とされ、世界の出来事の解釈の仕方だけでなく、教団の理論体系も記されている。

 たとえば、「彼らが法を超越した特別な存在である、この世の中は腐敗しているので教会のための嘘や盗みは許される、バーグとの性行為は望ましいものである」などと教えている。

 カルトの威力を実感するには、ほんの少しの間、彼らの信仰に浸ってみるとよいだろう。

 信者になったつもり その世界を見てみよう。

 一風変わった方法で、おそらく生まれて初めてその世界が理解できるだろう。

 社会的真実の構築に便利な方法の一つは、独自の言語と専門用語を創作することである。

 神の光教会 (Divine Light Mission) の信者は、礼拝を「サーツァン」とか 「ダルシャン」 と呼んでいるし、統一教会は救われていない人に対して嘘をつくことを「天の欺瞞」といっている。

 サイエントロジー教会 (Scientology) は、 悪行から生じた「エングラム」・「シータン」 の存在を脅かしていると教える。

 良い言葉は、物事を「正しく」動かすのに役立つ。

 「ブルジョワ 的精神」・「クリシュナ神の意識」・「世俗の」・「神の導きのなかに」などといった決まり文句の山を教え込まれることによって、どんな出来事も即座に善か悪かに振り分けるようになり、批評する精神をなくしてしまうのである。

 自分の社会的真実を教えるとき、心にとどめておくべきことがもう一つある。

 それは、メッセージを何度も何度も繰り返すことである。

 繰り返しによって親しみが生まれ、何度も繰り返して聞いているうちに、嘘も真実のように思えてくる。

グランファルーン(意味のない連帯)を作りなさい

グランファルーン(意味のない連帯)法を使うには、信者から成る内集団と、救済されていない人びとから成る外集団が必要であ る。

この方法によって、あなたは信者たちに対していつも次のことを思い出させて、彼らを支配することができる。

「もし選ばれたければ、選ばれた人のように行動しなければならない。あなたが選ばれないのは、あなたが 罪深く、救済されていないからだ。もし救われたいなら、教えどおりに行動しなさい」

ハルマゲドン教会の長であるラブ・イスラエル師は、自分が「王」で、「神と信者とを結びつけるキリストの 仲介者」だと教えている。

「自分の狭量な心で物事を見てはいけない。大きな心、つまり家族の心で物事を考えなさい。われわれが、あなたの心なのだから」と信者に説く。

ラブ・イスラエルは、グランファルーン法をよく理解している。

信者から成る内集団を確立するのに必須の要素は、社会的アイデンティティ、すなわち、「われわれ」が誰であるかというイメージを形成することである。

カルトに加入することは、他の世界からの離脱、新しいアイ デンティティの受容を意味する。

多くのカルトは、新しいアイデンティティの受容の「しるし」として、「洗礼」 やその他の入会儀式を受けることを信者に求める。

場合によっては、信者に新しい名前を与えることもある。

フィラデルフィ アを拠点とするMOVEという団体の信者のラストネームは全員が「アフリカ」となっており、ハルマゲドン教会の信者のラストネームは「イスラエル」である。

またハレー・クリシュナの信者は、特徴あるオレンジ色の僧服をまとい、特別な 菜食料理を食べる。

統一教会の信者は自分自身の衣服を持たず、信者の間で共有する。

服が汚れたときは洗濯に 出し、共同体から提供される別の服を着る。

こうして、「何を着るか」という個人のアイデンティティを示す基本的な指標は、集団のアイデンティティに属することになってしまうのである。

神の光教会の「サーツァン」 (satsang)、すなわち説教は、新しい信者が「プリーミ(信者)とは何か」という質問に答えることができるよう に構成されている。

神の教会 (Church of God) の信者は、聖書に出てくる名を新たに与えられる。

新しく入っ 信者は、毎朝、聖書の三節を暗記することになっているが、信者の結束を固めるために、1人でもこれができないと、他のすべての信者も朝食を食べ始めることができないという規則になっている。

新しい名前、特徴ある服装や特別な食事などの外面的な装いはすべて、自分は選ばれたのだという確信を信者に与える。

彼らにとってこの貴重な地位を保つために必要なのは、新しく見つけた生活のなかで成長すること、 そして従順であり続けることだけである。

グランファルーン法のもう一つの側面は、外集団に対する憎しみを作り出すことである。

神の子教会は、両親を憎むように信者に教える。

ある「モーゼの手紙」には、両親は邪悪であり本当の家族ではない、今ではわれわ れがあなたの家族なのだと書かれている。

統一教会は、終末を迎えたときに復活できるのは信者だけだと教え、ハルマゲドン教会は、「この世は邪悪である」と教える。

邪悪な外集団を作ることは、2つの面で好都合である。

1つは、信者たちに集団に 属していることを快適に感じさせること(「彼らのようではなくてよかった」)、2つ目は、集団から離れることを 恐れる気持ちを強めること(「彼らのようになりたくない」)である。

もし、グランファルーン法を正しく適用すれば、あなたは「外の」世界についての恐怖感を作り出し、幸福な 生活を送るための唯一の方法はカルトであると思わせることに成功するはずだ。

不協和の低減を用いてコミットメントを引き出しなさい

カルトは、信者のコミットメントを徐々に強めることで、服従をより確実なものにすることが可能になる。

カルトのメンバーは、最初は簡単な要求に応じるが、その要求は少しずつ難易度が高くなっていく。

ジ ム・ジョーンズはこの方法を使って、信者たちの絶大な信頼を獲得していった。

もし、最後の集団自殺 一連の出来事の一部とみなせば、信者を集団自殺に導いたものが少しは解明できるかもしれない。

では最初から始めよう。

ジム・ジョーンズは行動的な演説家であり説教師だった。

ジョーンズのようなカリスマ性のある指導者が、いかにして信者から金を集めたかを理解するのはたやすいことである。

平和と四海同胞を説くジョーンズの話に感動して信者がわずかな金額を寄付すると、ジョーンズは、次にはより多くの金額を要求してきた。

彼は、教会を支援するため献金を増やすように導いた。

また、ジョーンズはしばしば信者の忠誠心を試した無記名であるはずの「罪」の告白書に署名させたり、同性愛の感情を認めさせたり、常軌を逸した性行 動を行ったりしたのである。

彼はよく、「本当に献身しているなら、教会のためにどんなことでも喜んでする 「はずだ」と話していたという。

次にジョーンズは、信者に家を売却させ、収益を教会に寄進させた。

まもなく彼の命令で、何人もの信者が仕 事を辞め、家族や友人を残して新生活を始めるためにガイアナに移住した。

その土地で、彼らは熱心に働いたけでなく、彼らと異なる考えをもつ人びとから切り離された。

生粋の信者だけに囲まれて生活するようになったのである。

さらに、一連の出来事は続いた。 ジョーンズ は、信者のなかの数人の既婚女性と性的関係を結んだ。

彼女たちは、気が進まないながらもこれに従った。

ジョーンズは、彼女たちの子供の父親であると主張した。

結末への序章として、ジョーンズは、信者の忠誠心と従順さを試すテストを行った。

自殺儀式の予行演習である。

こうして一歩一歩、 ジョーンズに対するコミットメントは確実なものになっていった。

それぞれのステップそれ自体は、けっして前のステップから大きくかけ離れることはなかったのである。

最初のコミットメントの後、それから手を引くのはけっして気分がよいことではないため、最初のコミットメント の感覚を正当化するために、さらに多くのことを進んでするようになる。

その結果、際限なく高まる要求に対し、 さらにコミットしていく。

このようにして、不協和を解消し、コミットメントを守る人間だというイメージを 持しようとすることが強力な合理化の罠を作り出すのである。 カルトが用いる合理化の罠は、 これだけではない。

・罪深き人が教団に自分のもっている財産を差し出すことで罪悪感を軽減される。

・教祖との強要されたセックスによる当惑は、そのような自己犠牲的な「修行」が必要だと考えれば軽減される。

・自分の両親など外部の人に対する残酷さは、もっと残酷なことをする必要を知れば正当化される。

・すべてを捧げてしまうことの馬鹿さ加減は、神聖な目的に対する献身なのだと合理化すれば克服できる。

これらをすべてやってしまった信者が次のようなジレンマに直面することにも注意しておこう。

「私のしたことを教団の外部の人びとにどう説明したらよいのだろうか」。

それをするためには、 道理にかない、かつ一貫した正当化を行う必要があるが、それは容易なことではない。

そこで結局は、再び合理化の罠にはまってしまうのである。

教祖の信頼性と魅力を確立しなさい

ほとんどのカルトでは、教祖の経歴に関して、物語や伝説が信者から信者へ語りつがれている。

統一教会の伝記作家は、北朝鮮ピョンプクにおける文鮮明の誕生を、ベツレヘムにおけるキリストの誕生になぞらえている。

2人ともに、小さな名もない村で夜中に生まれた。

そして、宇宙が新しい段階に入ったことを示した。

文鮮明が 16歳のときにキリストが現れて、「あなたは、キリストの生まれ変わりとして、人類救済を完成させる人になるであろう」と言った。

神の光教会の伝説によると、マハラジャ・ジは子どもの頃、すでに偉大な霊的指導者であり、教師だった。

そして、インドの聖なる家族の長に任命された。

「マハラジャ・ジ師とは何者ですか」とい う質問には、「マハラジャ・ジ師は神です」と信者は答える。

神の子教会の指導者であるデイビッド・バーグは、母の胎内で恵みを受け たので、モーゼやジェレミー、エゼキエル、ダニエル、そして同名のデイビッドのように、多くの聖書の預言を実現させると伝えられた。

「モーゼと神の子の実話」というパンフレットには、デイビッド・バーグの力は絶大で、「あなたは、デイビッドの名前において、悪魔を怒鳴りつけることさえできます。そうすれば悪魔は退散するでしょう。 デイビッドの力に対抗できるだけの力は、この世に存在しないのです」と書かれている。

このような作り話の目的は何だろうか。

「神の息子」 や、 少なくとも神の使命を帯びていると信じられている 人に逆らうのは難しいことである。

正常な心をもった人なら誰でも、聖人と同一でありたい、聖人のようになり たいと願うものだろう。

未救済者を転向させるために信者を送り出しなさい

カルトに転向しない人たちに対して、信仰の正しさを証明することは、新しい信者を獲得するうえで非常に役 に立つ。

それと同じくらい重要なのは、信者は人に転向を勧めることを通して、自発的な説得を行っていることである。

信仰の正しさを証明するためには、信者は多くの異なった人に対して、カルトの 一員となることの素晴らしさを改めて述べる必要がある。

他人を説得しながら、信者はまた自らを説得する。

伝道活動は決意を強める。

信仰の説明をする信者は誰もがカルトに対する多くの否定的な反応や攻撃に直面するだろう。

自らの信念を防御しながら、信者たちは広範な攻撃を論する術を学ぶ。

それによって、反論に対する 免疫力を作り、カルトに対する信念を維持することになるのである。

信者達を「好ましくない」考え方から遠ざけなさい

ほとんどのカルトの教義は、真面目に受け取るにはばかばかしく、ましてそれを受け入れるのは容易なことで はない。

カルトの信者、とくに新しい信者は、自分の財産をすべてカルトに差し出すことの意味や、16時間交代で働いてその収益をすべて教祖にすことの意味など、 基本的な事柄に疑問をもったり反論しがちである。

それでは、カルトは、どのようにして信者が教義を検討したり、疑問をもったりするのを防ぐのだろうか。

神の子教団は、いくつかのテクニックを組み合わせて用いている。

まず第一に、新しい信者をけっして一人にせ ず、自分で考える余裕を与えないようにする。

聖書の内容が拡声器で絶え間なく放送され、訓練担当者が新しい 信者につきっきりで聖書とモーゼの手紙を読み続ける。トイレにまでついて行く。

新しい信者には、食べ物と水 と睡眠を制限する。空腹で、喉が渇いて、疲れている状態でものを考えるのは困難である。

有名なディプログラマーであるテッド・パトリックは、この教化を経験したことがある。

44時間の間、睡眠を禁じられた彼は、そ のときの様子を次のように語っている。

まず、狂おしいほど静寂が欲しかった。

たった五分間でいいから、心の平和とプライバシーが欲しかった。

それから、感覚が麻痺する。絶え間ない物音に慣れ始めるのだ。

また、疲れるにつれて、彼らの言っていることを本当に理解しようとするのをやめてしまう。

もはや、個々の言葉は聞こえず、がやがや言う音や金切り声が流れているように 聞こえてくる。

おそらくこの時点から洗脳計画が効果を発揮し出すのだろう。

疲労のあまり、意識の活動は停止し、 宣伝が無意識のなかに染み込み始める。

カルト教義に対する反論を封殺するには他の方法もある。

経を唱えることと歌うことにより、その経と歌以外を考えることが妨げられる。

神の光教団で行われているような瞑想では、信者は光が見え、音楽が聞こえ、美味 を感じ、存在を表わす根源的な震えが口をついて出てくるまで何時間も費やす。

これによって、瞑想者が他の世 間一般の事柄に関心を寄せるのを妨げるのである。

さらに、伝道活動、労働、他人のための掃除や料理のような活動を絶え間なく行うことで、注意深く考えたり、内省したりする機会をさらに制限する。

信者がいったんカルトを受け入れた後、教団側がやるべきことは、彼らがさらにカルトについて細かく調べようとしたり、入信する ことの利点について考えるのを妨ぐことである。

これは、どのような「疑念」も邪悪であり、悪魔からのもので あると教えればよいのだ。

たとえば、信者が教祖の命令を疑ったり、教義のある点に疑問をもち始めたりすると、「それは神に背くことだ」とか「悪魔のすることだ」と忠告され、非難される。

ハレー・クリシュナ教の信者は、性についての考えを排除するために、冷たいシャワーを浴びるように求められている。

こうして信者は、 自分の心をコントロールするようになる。

万一それに失敗した場合は、より強力な方法が必要になる。

たとえ ば、ジム・ジョーンズは、悪い考えを抱いた女性に、罰として彼女が嫌いな男性と人前でセックスをさせた。

そ れを見た信者たちも、「自らの思考を、あるいは少なくともその表現をコントロールしろ」というメッセージを 受け取るのである。

信者の視野を幻に集中させなさい

成功しているカルトの教祖たちは、約束の地の考えや、よりよい世界の姿を、忠実な信者の目の前に常にちらつかせる。

統一教会の信者たちは、「第2の降臨神」という教義に従い、それを遵守する。

この教えによって、 約の第3段階、すなわち終末期に完璧な復活を果たすことができるというわけである。

ジム・ジョーンズはサ ンフランシスコの貧しい人たちに、ジョーンズタウンという、一生懸命に働けば快適な生活(自分の家が持て よい学校や大学で学べ、泳いだり、釣りをしたり)ができる場所を提供した。

同様に、19世紀のオナイダ (Oneida) 共同村は、「地上天国」を建設するために努力した。

神の光教会の忠実な信者たちは、想の最中に光を見ることによって、より本物の信者になれるよう力を尽くす。

これは、マハラジャ・ジ師への献身と奉仕によって完成される。

ハレー・クリシュナの信者たちは、経を唱えることと踊ることが、人類が運命づけられた堕落と衰退を防ぐ一つの方法だと信じている。

ロン・ハバードのサイエントロジー教会では、信者たちが「クリア」な状態になるために努力している。

そのために信者は、高額な参加費を払ってサイエントロジーの講座に出席する熱心な信者は、数ヵ月で100万円から150万円も支払うことがある。

信者の目を未来の幻 (phantom) に釘づけにすることで、教団への奉仕を続けさせる強力な動機を与えることができる。

信者たちは、もし一時でも休んだら、彼らや世界が求める理想が失われるのではないかという恐怖感 から、働くのをやめようとしない。

平均的な統一教会の信者は、週におよそ六七時間働くのである。

また、新しい 信者たちのほとんどは、絶望状態に陥っている人びとである。

幻は、目的意識と使命感を信者に与えることに よって、人間の行動の強力な推進力となる希望を築き上げるのである。

以上、七つの方法を示すこと

もちろん 困っている人から人生やお金を奪う彼らを許してはならない。

しかし「洗脳」は、まやかしのように思われることがあるので、カルトの心理的な戦略を否定する人もいる。

その一方、心を支配するという彼らの能力に畏れと恐怖感を抱き、あらゆる種類の不思議な力をカルトによるものだとみなしてしまう人もいる。

だがカルトが使う説得術を議論することによって、秘密のいくつかを解き明かして、最終的にカルトの危険性を排除しようとする試みは非常に重要なものだと考えられる。

しかし、カルトの説得術を理解することにはもう一つの理由がある。

それは、カルトではなく、あなたが日常かかわっている家族、教会、国、あるいは職場などの社会集団でも使われている手法がいくつか存在するからだ。

ここまで読めたあなたは、そういった社会生活の多くの場面で、カル ト的な行為の匂いを嗅ぎつけることが出来るに違いない。

参考文献

・Examples and details are from Galanter, M. (1989). Cults: Faith, healing, and coercion. New York: Oxford University Press; Kanter, R. M. (1972).

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・Making sense of the nonsensical: An analysis of Jonestown. In E. Aronson (Ed.), Readings about the social animal (pp. 68-86).

・New York: W. H. Freeman; Patrick, T., & Dulack, T. (1976).

・Let our children go! New York: Ballantine; Schein, E. H. (1961).

・Coercive persuasion. New York: Norton; Stoner, C., & Parke, J. A. (1977).

・All God’s children. Radnor, PA: Chilton Book Co.; Weightman, J. M. (1983). Making sense of the Jonestown suicides. New York: Edwin Mellen.

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