昨今では、色々なBGMがお手軽に聞けるようになりましたね。ネットで作業用BGMと検索すれば多数の項目がヒットするでしょう。
ジャンルも様々で、穏やかな曲もあれば激しいアップテンポな曲もある。
そして、そんなBGMを日々の作業に取り入れて活動している人も多いでしょう。
今回は、その作業中に聴いている曲が及ぼす影響について紹介して行きたいと思います。
大半のBGMは認知力を減らす
作業の中でも、特に集中力を使うものにBGMは邪魔な存在として立ちはだかります。
2007年にグラスゴー・カレドニアン大学が行った実験があります(1)。
この実験では参加者がそれぞれ、「テンポの速いBGMが流れている部屋」「ゆったりしたBGMが流れている部屋」「環境音が流れている部屋」「無音の部屋」の4種類の部屋に分けられました。
この状態で5つの認知テストを行ったところ、BGMを使った部屋では全て成績が下がっていました。
理由としては、いわゆるマルチタスクが原因です。
目の前に集中しているのに、脳が曲のテンポなどを並行して理解しようとするので、より高い負荷が掛かってしまうのです。
ところが、自分の好きな音楽を聴くことはアドレナリンの分泌により、気持ちよく感じるので「何だか集中できる」と思い込んでいる状態になります。
マルチタスクは脳力を減らす
一応、マルチタスクについて触れたので超絶簡単に解説すると、マルチタスクとは「一度に複数の意識的作業をする」ことで、分かりやすく言えば「マラソンしながら小説を読む」ようなものです。
そしてマルチタスクと能率の悪さには、既に相関関係も見つかっています。しかし、人によっては「複雑な作業を並行してやっているワケがない」と、考えているかもしれませんね。
ところが、「スマホを見ながらご飯を食べたり、音楽を聴きながらゲームをしたり」する行為も立派なマルチタスクになります。
そう考えると、心当たりがいくつかあるのではないでしょうか?
スタンフォード大学の神経科学者、エヤル・オフィル博士はマルチタスクになるのは、タスクスイッチングを頻繁に繰り返しているのが原因だからとしています。
人間の脳がタスクを切り替えるのに0.1秒も掛かりません。
むしろこれのせいで、自分がマルチタスクをしている事に無頓着となっているのです。
元々脳は、一度に二つ以上の物事を処理できない上に、注意を色々な場所に向けているせいで効率が落ちてしまっています。(3)
ただし、マルチタスクには例外もある
もちろん、基本的にデメリットが多いマルチタスクですが、唯一の例外があり、それはミシガン大学のデビィット・マイヤー博士の発言から(4)「脳の同じ部位を使わない場合はマルチタスクをしても問題ない」という事です。
わかりやすく言えば、「米を研ぎながら音楽を聴いても」マルチタスクになりません。
さらに、掃除をしながらテレビのニュースを聴いても、マルチタスクにはなりません。
なぜなら、それは「習慣的に身についている動作」だからです。大体、掃除をする時は手順が決まっているので、あまり考えなくても機械的に行動することができます。
しかし、それでも、気を抜くとちょっとしたミスをしたりするので、やはりマルチタスクになるギリギリのラインではあります。
どういうBGMが良いのか
じゃあ結局のところ、BGMは駄目だから作業中は聴くな!と言いたいのか?と思われそうですね。
もちろん、できればそうして欲しいのですが、どうしても音楽を聴いていないと落ち着かないと思う人もいるかもしれません。
そんな人の為に、作業用のBGMとして最適な曲を紹介します。サセックス大学の研究では自然音のBGMを流すと逆に注意力が上がる可能性を示唆しています。(5)
また、ウェールズ大学の研究では、研究者の見解として作業開始の10分前に自分の好きな曲を聴くのはむしろ脳のドーパミンが分泌されるので、集中力をアップさせてくれると述べています。(6)
ここから分かるのは、どうしても音楽を聴きたい場合には、事前に好きな曲を聴いてから作業をするとむしろ集中力を高める事が可能という事です。
さらに、どうしても作業中に聴きたいのであれば自然音を聴くことで、注意力を上げてミスを少なくすることが出来る可能性もあるので、併せてBGMとして検討してみるのもいいでしょう。
終わりに
最初にも言いましたが、最近は色々なBGMが簡単に聴けます。
ただし、その有効性を高められるかは、それを聴く本人次第であるという事は変わらないようです。
参考文献
(1)https://journals.sagepub.com/doi/abs/10.1177/0305735607076444
https://journals.sagepub.com/doi/abs/10.1177/0305735610376261
・(2) Gigi Foster and Charlene M. Kalenkoski, “Measuring the Relative Productivity of Multitasking to Sole-tasking in Household Production: New Experimental Evidence,” IZA Discussion Paper Series no. 6763 (July 2012).
・(3) Eyal Ophir, Clifford Nass, and Anthony D. Wagner, “Cognitive Control in Media Multitaskers, ” Proceedings of the National Academy of Sciences 106, no. 37: 15583-15587.
・(4) Annie Murphy Paul, “The New Marshmallow Test: Resisting the Temptations of he Web.” The Hechinger Report (May 3, 2013). http://hechingerreport.org/the-new-marshmallow-test-resisting-the-temptations-of-the-web/
(5)
https://hatenablog-parts.com/embed?url=https%3A%2F%2Fwww.ncbi.nlm.nih.gov%2Fpubmed%2F28345604www.ncbi.nlm.nih.gov