日本では魚を刺身や寿司などとして楽しむ食文化がありますね。さて、魚と言えば豊富な栄養分が含まれており、頭が良くなるかもしれないと考えられています。
そこでこの記事では、「魚を食べると頭が本当に良くなるの?」や「魚はどのくらい食べて方がいいのか?」と考えている人に向けて科学的な視点から解説をしてきたいと思います。
天然魚と養殖魚はどちらが安全か?
天然魚と養殖の魚について調べた2014年の調査によれば、76種類の魚をチェックしたところ、以下のような結果になりました。
- 全体的には養殖魚のほうがオメガ3が多い傾向にあった
- ただしオメガ3の量には差が大きく、魚100グラムあたり717〜1,533 mgの違いがあった
- もっとも、養殖魚のほうが飽和脂肪酸は多かった
実際に調べてみたら養殖魚のほうがオメガ3は多かったのです。
とはいえ、2014年のオーストラリア研究で以下のような結果も出ています。
- 養殖魚のオメガ3は、エサによってふくまれる量が激しく変わる
- 養殖魚のオメガ3とオメガ6のバランスは、5:1〜1:1までさまざまだった
養殖魚の育てられ方によっては、激しくオメガ3が少ないケースもあるようですね。
さらに養殖魚の汚染についてもキレイな水で育った天然魚を食べた方が、有害な物質が体に溜まらないのではないか?という意見がありますね。
参考になるのが、2014年にベルゲン大学が行った実験で42名の外来患者に養殖のサーモンを食べてもらいました。
30週間後の結果は、以下のようになりました。
- 血液中の汚染物質の量には変化なし
- 脂肪組織にも汚染物質は溜まっていない
どうやら養殖魚を食べたところで、たいした影響はないようです。
これについて研究者は、『確かに養殖魚には有害物質が含まれるが、その量は他の食品(穀類とか)と差がないので、コスメとかデオドラントに入ってる成分を気にするほうが先決である』
2002年の論文では、実際は天然魚のほうが隔離されてないがために、むしろ化合物の量が多いって結果も出ています。
また重金属に関しても、「別に天然魚も養殖魚も水銀の量は変わらない」というデータもあります。
魚は体を若返らせるには1週間に200g食べればいい
「体に良い魚とかあるのか?」という疑問について、アメリカ心臓協会がガイドラインを出しております。
過去の「魚と心疾患」に関するデータを調べた上で、「魚の摂取量ガイドライン」を発表しました。
まず結論は以下のようになっています。
- 青魚を1週間に200g食べれば問題なし
200gというと週にサバ缶を1個食べれば十分な計算です。
それについて研究者は、『最後のガイドラインを出してから大量のリサーチと科学的な研究が行われ、ついに新たなアドバイスをアナウンスする必要が出てきた。魚介類は心臓病の予防だけでなく、脳卒中、突然死、心不全などにも効果がある。』
ちなみにどんな魚がオススメは以下のようになっています。
- サーモン
- サバ
- マス
- ニシン
- イワシ
- タラ
これらを刺身か焼き魚でいただけば良いそうです。こちらもよく知っている魚ばかりですね。
さらに研究者いわく、『ここ数十年の研究により、オメガ3は細胞同士の連絡にも欠かせない役割を持つことがわかってきた。オメガ3は細胞膜の内側に入り込み、細胞の内と外に大事なシグナルを送る。細胞のコミュニケーションは、心臓の働きによって非常に重要なポイントだ。』
これは要するに、体内に毒素が入ってきた場合に、細胞がどう反応するかをオメガ3が仕切ってるようなイメージです。
ただし、ここでひとつだけ大事なポイントは、以下のようになっています。
- 魚のフライはNG
揚げた魚を週一のペースで食べた場合は、心疾患の発症率が50%もはね上がるそうです。
魚をフライで食べると不健康になる
ケンブリッジ大学から出た論文では、『いくつかの観察研究を調べると、魚の消費量と糖尿病の発症リスクには大きな食い違いがあり、決定的な答えが出せない。メタ分析をチェックしても、魚の効果には大きな差がみられる。』
つまり必ずしも魚さえ食べれば健康になるわけではなく、人によっては糖尿病の発症リスクが22%アップするケースもあったそうです。
この違いがどこから出たのかというと、『これは地域的な差によるところが大きい。アジアでは「魚を食べたほうが健康になる」とのデータが多いが、ヨーロッパでは健康効果は消え、さらにアメリカでは逆に魚を食べるほど発病リスクが高まるのだ。』
どうやら魚の健康効果には地域差があるらしいく、日本人は魚を生で食べたりしますが、アメリカ人はフライ調理がメインです。
ケンブリッジ大の研究者も同じことを考えまして、35,583人のスウェーデン人男性を15年にわたって魚の消費量と糖尿病の関係を調べました。
そして以下のような結果になりました。
- 全体の魚の消費量は糖尿病の発症リスクとは関係がない
- 月に6回ほど揚げ物の魚を食べた場合は、月1回以下の人にくらべて糖尿病リスクが16%アップする
その原因は肉の揚げ物と同じで、以下のような問題を抱えていました。
- AGEsが増える
- 高温で健康な脂肪が減る
- DNAに損傷を起こす物質が増える
- 揚げた際に魚のビタミンが流れ出す
一応は2006年論文で、焼き魚でも健康効果が確認されています。
魚を焼くならオリーブオイルを使うべき
バスク大学の実験で、料理の熱で油がどう変化するかを調べたもので、エクストラヴァージンオリーブオイル・サンフラワー油の2種類を170℃に加熱したうえでタイとスズキをフライパンとレンジ焼き、それを核磁気共鳴装置でチェックしました。
そして全体の脂質プロファイルがどうなったかを調べたところ以下のようなりました。
- オリーブオイルで焼いた魚は、脂質の酸化ダメージが非常に少なくてすむ
- サンフラワー油で焼いた魚は酸化が激しく、アルデヒドのような有害物質が生成された
サンフラワーのようなサラダ油は酸化に弱く、魚を焼くと有害物質まで生成されてしまうらしいです。
タラのプロテインで体脂肪は減るわ筋肉は増える
たとえば、2013年にベルゲン大学が太りぎみな男女34人を次の2グループに実験を行いました。
- タラから抽出したプロテインタブレットを1日3〜6g飲む
- ニセのタブレットを飲む
そのうえで8週間ほど普通に暮らしてもらったところ、以下のような結果になりました。
タラのプロテインを飲んだグループは
- 体脂肪が1.6%減!(プラシーボ群は0.2%減)
- 筋肉が0.8%増!(プラシーボ群は0.3%増)
- 食後の血糖値も低下
- インスリン抵抗性も改善
- 体内の炎症(CRO)が改善
- LDLコレステロールが低下
とくに運動やカロリー制限をしていないのに体脂肪が減り、さらには筋肉が増え、しかも糖と脂肪の代謝まで改善しました
また2009年のアイスランド大学実験では、肥満の男女126人を以下のように分けて実験を行いました。
- 150gのタラを週に5回食べる
- 150gのタラを週に3回食べる
- 特に食べない
そのうえで普段の食事からカロリーを3割減らしたところ、8週間後には、以下のような結果になりました。
タラをたくさん食べたグループほど
- 体重が減った(-5.9kg vs. -4.2kg)
- 体脂肪も減った(-4.0kg vs. -2.8kg)
- 血圧も改善
- 中性脂肪も改善
カロリー制限の割合は同じでも、魚を食べたほうが体重の減り方が速かったようです。
参考文献
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・Cladis, Dennis P et al. “Fatty acid profiles of commercially available finfish fillets in the United States.” Lipids vol. 49,10 (2014): 1005-18.
・Gump, Brooks B et al. “Fish consumption, low-level mercury, lipids, and inflammatory markers in children.” Environmental research vol. 112 (2012): 204-11.
・Parilli-Moser, Isabella et al. “Consumption of peanut products improves memory and stress response in healthy adults from the ARISTOTLE study: A 6-month randomized controlled trial.” Clinical nutrition (Edinburgh, Scotland) vol. 40,11 (2021): 5556-5567.
・Strobel, Claudia et al. “Survey of n-3 and n-6 polyunsaturated fatty acids in fish and fish products.” Lipids in health and disease vol. 11 144. 30 Oct. 2012.
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・https://www.ahajournals.org/doi/10.1161/CIR.0000000000000574