筆跡学(筆跡心理学)は全く根拠のない疑似科学だった?

 筆跡学、または筆跡心理学とは、人の性格や心理状態を筆跡から分析する学問です。

 筆跡を読み解くことで、人間の内面を知ることができるとされ、一部のマスメディアや個人的な相談業者によって広く普及されています。

 しかし、筆跡学には科学的な根拠がありません。多くの研究者や専門家たちが、筆跡学が疑似科学であることを指摘しています。

 本記事では、筆跡学の実態について、科学的な見地から解説していきます。

筆跡心理学は完全に根拠が無い

 筆跡心理学とは「文字の大きさで性格が分かる」というもので、フランスでは国家資格にまで昇格しており、ヨーロッパの一部では今も筆跡心理学を就職試験に使うところもあるそうです。

 日本で有名なのはどちらかと言えば「筆跡学」の方で、こちらも「文字の大きさ」や「トメ・ハネ」などで人の性格がわかると主張する学問の一派です。

 厄介なのは筆跡学を「心理学で実証された」と吹聴までしている団体がいることでしょう。

 しかし科学的な研究によって、人の書いた字を見ても相手の性格が理解できることはないです。

 というのも、筆跡心理学(筆跡学)については1990年代に正確な調査が行われ、既に「疑似科学」と判断されているからです。

 たとえば、代表的なのは1992年にクワントレン工科大学が出したレビュー論文で、約200件の筆跡学のデータをまとめて上で効果量を出したところ、筆跡心理学(筆跡学)の効果量は「0%」でした

 つまり、その人の文字を見ても性格を判断するには全く役立たないという意味です。

 例え、丁寧な文字を書いても「重罪犯」の可能性があるし、綺麗な字が書けても「部屋は汚い」かもしれないので、人間の性格は文字には反映されないという結論になっています。

 またこの論文では「筆跡心理学(筆跡学)で性格がわかる」との結論を出したデータに関して言及もしており研究者曰く、筆跡学に関する多くの研究は実験のデザイン(方法)がお粗末な上に筆跡学の学者自身が金銭を払って科学ジャーナル(科学雑誌)に掲載を頼んでいたというケースすらも見つかったと指摘してます。

 さらに、もう1つの信頼性が高いデータとして1982年にテレサ・アマビール博士が200本のデータをメタ分析を行ったものが挙げられます。

 このメタ分析でも結果は、筆跡学ではどのような性格テストの結果も予想できなかったそうです。

 そしてこの論文は400超の文献に引用されました。

 21世紀の現在は筆跡心理学(筆跡学)をまともに受けとめる学者はゼロに等しく、真に受けないことが重要です。(未だ筆跡学を信奉している人が一部いるようで)

 また筆跡による性格判断結果は素人の判断とほぼ同じ何のも関わらず、イギリスおよびアメリカでは5%〜10%の会社が筆跡分析を採用目安の1つにしている場合もあるそです。

 これについて心理学者のジェフリー・ディーンは筆跡学に関する数百種類の研究論文を集め、長期にわたって古くから伝わる鑑定法の有効性について調べました。

 まずディーンは採用試験で使われた筆跡分析に関する16種類の論文に目を通し、それぞれの結果をたしかめるために、応募者について筆跡専門家が下した結果と、実際の試用期間中に上司が下した評価と照合しました。

 すると「筆跡による評価」は、「当人の実務能力とほとんど関係ない」ことが分かりました。

 筆跡専門家の判断は、対照グループ(素人)の判断と同じ程度の的中率だったのです。

 さらにディーンは筆跡専門家による性格判断と、科学的なテストによる性格判断を比較した研究結果についても調べました。

 専門誌の記事(53種類)を集めて精査したところ、やはり筆跡専門家の判断は正確さに欠け、筆跡分析の知識がまったくない対照グループ(素人)の判断結果と同じレベルでした。

 人の性格を筆跡で判断するのは、間違いのもとになりかねません。

 一般的な筆跡学の主張とは裏腹に、精度の高い研究結果では既に筆跡分析が人の性格を正確に測れないと証明されているので、採用試験でも応募者の能力を予測する手がかりには出来なさそうですね。

参考文献

・B. L. Beyerstein (2007). ‘Graphology-A Total Write-Off’ in S. D. Sala (ed.), Tall Tales About the Mind and Brain: Separating Fact From Fiction, Oxford: Oxford University Press, pages 233-270.

・Dean, G. A. (1992). The bottom line: Effect size. In B. L. Beyerstein & D. F. Beyerstein (Eds.), The write stuff: Evaluations of graphology, the study of handwriting analysis (pp. 269–341). Prometheus Books.

最新情報をチェックしよう!