
香川県でゲームの使用に関して条例が出て久しいですが、昨今、広い世代にゲームが普及しEスポーツなども盛り上がりを見せています。その反面、ゲーム依存による悪影響も懸念されており、各国が対応せざる負えない事態になってきています。
そこで記事では、「ゲームの悪影響は本当か?」や「ゲームにもメリットがあるのではないか?」と考えている人に向けて科学的な知見から紹介をしたいと思います。
暴力的な映画やゲームで性格が悪くなるはウソ

「暴力的な映画とかゲームをやると暴力的になるのか?」という疑問は昔からありましたが、ステッソン大学の研究では、1998年〜2008年の間に出た「映画やゲームと暴力性」に関する25件の研究を精査したメタ分析になってまして、科学的な信頼性はかなり高いです。
研究者によれば、確かに「暴力ゲームで攻撃的になる!」ってデータは結構あるものの、どうも過去の論文にはいろんな欠点があったらしい。
具体的な内容は以下の通りです。
- 昔の研究は「攻撃性」の定義が広すぎで、特に1990年代初期の研究は、イライラが増えたぐらいの変化でも「攻撃性が上がった」と考えられたため、自然と暴力ゲームの悪影響が高くなりがちでした。
- 「攻撃性が上がった」という論文のほうが多く発表されがちで、科学者も人間なので、センセーショナルな結論が出た論文ほど発表数は多くなる傾向があるようです。正しい結論を出すには、この傾向も調整してやる必要があるそうです。
実際のところ、「暴力的な映画やゲームで攻撃的が上がった」って内容の論文は、ほぼアイオワ州立大学のクレイグ・アンダーソン博士から出してまして、それはフェアなの?と思う部分であります。
では、ステッソン大学の結論は以下のようになりました。
- 暴力的な映画やゲームが攻撃性にあたえる影響は、全体的にみるとたったの0.64%
- 実際に他人へ暴力をふるうぐらいのレベルになると、さらに影響度は0.04%まで下がる
ほぼ無視してもいいレベルですね。
これについて研究者は、『この研究の結果によれば、メディアの暴力的な映像が攻撃的な行動を引き起こすとの結論は支持できない。メディアの暴力映像が深刻な社会問題を起こしているという結論を出すこともできない。』
そもそもヒトの攻撃性をもっとも左右するのは遺伝で、次が環境、3番目が経済状況だそうです。
ちなみに研究者の試算は以下のようになりました。
- 多めに見積もっても、暴力的な映像が社会におよぼす悪影響はタバコの8分の1しかない
- より正確性が高い数値を使った場合は、暴力的な映像が社会におよぼす悪影響はタバコの135分の1しかない
暴力ゲームはプレイヤーを攻撃的にさせる?

「暴力的な映像を見ると、暴力的な人間になるの?」ということをミシガン大学の研究で、過去に行われた「暴力ゲームと攻撃性」に関する実験から質が高い24件を選んでまとめて結論を出しました。
たとえば「ポスタル」とか「GTA」をやったら本当に他人に暴力をふるうような人間になるのか?ってところを調べています。
今回のほうが最新のデータを使ってて被験者も多いです(2010 〜 2017年)。また「攻撃性」の定義を「肉体への暴力は増えるか?」に限定しています。
今回の研究では、暴力的なテレビゲームが肉体的な攻撃性を増加させることはあきらかだ。
いっぽうでデータでは暴力ゲームで攻撃性が増す効果量は0.08と出ています。
あまりにも数字が小さいので、暴力ゲームの悪影響は現実的には言うと、ほとんど無視していいと言えます。
これについて研究チームは『伝統的な数値の見方からすれば、これは大きな効果ではなく、非常に小さい。しかし統計的に有意なのは間違いがなく、決して偶然ではなく、結果は一貫している。』
アクションゲームで学習能力がアップ?

プリンストン大学の論文でして、普段はゲームをやらない20人の被験者を半分にわけ、一方には「Call of Duty2」や「Unreal Tournament 2004」といったアクションゲームを、残りには「ザ・シムズ 4」のようなシミュレーションゲームをプレイしてもらいました。
実験は9週間ほど続きまして、プレイ時間はおよそ50時間で、その後に被験者たちに知覚学習テストをやってもらったところ、アクションゲームをプレイしたほうが学習能力が上がっていました。さらに、1年後に再検査をしても、この効果は続いていたらしい。
これについて研究者は、『人間の予測能力を高めるために、わたしたちの脳は、絶えず外の世界のモデルやテンプレートを作っている。テンプレートの精度が上がるほど、わたしたちは上手く行動することができる。アクションゲームには、より良いテンプレートを作る能力を育てる効果があるのだろう。』
通常、アクションゲームが上手くなるには、予期せぬ出来事にすばやく対応しつつ、ゲームの世界観を頭のなかで組み立てていく必要があるわけですが、この能力が、現実世界を生き抜くためのシミュレーションにもなっているようですね。
ちなみに、アクションゲームで学習能力を高めるには、週に5時間のプレイだけで十分とのこと。
決してゲームをやるほど頭が良くなるってわけじゃないので、ご注意ください。
テレビゲームのせいで太る?

ヴュルツブルク大学の論文で、過去のテレビゲーム研究から優良な20件を抜き出し、38,097人分のデータを「テレビゲームばっかやってると太るのか?」について調べたメタ分析です。
その結果をざっとながめてみると、
- ゲームをやってる時間の多さは、肥満になる理由の1%も説明できない!(つまりゲームと肥満は関係ない)
- ただし、ゲームと肥満がほぼ無関係なのは10代までで、そこを過ぎるとちょっと関係する
基本的にゲームは肥満の理由にならないが、大人はちょっと注意したほうがいいかも?みたいな話になています。
大人はゲームで悪影響が出るのかは不明なんですけど、研究チームは「ゲーム好きは子供時代からずっとプレイを続ける傾向が強いので、運動不足の量が溜まっていくのでは」と推測しています。
事実、このデータでは、ゲームをしてる大人ほど運動量が少ない傾向は確認されてるんで、結局は体を動かさないのが影響の可能性が濃厚ですね。
もっとも、この論文はあくまで座ったままプレイするゲームに限った話で、Oculus Questのエクササイズ系ゲームなら全く問題はなさそうです。
そもそも2015年のメタ分析なんかを見ても、「Wii Sportsみたいに体を動かすゲームは普通のアウトドア系エクササイズと変わらない健康効果がある」という結論でています。
「どうぶつの森」で幸福になれる?

これはオックスフォード大学の研究で、エレクトロニック・アーツと任天堂とコラボした珍しい内容になっており、両社から「プラント vs. ゾンビ」と「どうぶつの森」のプレイヤーを集めてもらい、何十万人もの成人にアンケートを実施しました。
プレイヤーに何を尋ねたのかと言いますと、
- 過去2週間にポジティブな感情およびネガティブな感情のどっちを体験したか?
- 過去2週間の間にどれぐらいゲームで遊んだか?(回数と時間)
最終的には、「プラント vs. ゾンビ」から471人、「どうぶつの森」から2,756人の答えが集まりまして、すべての相関をチェックしたところ、
- 2週間の間にゲームで遊んだ時間が長いほど幸福度が高かった
もちろん、この研究にはいろいろと注意点がありまして、
- ゲームで遊んでた人とそうでない人の幸福度の差はかなり小さい
- みんな後からゲームのプレイ時間を見積ったので実際のプレイ時間とズレが大きい
- プレプリントの論文でしかない(つまり査読は受けてない)
マインクラフでアイデアが出やすくなる?

これはアイオワ州立大学の実験で、352人の男女を4つのグループに分けております。
- マインクラフトで遊ぶ
- NASCAR系のレースゲームで遊ぶ
- テレビ番組を見る(クロコダイル・ハンター)
- 「できるだけクリエイティブにプレイしてください」と指示された後、マインクラフトで遊ぶ
どのグループもプレイ時間は40分で、それから以下の2パターンの創造性テストをやってもらったそうです。
- ペーパークリップやナイフの斬新な使い方を考えてみる
- 他の星から来た異星人の姿を描いてみる
ひとつ目のテストではナイフの変な使い方を大量に思いついた人ほど創造性が高く、ふたつ目のテストでは人間からかけ離れた姿のクリーチャーを思いついた人ほど創造性は高いと判断されるというふうになっています。
その結果、どんな変化が出たかと言うと以下のようになりました。
- マインクラフトで遊んだグループは、もっとも成績がよかった
「マインクラフトみたいなサンドボックス系ゲームは創造性に効くかも」とは昔から言われてたことなんで、あらためてデータで示された形であります。
ただし、ここではもうひとつ重要なポイントも浮かび上がっていて、
- 「できるだけクリエイティブにプレイしてください」と指示された場合、マインクラフトで遊ぶと逆に創造性は最下位になった
純粋にマインクラフトを楽しんでいれば創造性は上がるが、下心が芽生えたとたんに逆の効果が起きてしまうそうです。
参考文献
・
・Kokkinakis, Athanasios V et al. “Exploring the relationship between video game expertise and fluid intelligence.” PloS one vol. 12,11 e0186621. 15 Nov. 2017, doi:10.1371/journal.pone.0186621
・West, G L et al. “Impact of video games on plasticity of the hippocampus.” Molecular psychiatry vol. 23,7 (2018): 1566-1574. doi:10.1038/mp.2017.155
・https://christopherjferguson.com/MVJPED.pdf
・https://www.pnas.org/doi/pdf/10.1073/pnas.1417056111
・https://www.pnas.org/doi/10.1073/pnas.1611617114
・https://psyarxiv.com/qrjza/