
バレンタインデーやホワイトデー、それ以外にもキットカットなどで親しまれているチョコレートですが、一般的には単なる砂糖菓子という認識が強いのではないでしょうか?しかし、チョコレートの種類によってはアンチエイジング効果や脳機能の改善も期待できる食べ物なのです。
そこでこの記事では、「チョコレートで脳機能は改善するの?」や「どんな種類のチョコレートを食べればアンチエイジングになるの?」と考えている人に向けて科学的な視点から解説をしてきたいと思います。
ダークチョコレートでネガティブな気分が改善する?

3週間のランダム化対照試験で、48人の健康な成人(20歳から30歳)を対象に、ダークチョコレートが気分と腸内細菌にあたえる影響を評価しました。
- 参加者は、70%のダークチョコレート、85%のダークチョコレート、またはチョコレートを摂取しないグループに割り当てられた
- ダークチョコレートを食べたグループは、いずれも1日30gのチョコレートを、朝、昼、晩に10gずつ分けて摂取した
その上で、全員のポジティブおよびネガティブな感情を測定し(PANASを使用)、腸内細菌の多様性などを評価しました。
そうしたら以下のような結果になりました。
- 何も食べないグループと比べて、85%のダークチョコレートグループは、ネガティブな感情の減少が見られた。ポジティブな感情については、グループ間の差はなかった
- 85%のダークチョコレートを食べたグループの腸内細菌は、3つの評価基準のうち2つで多様性が増加していた
もちろん、両者の因果関係を証明するものではないですが。
ただし、注意点としましては、
- 何も食べないグループにはプラセボが与えられていないため、85%のダークチョコレートを食べたグループの効果が思い込みでしかない可能性はある
- 70%のダークチョコレートを食べたグループに明らかな効果が見られなかったため、そもそも有意な効果を検出するには力不足だった可能性もある
正直、これだけだとまだ判断しづらい部分も残ってしまいます。
ダークチョコレートで抑うつ症状がやわらぐかも

ロンドン大学などの調査で、アメリカの成人13,626 人を調べた横断研究になってます。
アメリカの疾病予防管理センターが実施してる「国民健康・栄養検査調査」のデータを分析してまして、データセットの信頼性はわりと高めっすね。
このデータを使って研究チームは、
- 参加者の1日あたりのチョコレート消費量
- うつ病の症状レベル(PHQ-9を使用)
という2つを抜き出して、両者のあいだに相関がないかをチェック。
その結果は以下のようになりました。
- ダークチョコレートをよく食べる人は、抑うつ症状が低い傾向があった(OR = 0.30)
- ダークチョコレート以外を食べる人には、抑うつ症状が低い傾向が見られなかった
- チョコをまったく食べない人に比べて、1日あたり104〜454gのダークチョコを食べる人は抑うつ症状のオッズが57%ほど低かった
ただ、これはあくまで参加者の人生の一瞬を切り取ったスナップショットみたいな研究なんで、基本的に精度は低いものとお考えください。そもそもダークチョコレートをよく食べてる人なんて、いかにも健康意識が高そうですからねぇ。
このについて研究チームは、『因果関係の方向を明らかにするためには、さらなる研究が必要だ。うつ病が原因でチョコレートを食べることへの興味を失っている可能性もあルシ、ダークチョコレートの消費低下とうつ病を結びつける他の要因があるのかもしれない。もしチョコレートでがうつ病の症状がやわらぐなら、最適な予防と管理のために生物学的メカニズムを理解する必要がある。』
もっとも、「チョコレートで脳機能や気分が上がるのではないか?」という話が出たのは初めてではなく、以下のような報告が出ています。
- 8件をまとめた2013年の系統的レビューでは、5件でチョコによる気分の改善と報告されていた。
- 2018年のテストではカカオ70%のダークチョコレートを48g食べたグループは認知機能に改善が見られた
まだ本当にチョコで気分が改善する理由は不明ですが、体に良い成分が豊富な優良食品なのは間違いありませんので、定期的に食べてみるのは良いかと思います。
血管の若返りに効くダークチョコレートの最適量は

BMJに掲載された論文で、過去のチョコレート研究から信頼性が高い23件、405304人分のデータを使ったメタ分析になっております。
そのして以下のような結論になりました。
- 1週間に20gのダークチョコレートを食べると、心疾患のリスクが1.8%低下する
小さな数値のようですが、これは「週に20g」を食べた場合で、これより多く食べればさらに血管は若返って行く可能性があります。
とわいえチョコレートの消費量が1週間に100gを越えると、心疾患のリスクを防ぐ効果は増加しなくなってしまうそうです。
意外に少ない段階でチョコレートの効果は意味がなくようです。
では、どれぐらいの分量を食べるのが最適なかは以下の通りです。
- 心疾患リスクを下げるなら、週に45g
これぐらいの量を食べていると、心疾患リスクがおおよそ11%ぐらい下がるそうです。
緑茶にダークチョコレートで頭が良くなる?

アリゾナ大学の実験では、ダークチョコレートにテアニン(アミノ酸の一種)を混ぜた、特殊なチョコを作り122人の参加者たちに食べてもらったうえで、全員に認知テストを行いつつ脳波を記録しました。
すると結果は以下の通りになりました。
- 注意力を保つ能力の改善
- 脳の興奮をしずめる能力の改善
- 血圧の低下
本来、高カカオな食品には血圧を一時的に上げちゃう副作用があるんですが、テアニンのおかげで、そのあたりの問題がクリアになったみたい。
研究者いわく、チョコレートには急激に血圧を上げる作用があり、テアニンには血圧を下げる作用がある。それならば、テアニンが一時的にチョコの副作用を打ち消してくれるのではないかと考えた。その結果は驚くべきものだ。高カカオなチョコレートにテアニンを混ぜれば、心臓系に刺激をあたえることなく、脳の機能も高める健康食品が作れてしまう可能性がある。
またテアニンは緑茶に豊富にふくまれる成分なので、新しい健康食品の開発を待たずとも、日本人ならダークチョコレートと緑茶の組み合わせでも恩恵を受けることができそうです。
これについて研究者は、『チョコレートには、脳を活性化する作用がある。脳の注意機能を高め、顕著に血圧レベルに影響をあたえる。午後を過ぎたころから、眠気をおぼえて注意力が下がってしまう人は少なくない。特に学生によく見られる現象だ。しかし、注意力を高めるために高カカオのチョコを食べてみるのはアリかもしれない。』
特に一時的な血圧の上昇を気にしなければ、集中力を高めるためにダークチョコレートを口にする意義はあるかもしれません。
1日25gのダークチョコレートで顔のシワが予防できるか?

韓国で、対象年齢は43〜86才の62名女性を、顔にハッキリしたシワが刻まれた人を選んで実験を行いました。
実験では、まず参加者を以下の2グループにわけたんですね。
- 320mgのカカオフラボノイドが入ったドリンクを毎日飲む
- 人工的にチョコレート風の味つけをしたドリンクを毎日飲む(カカオ成分は入っていない)
そして24週間後、全員の肌のシワと弾力性、色の変化などをチェックしたところ、以下のような結果になりました。
カカオフラボノイドを飲んだグループは
- 肌の弾力が3〜9%アップ!
- シワが1〜6%改善!
- 紫外線への抵抗力がアップ!(つまり日焼けに強くなった)
劇的な差とまではいかないものの、明確な効果は出たようです。
これについて研究者は、『トレチノインやレーザー治療、ケミカルピーリングといった直接的な方法にくらべれば、カカオフラボノイドの効果は小さい。(中略)ただし、若いころから長期間にわたって服用し続ければ、シワ予防としては十分に使えるだろう。』
すでに出来たシワを消す目的に使うよりは、シワ予防として習慣にするのが良さそうっすね。
この実験で使われた量のカカオフラボノイドを摂るには、およそ8g〜25gのダークチョコレート(カカオ70%以上)を食べれば問題ないようです。
チョコレートをどれだけ食べれば頭が良くなるか?

ロマリンダ大学の実験の1つ目の研究では「ダークチョコを食べたら脳の活動はどうなるか?」という点を調べいます。
具体的には、以下のようなことを調べました。
- 48gのダークチョコレートを食べる(カカオ70%)
- 30分後と120分後に脳波計で参加者を計測
一般的な板チョコが70〜100gぐらいなんで、だいたいその半分を食べる感じですな。
そしてどのような変化が起きたかというと、以下のような結果になりました。
- 脳の活動が全体的に活発になり、脳の健康にかかわるエリアのニューロプラスティシティが向上
ニューロプラスティシティは、「神経の柔軟性」のことで、新しい体験を学習できるのもこの機能のおかげで、向上すれば頭が良くなるかもしれないと考えることができます。
そして、もうひとつの研究では、「ダークチョコを食べたら免疫系はどうなるか?」を調べております。
こちらは以下のように実験を行いました。
- 48gのダークチョコレートを8日間食べ続ける(カカオ70%)
- 1時間後と1週間後に血液サンプルから免疫の反応と遺伝子の発言を調べる
そして以下のような結果になりました。
- T細胞が活性化し、ついでに「新しいスキルの学習」にかかわる遺伝子がオンになっていた!
T細胞は、免疫システムの重要なパートで、アレルギー対策などには欠かせないポイントになってます。
これについて研究者は、『今回の研究でわかるのは、カカオの量が多ければ多いほど、認知機能、記憶力、気分の改善、免疫系などに様々な良い影響があるということだ。』
今回の研究は初歩の段階なので、今後の研究によっては覆る可能性も捨てきれない点はご了承ください。
特に脳活動の話はまだ理論としてはありえるぐらいの段階なんで。
とりあえず、ダークチョコを軽い気持ちで1日に40g〜50gぐらいを食べてみるのが良いのではないでしょうか。
参考文献
・Berk, L., Bruhjell, K., Peters, W., Bastian, P., Lohman, E., Bains, G., Arevalo, J. and Cole, S. (2018), Dark chocolate (70% cacao) effects human gene expression: Cacao regulates cellular immune response, neural signaling, and sensory perception. The FASEB Journal, 32: 755.1-755.1.
・Berk, L., Miller, J., Bruhjell, K., Dhuri, S., PATEL, K., Lohman, E., Bains, G. and Berk, R. (2018), Dark chocolate (70% organic cacao) increases acute and chronic EEG power spectral density (μV2) response of gamma frequency (25–40 Hz) for brain health: enhancement of neuroplasticity, neural synchrony, cognitive processing, learning, memory, recall, and mindfulness meditation. The FASEB Journal, 32: 878.10-878.10.
・Jackson, SE, Smith, L, Firth, J, et al. Is there a relationship between chocolate consumption and symptoms of depression? A cross-sectional survey of 13,626 US adults. Depress Anxiety. 2019; 36: 987– 995.
・Ren Y, Liu Y, Sun X, et alChocolate consumption and risk of cardiovascular diseases: a meta-analysis of prospective studiesHeart 2019;105:49-55.
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・Xiaochen Lin, Isabel Zhang, Alina Li, JoAnn E Manson, Howard D Sesso, Lu Wang, Simin Liu, Cocoa Flavanol Intake and Biomarkers for Cardiometabolic Health: A Systematic Review and Meta-Analysis of Randomized Controlled Trials, The Journal of Nutrition, Volume 146, Issue 11, November 2016, Pages 2325–2333
・Yoon, Hyun-Sun et al. “Cocoa Flavanol Supplementation Influences Skin Conditions of Photo-Aged Women: A 24-Week Double-Blind, Randomized, Controlled Trial.” The Journal of nutrition vol. 146,1 (2016): 46-50.
・『The Acute Electrocortical and Blood Pressure Effects of Chocolate』
https://www.neuroregulation.org/article/view/14652